MZ-80C

 「タイトルと写真が違うんじゃないのか?」と思われる方もいらっしゃるでしょうね(普通はそうか)。これは、見た目はNECのTK80 COMPO BSです。しかし、それにしても乗っかってるCRTはカラーだし、データレコーダも内蔵してあるはずの機種(赤いのはTYPE Aと呼ばれるやつで、キーの右側のでっぱりにデータレコーダが入ります)なのに横に置いてあります。
 実はこれ、ケースと電源を流用しているコンパチ基板のマシンなのです。MZ-80CやPC-8001全盛の頃、雑誌に「Z80コンパチ基板」「PCコンパチ基板」などという広告がよく載っていました。これは業者が本物を買ってきて、完全に分解し、プリント基板のコピーをとって複製し、キットの形で販売したものです。もちろん無許可のモグリなんですが、回路を工夫すればこれとビデオモニタ(またはTV)とラジカセで使えるようになったので、けっこうな数が売れたようです。手元にはコンパチ基板がもう1枚あったりします。
 これは私の製作ではなくて知人からゆずってもらったものです。その人はFM77AV20を買ったので使わなくなったから引き取って欲しいということでした。別の知人を介したのでマージンこそ取られなかったものの少し高くつきました(でも8000円)。譲ってもらった当初は内蔵のRFコンバータでTVに映していましたが、そのうちソフマップ(まだビルの2階にしか店がなかった時期だっけかな)でモノクロモニタ(日立のベーシックマスター16000用の長残光グリーン)を買ってそれで楽しんでいました。
 そのうちに、電脳倶楽部で吉喜工業製ColorGal5というMZ-700ばりのカラー画面を楽しめる基板がプレゼントに出たので、それに応募し見事当選しました。2枚目の写真の、蓋の裏側についている小さい基板がそれです。本当は本体の画面があるはずなのでそれでもいいのですが、私はカラーCRTのみで使用しようとしたために、カラーボードが初期設定されるまで画面には何も表示されないというトラブルが起こりました。そこで、モニタROMの内容を書き換えて、初期設定の最後にカラーボードに背景0、文字7のカラーコードを設定する箇所を追加してこれを解決しました。
 3枚目以降の写真は本物のMZ-80Cで、これはS-OSUCの森さんが廃棄処分になるやつを横取りして私に譲ってくれたものです。CP/M対応倍速基板にPCGユニット、独自のモニタがついていましたが、モニタだけは純正のSP-1002に入れ替えました。
 実はこの機械を改造して、X1turboばりの日本語表示ができてなおかつ今までのソフトは基本的に全部動くという代物に仕立てようという目論見があったのですけど、実家に置いてあることもあって頓挫しています。X1用の拡張I/Oボックスを使い、X1用のFDD I/Fを流用して2Dをつなげようとしていたのですけど、ROMの読み出しで化けてしまいそのままになっています。一応FDDへのアクセスは成功したんですが…。今は純正のFDDやツクモのI/Fが入手できることになったので、それを動かしたうえでの改造を考えようと思います。
 さて、4枚目の写真は見てのとおりの背面図ですけど、CRTの上に乗っかっているPCGユニットはネジ止めされています。本体側のネジは元々カバーを止めるためのネジ穴で、新たにネジ穴を開けなくても固定できるようになってたんですね。私は最初見た時「えらい固定のしかたをしてるな」と思ったんですけど、実はこれが純正の方法だったんですねぇ。またよく見ると2本のケーブルの色が違いますが、これは分解時に接続ケーブルの端子を折ってしまったために作り直したものです。
 5枚目は中身で、メイン基板の中央部に小さい基板が3階建てになっているのが見えると思います。一番上が倍速基板で、COSMOS製です。これはある番地をいじると0番地からのROMとC000hからのRAMが入れ替わるようになっています。これがCP/M対応というやつで、0番地からのRAMが必須となるCP/Mを動かすための機構なのです。


スペック

CPU Z-80
メモリー ROM4Kバイト、RAM48Kバイト
ディスプレイ 10型ブラウン管(グリーンフェイス) 1000文字(横40×縦25)
カセットテープ
レコーダー
標準オーディオカセットテープ使用、データ転送速度 1200ボー、
データ転送方式・SHARP PWM方式
キー構成 78キー、ASCII標準(英・数字)64種、カナ・漢字78種、グラフィック62種
編集機能 カーソルコントロール 上、下、左、右、ホーム、挿入、削除
演算有効桁数 8桁
時計機能 内蔵
音楽機能 内蔵
音声出力 500mW 最大
温度 使用温度0℃〜35℃、保存温度-15℃〜60℃
電源 AC100V±10% 50/60Hz
消費電力 50W
外形寸法 幅410×奥行470×高さ270(mm)
重量 約13kg

