●FM-77AVをDOS/V用モニタにつなぐ
電波新聞社(マイコンソフト)製のXRGB-2を使用して、FM-77AVをDOS/V用のモニタに接続する方法について説明します。
これを読んでXRGB-2を購入したが映らなかったとかいうたぐいのクレームには対応できませんので予めご了承願いますm(__)m
●何が問題?
FM-77AVの映像出力はアナログマルチRGBという21ピンの(巨大な)コネクタから出ています。
ピン配置と信号仕様は以下のようになっています(21ピンはコネクタのシールド板そのものです)。
ピン番号 | 信号名 | 方向 (メスコネクタに対して) |
信号レベル | 入/出力 インピーダンス |
1 | Audio(L) | IN | 0.4VRMS | 10KΩ |
2 | Audio(L) | OUT | 0.4VRMS | 10KΩ |
3 | GND (Audio IN) | - | - | |
4 | GND (Audio OUT) | - | - | |
5 | Audio(R) | IN | 0.4VRMS | 10KΩ |
6 | Audio(R) | OUT | 0.4VRMS | 10KΩ |
7 | GND (映像/同期 IN) | - | - | |
8 | GND (映像/同期 OUT) | - | - | |
9 | 映像/同期入力信号 | IN | 1Vp-p | 75Ω |
10 | 映像/同期出力信号 | OUT | 1Vp-p | 75Ω |
11 | AVコントロール入力信号 | IN | 低レベル:0〜0.4VDC 高レベル:3〜5VDC |
22KΩ |
12 | YM入力信号 | IN | 低レベル:0〜0.4VDC 高レベル:1〜3VDC |
75Ω |
13 | GND (RED) | - | - | |
14 | GND (YS/YM) | - | - | |
15 | 赤入力信号 | IN | 0.7Vp-p | 75Ω |
16 | YS入力信号 | IN | 低レベル:0〜0.4VDC 高レベル:1〜3VDC |
75Ω |
17 | GND (GREEN) | - | - | |
18 | GND (BLUE) | - | - | |
19 | 緑入力信号 | IN | 0.7Vp-p | 75Ω |
20 | 青入力信号 | IN | 0.7Vp-p | 75Ω |
21 | ケース・GND | - | - |
現在のPCモニタはほぼ全てD-SUB15Sのコネクタで接続するタイプになっており、そのままでは(形状が違うため)接続できません。また、特殊な(映像用)モニタや、一昔前のマルチメディア対応TVでない限りアナログマルチRGB入力を持ったディスプレイはありません。
また、問題になるのが同期信号(9ピン)です。通常のPC用ディスプレイには同期信号は水平同期(H-SYNC)、垂直同期(V-SYNC)の2種類の同期信号が入力されています。アナログマルチRGBの同期出力は、同期出力というよりコンポジット出力です。オシロで観測すればすぐに分かりますが、クロマバーストまで含んだ完全なコンポジット信号(ビデオ信号)が出ているのが普通です(AVはそうではないようだが)。すなわち、同期信号は0.3Vp-p程度しかない、しかも複合同期信号となっています。
また、垂直同期周波数は15.7KHzです。普通のVGAモニタでは31KHzの信号を必要としますので、これもそのままではつながらない原因です。
これらを一気に解決するのが、XRGB-2などのアップスキャンコンバータです。
●アップスキャンコンバータ
アップ/ダウンスキャンコンバータとは、水平垂直同期、ドットクロックの違う映像信号を一度ディジタイズしてフレームバッファに取り込み、それを目的の水平垂直同期、ドットクロックで読み出す装置です。
平たく言えば、水平垂直同期コンバータ(かなり大雑把な表現)です。
特に、低い垂直同期の映像信号を、高い垂直同期の映像信号に変換するコンバータをアップスキャンコンバータといいます。15.7KHzのPCB(業務用ゲーム基板)や、古めのPC(FM-7/AVなど含む)の映像信号を、DOS/V VGA相当の映像信号に変換するコンバータなどがコレにあたります。
逆に、高い垂直同期の映像信号を、低い垂直同期の映像信号に変換するのはダウンスキャンコンバータです。DOS/Vの映像出力をTVに移すためのNTSC/コンポジットに変換するコンバータなどがコレです。
つまり、アップスキャンコンバータを使えば、FM-77AVの映像信号を、DOS/Vモニタの必要とするVGAタイミング/レベルの信号に変換することが出来ます。
●ダウンスキャンコンバータ
「それならダウンスキャンコンバータでもいいじゃない。値段半分くらいだし。TVにつなぐよ、俺は」という方もいらっしゃると思います。確かに同じく電波新聞社から出ているXAV-2sなどはアナログマルチRGB入力を持ったビデオエンコーダですので、これを使えば(きっと)TVに映すことが可能なのだと思います。値段も、定価で10K\ですから実売は9K\前後でしょう。これはXRGB-2の実売価格の半分以下です。
しかし、TVの解像度は非常に低いので、320x200位の解像度の映像を表示するのが精一杯です。とてもじゃないですが640x400で表示された(WIDTH 80,25時など)文字を読むことはできません。
ゲームしかやらない(特にAV)方ならOKかもしれませんが、私は絶対に避けるべきだと思います。
●XRGB-2
