特集:ピンクパージ・ヒストリー 第2回

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 1986年10月21日、衆議院決算委員会の席上で、それは起こった。以下、同委員会の169番目の発言から骨子となる部分を抜粋する。

実は、私ここにたくさんの本を持ってきたのですが、こういうパソコン用のいろいろなゲームの内容紹介なんですが、袋とじになっておりまして(筆者注:『コンプティーク』と『アソコン』が候補として考えられます)、それをはさみで切ると、私が今申し上げるようなのが出てくるわけですよ。
例えば「強姦体験は、ドキドキだ 期待に、思わず胸と下半身が膨らむ、お楽しみソフト」、こういう見出しですね。それで「177」というタイトルになっているのです。「177」というタイトルのゲーム、ここはもう後で警察庁にお伺いしますが、これは非常に警察庁がばかにされていると思うのです。「刑法177条の強姦罪をもじってつけただけあって、そのものズバリの強姦ゲームだ。家路を急ぐ女性との追いかけっこで始まり、女性の服をすべてはぎとって押し倒せば、次はお待ちかねの、あのシーン。ここで一生懸命、腰を動かして、彼女を」云々、こういうことになるわけですが、そうすると「和姦成立という次第だ。さて、どこまで、男性の欲望を満たしてくれますか?」というようなことを、実は小学校、中学校の生徒が読みながら打ち込むわけですよ。

 発言者は衆議院の草川昭三議員(2005年現在は参議院議員)。1976年の初当選以来、30年近くの議員経験を持ち、現在は公明党の副代表を務められておられる人物である。(注:記事執筆当時)
 公明党といえば、政策綱領(マニフェスト)として「強姦罪の罰則強化・性犯罪の罰則の強化」を掲げていることからも明らかなように、性犯罪に対して取り組んでいることを広くアピールしている政党だが、『177』に関わる発言は性犯罪についてものではなく、草川議員の言葉を借りれば「現在の教育現場におきます学校器材の問題、あるいはコンピューターあるいは家庭用テレビゲームが家庭の中で子供にどのように影響を及ぼすかという問題」の提起の中で言及されたものだった。

 この会議の議事録については、WEB上の「国会会議録検索システム」で閲覧することが可能なので、興味のある方は実際に目を通してみると良いだろう。(161番目から177番目の発言がこれに該当する)
 実際に議事録を追いかけてみると、『177』のような極端なゲームを例に挙げながら、要は未成年の手にこうした「非常に好ましくない」ソフトが渡ることを憂慮し、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会等の業界団体にも注意を喚起しつつ、自粛方向へ持っていこうという、それだけの話でしかない。デービーソフトに対して具体的な行政指導が行われたというようなこともなかったようだ。では、何故あれほどの騒ぎになったのかと言えば、この議事録に注目した大新聞が派手に取り上げたことが原因だった。
 喧喧囂囂の非難を受けたメーカー側が販売を自粛、一部内容を変更した改訂版を出しなおした、というのが「アダルトソフト」というゲームジャンルの存在を広く社会的に知らしめた、世に言う「177事件」の全容だったのだ。

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 1991年のピンクパージまで、残すところあと5年。
 多少の波が立ったとはいえ、美少女ゲーム業界は今暫くの間、泰平の眠りを許されていた。

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このページは、RetroPC.NETが2009年6月 2日 22:00に書いたブログ記事です。

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