CZ-8DT
(X1シリーズ用デジタルテロッパ)

 X1シリーズの特徴のうち、最も初めに有名となったのはテレビ画面とパソコンの画面を重ねて表示できる「スーパーインポーズ機能」ではないかと思います。「どっちもブラウン管を使っているのに、なぜテレビはテレビ、パソコン用CRTはパソコンの画面しか映せないんだろう」という素人の疑問がら始まったとされるディスプレイテレビとスーパーインポーズですけど、ひとたびそれが現実となれば人間欲が出るもの…これを録画して残せないか?
 「BASICのリストの後ろにテレビ番組が見える、とかいうのがなんの役に立つのか意図がわからない」とかいう意見もあったようですが、ホームビデオを編集する際にテロップを入れるとかいうのは最もわかりやすい利用例だったと思います。当時どれだけ編集までやる人がいたかはわかりませんが…。

 写真はフロッピードライブのCZ-800Fと重ねてある図です。上段が件のデジタルテロッパです。

 では、前面と背面の写真から、おおよその機能を見ていきましょうか。

機能 ボタン 説明
SOUND BALANCE X1とビデオの音声バランスを調整します。X1でBGMを演奏し、それをミックスした音声で録画できます。中央にノッチのあるスライドボリュームが採用されています。
TELOP CUT X1の画面を合成するか否かを選択します。ランプが点灯していると合成しません。合成しているときは、画面のどれぐらいまで入れるのかをスライドボリュームで調整します。つまりマニュアル操作でテロップのインとアウトが行えるわけです。
MODE COMPUTER どの画面を録画するのか選択します。
コンピュータのみ、ビデオのみ、そしてその合成画面が選べます。
SUPERIMPOSE
VIDEO
VIDEO IN 1 ビデオデッキは3台まで接続できます。その入力元を選択できます。
2
3
MONITOR 1 VIDEO INの選択とは関係なく、入力されている映像を確認できます。
2
3
REC OUT

機能 端子 説明
COMPUTER RGB IN X1からの出力を接続します。スーパーインポーズのためには同期信号をX1に入れてやる必要がありますから、テレビコントロールケーブルも接続することになります。
TV CONTROL IN
TV RGB OUT X1シリーズ用ディスプレイテレビを接続します。つまり、X1とディスプレイテレビの間にデジタルテロッパを挟み込むことになります。
TV CONTROL OUT
REC OUT VIDEO 録画用のビデオデッキを接続します。
AUDIO-L/R
MONITOR OUT VIDEO 確認用のモニタディスプレイを接続します。
AUDIO-L/R
INPUT VIDEO1 編集対象のビデオ映像・音声を入力する端子です。
AUDIO1
VIDEO2
AUDIO2
VIDEO3
AUDIO3-L/R
EXT-S AUDIO-L/R デッキ以外の別の音声を入力します。
RGB MULTI CONNECTOR マルチRGB入力のテレビモニターを接続します。
SOUND SELECT EXT-S&COMPUTER/
VIDEO&COMPUTER/
EXT-S&VIDEO
音声を選択します。この組み合わせが、前面のSOUND BALANCEで調整できる音声となります。
SYSTEM SELECT X1からの制御か、前面スイッチによる切り替えかを選択します。X1とはジョイスティック端子を使用して接続します。
COMPUTER CONTROL

 こうして見ると、ビデオ4台にX1のとは別のモニターとか家庭用としては十分本格派と言えそうです。もちろんテロップの入れ方が左右しかないとか、機能として不十分なところは多々あるわけですが…。
 私は特に編集するような用事もなかったので、せっかく入力がたくさんあるならとビデオセレクターとして使っていたこともあるのですが、いくつかの入力がモノラルだったり、経年変化で音声が割れたり画面上部がゆがんだりしたので、結局は使わなくなりました。

 でもスーパーインポーズ画面を録画したいという要望はその後もそれなりにあったようで、X1turboでは簡易ながらテロッパが内蔵されたり、オプションでこのCZ-8DTの後継となるパーソナルテロッパ(CZ-8DT2)やカラーコレクタ(ビデオマルチプロセッサ・CZ-8VP1)が発売されています。他のメーカーからは、編集機能はほどほどに、「ビデオタイトラー」などという商品名で合成画面を録画できるものが発売されていました。中にはソニーのようにMSXをカスタムしたような仕様のものもあったようです。

 スーパーインポーズ機能がよほどインパクトがあったのか、その後登場した家庭用パソコンの多くに同様の機能が搭載されましたね。みんなマネしてるなぁとカタログや広告を冷やかに見ていたものですが、よく考えたらNECとか富士通とか、家電部門と距離があったのではないかと思われるメーカー(NECの場合はP6系だから新日本電気か…)では、開発にまつわる苦労はシャープの比ではなかったかもしれないわけですよね。とりあえず使う用事がないことはわかっていても、「できる」と「できない」はアピールポイントとして大きな違いがありますから、たとえ不得意でも搭載せざるを得ない…シャープというのは罪なメーカーですなぁ。

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