しかし、いろいろ出回っているアップスキャンコンバータの中でもアナログマルチRGBの端子を持っているのは、電波新聞社のXRGB-2だけのようです。
XRGB-2は決して安いとはいえませんが(定価27.8K\。店頭販売価格22K\前後。'00/11現在)、プレステをアナログマルチRGBケーブル(別売)などで接続すれば、家族に文句をいわれること無くゲームで遊べます(PCのモニタで遊べるので、TVを占有しません)。ココが結構メリットだったりします(^^;
また、XRGB-2はDOS/Vの映像入力と、その他の入力(アナログマルチRGBやコンポジットビデオ)とのマルチプレクサ(切り替え機)にもなります。PCのモニタはXRGB-2につなぎっぱなしで、XRGB-2の電源OFFならPCの映像が、電源がONならその他入力が表示されますので、使用する度にいちいち配線したりしなくてすむのも大きいです。
他にも、γ調整機能が内蔵されています。単純にプレステの映像などをPCモニタに表示すると暗めの部分がより暗く表示され、真っ暗で何も見えない状況になることがあります。これはγ値が適切でないのが原因です。γとは、映像入力信号の大きさに対し、実際の電子ビーム強度(つまり画面上での明るさ)をどのような比で表示するかという値です(普通のTVで2.2前後だったかな?)。単純(直線)比例では(モニタの蛍光体と人の目の感度曲線の関係で)前述のように暗めの部分がさらに暗く表現されてしまうので、暗めの部分では速やかに立ち上がる指数関数のような(詳しくは知らない)関数の係数になります。長くなりますが、これの調整ができますので、ゲーム画面も見やすく表示できるわけです。
●つないで見るが…
さっそく、XRGB-2を買ってきてつないで見ましたが…映らない?
映らないわけではないのですが、同期がまったく取れていません(画面が流れている)。一応F-BASICの起動画面らしいものが高速で流れているのが確認できますので、映像信号は問題なさそうです。オシロで確認してみたところ…
ケーブルのXRGB-2側で観測したところ、同期信号が10ピンに出ていました。10ピンは「同期信号出力」です。つまり、私の買ってきたケーブルはストレート(全線、同じピン同士が接続)接続のものだったようです。
FM-77AVが10ピンに同期信号を出力するのはいい(あってる)として、それが相手機器(この場合XRGB-2)の9ピンの「映像同期入力」に行かなくてはダメです。つまりアナログマルチRGBのクロスケーブルでなくてはだめなのです!
これは、知りませんでした。こんなケーブル買ってきてそのままつなげばよいとばかり思っていたのでビックリです。確かに同期信号や音声信号は入力と出力が両方ありますから、クロスにするのが筋でしょう。別に買うときも「クロス」とか「ストレート」とか書いてなかったと思うのですが。
ちなみにケーブルは秋葉原の千石電商で買いました。LAOXなどの大手のPCショップや、ケーブル専門店に行っても今では入手不可能です。3年位前まではなんとか流通してたようですが、その後パッタリ流れなくなってしまったそうです。
●なんとか映せ!
原因がわかったら対処するだけです。
コネクタを分解して(幸いアナログマルチRGBコネクタは樹脂封止ではなく組み立て式なので簡単に開きます)、必要な線を入れ替えます。
ここでは、以下のように入力/出力が入れ替わるようにクロスします。
7 | GND (映像/同期 IN) | ⇔ | 7 | GND (映像/同期 OUT) |
8 | GND (映像/同期 OUT) | ⇔ | 8 | GND (映像/同期 IN) |
9 | 映像/同期入力信号 | ⇔ | 9 | 映像/同期出力信号 |
10 | 映像/同期出力信号 | ⇔ | 10 | 映像/同期入力信号 |
改造の終わったケーブルを接続すると…映りました。ホッ。XRGB-2が無駄にならなくてよかった。
ちなみに音も出ていないので、こちらもクロスにする必要がありそうです。→やはりクロスにしたら音が出ました(^^;
入れ替えは下記のとおりです。
1 | Audio(L) IN | ⇔ | 2 | Audio(L) OUT |
2 | Audio(L) OUT | ⇔ | 1 | Audio(L) IN |
3 | GND (Audio IN) | ⇔ | 4 | GND (Audio OUT) |
4 | GND (Audio OUT) | ⇔ | 3 | GND (Audio IN) |
5 | Audio(R) IN | ⇔ | 6 | Audio(R) OUT |
6 | Audio(R) OUT | ⇔ | 5 | Audio(R) IN |
普通にFM-77AVを買ったときについてるケーブルはクロスなんでしょうかね。私は手元に残ってないので調べようもありませんが。
長々と書きましたが、教訓としては「アナログマルチRGBケーブルはクロスを買わなくてはならない!(でもどこに売ってるんだ?)」ということです。皆さんも気をつけてくださいね…
余談ですが…私は以前一度だけ(実在の)「来栖さんち」に遊びに行ったことがあって、そのときにFM-77AV40EXをXRGB-2を使ってDOS/Vモニタにつないでるのを見ています。だから安心してXRGB-2を買ったんですが、正直、最初に映らなかったときは困惑しましたね。2万円もだしたのに、プレステをモニタにつなげるだけじゃねぇ。大体、プレステをモニタにつなぐだけならもっと安いアップスキャンコンバータが使えます。映ったときは心の中で拍手してましたよ…