mybrain700/800に引き続き、mybrain3000について調べたことをまとめます。実機は持っていません、誰かください。
マイブレインではなくマイブレーンというのが正しい名前のようです。
また、mybrain3000というのは愛称で、正式にはJB-3000シリーズ、本体の型番はJB-3001となっています。
マイブレーンというのは、同社の上位マシンから引き継いだ名前だそうですが、mybrain700,800,3000以外にもマイブレーンがあったということなのでしょうか。この辺はよくわかっていません。
mybrain800同様に、松下通信工業のデータ制御事業部で開発されたマシンでJR-100/200とは違う部署の生まれです。
mybrain3000の最大の歴史的な特徴は、日本で初めてMS-DOSを採用したマシンであるという点でしょう。
発売時期は、1982年7月8日の発表で、7月26日に発売が開始という雑誌記事をみかけたのですが(出典を記録してなかった…)、VJEの歩み 萩原健バックス社長に聞く(1)では、1981年11月となっているので、実際のところはわかりません。また、後にmybrain3000の新モデルが発売されたという話もあります。[追記]アスキーNEWS EXPRESS 82年9月号に掲載されているそうなので、1982年代で間違いないようです。
■ ハードウェア
CPU | 8088 |
RAM | 128KByte(内32KByteはVRAM) / 128K RAMカード増設可 |
ROM | 16KByte |
テキスト表示 | 1行あたり80,40,32 / 20,25行 |
グラフィック | 320×200 8色 or 640×400モノクロ |
音源 | 7オクターブ / タイマ有 / 本体背面にボリューム |
入出力インタフェース | ライトペン,プリンタ,カラーCRT,グリーンCRT,キーボードコネクタ,プリンタ |
拡張スロット | 本体に3基 / 外部拡張ユニットに6基 |
時計用のICやバッテリーを搭載していないので、MS-DOSを起動すると常に初期状態の日付が表示されます。
キーボードは本体と分離していてケーブルを本体背面に接続します。キーボードにはテンキーがありますが、四則演算キーがありません。ALTキーを押しながらアルファベットキーを押すとBASICの命令を1キーで入力できたようです。
本体にはカセットテープやフロッピーディスク用のインタフェースがありません。
本体内のROMには電源投入ですぐに使えるBASICのようなシステムが入っていませんから、本体とCRTだけでは何もすることが出来ず、フロッピーディスクユニットを使える状態にする必要があります。
本体価格は288,000円ですが、インタフェース増設用のオプションスロットが8,500円、フロッピーディスクインタフェースが50,000円、フロッピーディスクケーブルが5,000円、一番安い5インチフロッピーディスクドライブが93,000円で、これに併せてBASICかDOSのソフトが必要になりますし、モニタも別売ですから、トータルで50万円越えからのスタートになります。
フロッピーディスクは片面倍密度(160KByte)のものが本体と同時発売で、後に8インチフロッピーディスクドライブが発売されたようです。フロッピーディスクインタフェースには合計4台までのドライブを接続できますが、5インチと8インチではインタフェースカードが異なります。
周辺機器を含めたシステムの価格表はこちら。
製品 | 型番 | 価格 |
---|---|---|
本体/キーボード | JB-3001 | 288,000 |
128KByte内蔵増設メモリ | JB-3001-04 | 80,000 |
漢字ROMカード JIS第一水準16×16 | JB-3001-07 | |
オプションスロット | 8,500 | 8,500 |
5inchフロッピーディスクドライブ(1台) | JB-3031 | 93,000 |
5inchフロッピーディスクドライブ(増設) | JB-3032 | |
5inchフロッピーディスクドライブ(2台) | JB-3033 | |
8inchフロッピーディスクドライブ(2台) | JB-3038 | 426,000 |
8inchフロッピーディスクドライブ(2台増設用) | JB-3039 | 426,000 |
5inchフロッピーディスクインタフェース | JB-3001-05 | 50,000 |
8inchフロッピーディスクインタフェース | JB-3001-08 | 50,000 |
5inchフロッピーディスク接続ケーブル | JB-3031-01 | 5,000 |
5inchフロッピーディスク接続ケーブル(2台用) | JB-3033-01 | |
8inchフロッピーディスク接続ケーブル | JB-3038-01 | 5,000 |
8inchフロッピーディスク接続ケーブル(2台用) | JB-3039-01 | |
12inchグリーンモニタ | JB-3062 | 47800 |
12inchカラーモニタ | JB-3063 | 188,000 |
グリーンモニタ接続ケーブル | JB-3062-01 | 400 |
カラーモニタ接続ケーブル | JB-3063-01 | 1,800 |
RS-232Cアダプタ(最大9600bps) | JB-3001-06 | 35,000 |
80文字プリンタ | JB-3021 | 153,000 |
136文字プリンタ | ||
プリンタケーブル | JB-3021-01 | 4,800 |
拡張ユニット | JB-3011 | |
ジョイスティックアダプタ | JB-3001-09 | |
IEEE-488アダプタ | JB-3001-10 |
価格や用途をみるとビジネス向きのマイコンなのですが、ジョイスティックを接続できるようにもなっていたようで、BASICにもSTICK/STRIGといった命令が用意されています。
■ ソフトウェア
mybrain3000本体にはBASICやOSが搭載されていないのでフロッピーディスクから何らかのシステムを起動させる必要があります。
mybrain3000には、MS-DOSとCP/M86の2種類のOSが用意されていて、MS-DOSには、BASICとのセット品(40,000円)とMultiplan(80,000円)とのセット品がありました。Multiplanは単体でも販売されていたようです。
MS-DOSとセットで販売されていたBASICは2種類あり、MS-DOSからはどちらかを起動することが出来るようになっていました。2つのBASICはぞれぞれBASICAとBASIC86で、BASICA(BASIC advanced)はBASIC86にmybrainのハードウェア構成に合わせた命令が追加されています。BASIC86ではグラフィックやサウンドを制御出来ないだけでなく、編集も行単位で行うようになっていたのに対して、BASICAではスクリーンエディットが可能になっていました。その代わりに、BASIC86は使用メモリが少なくフリーエリアを広く使う事が出来るようになっていたので、ビジネス用途向きと言えます。
BASICAには、タートルグラフィックを描くDRAW命令や、画像を扱うLINE,CIRCLE,GET,PUT命令、テキスト画面用のSCREEN,COLOR命令、音楽を演奏するBEEP,SOUND、PLAY命令(バックグラウンド再生と再生終了待ちの両方の機能があったようです)、ライトペンを扱うPEN命令などがありました。また、メモリセグメントをもつ8088らしい、DEFSEGというベースアドレスを指定する命令があります。
MS-DOSの使える16bitマシンとしてはバランスが取れていると思うのですが、すぐ後にNECのPC-9801が発売されたことによる影響からか、あまり一般市場では知られずに消えていったようです。
[追記]Computer Report誌1983年4月号に、後に発売されたソフトの記事がありました。
製品 | 価格 |
---|---|
漢字マルチプラン | 89000円 |
BASICK | 50000円 |
漢字版CP/M-86 | 40000円 |
パナワード-J | 53000円 |
漢字版MS-DOS(BASICに含まれる) |
BASICKは、従来のBASICにJIS第一水準の漢字・非漢字がカナ漢字変換で入力できるようにしたものだそうです。