背景

 MZ-80Kはヒットしましたが、ユーザーからいくつかの問題が指摘されていました。その最も大きな問題は、「キーボードがマトリクス配列である」ということです。特にコンピュータを実業務に用いようと考えるユーザーからすると、あまりにちゃちでオモチャっぽく、入力しにくいキーボードでした。実際MZ-80Kのキーボードはワンボードマイコン時代からなんら進歩しておらず、TK-80などが16進テンキーとして採用していたキースイッチと同様のものをただたくさん並べただけのものでした。そこで、上位機種としてビジネス用途にも訴えられるようなものということでMZ-80Cが作られました。

 MZ-80Cはいろいろな改良点があります。その最大のものは前述のキーボードです。標準的なタイプライタ配列を採用し、スペースキーはスペースバーとしてあくまで長く、左右の両シフトキーも十分な長さを確保し、ホビー向けとは一線を画するルックスとなりました。ただ、今その配列を見ると特に英記号の位置がむちゃくちゃで、DOS/Vマシン等の配列に慣れた人にはちょっと使いにくいと思います。キーボード周辺の回路は変更されずあくまで見た目の配置をタイプライタフェイスにしているので、ある意味互換性がありある意味使いにくくなった部分もありました。
 次なる改良点は、ディスプレイです。MZ-80Kでは白黒でしたが、MZ-80Cではグリーンになりました。グリーンは中緯度地方に端を発する人類、つまりモンゴロイドの末裔である日本人の目に最も優しいとされている色で、またこのディスプレイは白黒テレビの転用などではなく全くのコンピュータ用として製造されたということも意味していました(白黒モニタが転用であるという証拠はないですが…)。オフコンなどでもモノクロモニタはたいていグリーンであり、これも高級感を漂わせるポイントでした。
 もうひとつの改良点は、RAMを標準で最大状態の48KBとして増設不用としたことです。ビジネスで大量データを取り扱うならメモリ増設は必至、ならば最初から実装してしまおうという発想です。高級機にメモリを多く積むのは今でもよくありますね。
 さらにはセミキットの形式をやめ、完成品として出荷されるようになりました。社内でも認知され、パソコンを売ることに肯定的な雰囲気が感じられるようになったことから踏みきりました。
 これらの改良点はMZシリーズをより魅力あるものにしましたが、その分高価となってしまいました。MZ-80Kの198000円に対して、268000円という定価が付けられたのです。ホビイストには法外な値段ともいえますが、会社で資産として購入することを考えればオフコンよりずっと安くあがるわけで、MZ-80Cのターゲットが伺えます。

 次いで、周辺機器もさらに充実してきました。まずビジネス用途には必須と言われた132桁対応のドットプリンタMZ-80P3が発売されました。また大量・高速のデータ処理用にフロッピーディスクドライブMZ-80FD、DISK BASICであるマスターディスケットMZ-80FMD(SP-6010)も発売、これで本格的なビジネス用途にも応えられます。
 そして純正のカラーディスプレイも用意されました。但し本体に外部に出力するような機構は設けられていなかったので、拡張I/Oボックスにボードを装着し、そのボードを介して外部のマイコンユニットであるMZ-80DUAと通信し、モニタそのものであるMZ-80DUBにカラーグラフィックを表示するようになっていました。カラーグラフィックといっても後年のMSX1程度の解像度でしたので、あまり高精細とは言えませんでした。そればかりか本体よりも高価で本体よりも高速なCPUを搭載しているとこれまた後年語り草となりました。
 さらにはこれらの周辺機器の配置に対応したシステムデスクも専用周辺機器として発売されました。例えばMZ-80DUならば上にモニタ部、下の段に制御部を収納するようになっていたり、プリンタなら白紙と打ち出し済みの紙のホルダーがあるなど、寸法も含めてきっちりデザインされたものになりました。

 ソフトウェアとしては、システムプログラムの姉妹版であるシステムプログラムバックアップが発売されました。これはシステムプログラムが本格的ではあるが作業が煩雑かつ時間がかかるという批判に応えるもので、エディタとアセンブラをひとまとめにしメモリサイズを犠牲にして効率化を図ったものです。またクロス開発を意識していたらしく、PROMフォーマッタというバイナリをテキストファイルに変換するプログラムを供給しテープリーダーを備えるROMライタへデータを転送するべくテープパンチャとの接続をマニュアルに記述してありました。
 またサードパーティにならってシャープ自らもスタートレックや五目ならべなどのゲーム、学習ソフトなどを発売するようになりました。先述のマスターディスケットにはインベーダーゲームが収録されたりしました。

 MZ-80K発売から1年近く、MZ-80Cというシリーズを加えてますます盛り上がりを見せていったのです。

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