QC-20はEPSONから1982年4月頃に発売された8Bitのビジネス向けパソコンです。
似たような同社のマシンにQC-10というのがあるのですが、こちらは1983年4月に発売された後継機種です。数字が小さい方が後継機種なのですね。QC-10IIというのもあります。また、QC-11というのもあったのですが、これはもう少し先の1985年に発売されたMS-DOSが動作する16bitマシンです。
QC-20の本体スペックはこちら。
CPU | Z80A 4MHz |
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ROM |
IPL 2KByte JIS第一水準漢字2965+619文字(14×18dot) |
RAM |
256KByte(32×2KByteはVRAM用) CMOS RAM 2KByte(バッテリバックアップ/任意データ書込可) |
FDD | 5.25inch両面倍密度倍(640KByte)×2 |
モニタ | 12inchグリーンCRT |
拡張スロット | 第二水準漢字ROM用Slot×1, I/O slot×4 |
インタフェース |
RS-232C(75-9600baudソフト切換)、セントロニクス準拠プリンタ |
音源 | スピーカ出力(単音BEEP?) |
内部IC |
CRTコントローラ、DMAコントローラ、プログラマブルタイマ、カレンダークロック |
価格 | 1,350,000円 |
RAM 256KByteの内訳は、画面表示用に32KBByteが2つ(2画面切換え)と、128KByteを漢字変換用のバッファとして使用していて、残りがユーザ用のフリーエリアとなります。Z80の扱えるメモリ空間は64KByteが最大ですから、バンク切替えによってRAMにアクセスします。
QC-20に提供されていたOSはEPSON CP/M2.2で、従来のCP/MにEPSONが漢字変換機能やグラフィック機能を追加したものですが、メモリ使用量が非常に多く、BASIC起動時のフリーエリアは22KByte程度でした。そのため、機能をカスタマイズしたCP/Mを自分で作れるようになっていたようです。
ハード上ではメモリの使い方に制約があったわけではなさそうなのですから、その気になればメモリは自由に扱えたようです。
キーボードは「ひらがな」「変換」「非変換」「カタカナ」「キャンセル」「カナ漢字」「区点入力」「連想入力」といった、漢字変換向けのキーが多数用意されていました。テンキー部分には「000」キーがあり、ビジネス向けであることがよくわかります。ただ、QC-20の漢字入力は単漢字変換で、単語単位での変換はできませんでした。QC-20と同じ筐体を用いたEXWORD-20はワープロ専用機で、単語単位での変換が可能だったようです。
QC-20に提供されていたBASICは、QC-20向けにカスタマイズされたマイクロソフト製のKBASICです。文字列などに2バイト文字の漢字が使えるBASICで、各種文字列関数も2バイト文字操作が可能になっていました。
扱えるデータ型は単精度(内部7桁表示6桁)と倍精度(16桁)、8進数、16進数で、変数名には40文字、文字列変数には250文字までです。
文法は他機種のマイクロソフト系BASICと同じものです。
1982年に漢字ROMを標準搭載というビジネス向け製品として魅力のあるマシンではありましたが、本体価格が100万円を超えていたことや、同年の後半にはPC-9801が登場し、X1、FM-7といった安価な8bitが発売され、翌年には漢字ROMを搭載したPC-8801mkIIが発売されるなど、競争の激しい時代でしたから、QCシリーズが生き残ることは厳しかったようです。