X1turboのよくある故障とその対処

 さすがに登場から30年以上経過すると耐久消費財とはいえ電子機器も傷んでくるものです。レトロPCを末永く使っていくためにはメンテナンスであったり、故障の修理も必要となるでしょう。ここでは私がいくつか遭遇した故障について、その対策を紹介していきます。

 X1センターにも修理の例が多数ありますので、参考にしてみて下さい。


電源が入らない(テロッパ基板の故障)

 電源自体がダメになる例はX68kに比べても少ないかと思います。手元にあるマニアタイプからX1turboZIIIまで6台ほど、それと周辺機器も含めて電源自体がアウトになったものはありません(それでもX1センターでのマニアタイプのようにサイリスタが破裂したなんてことはあるようですが)。

 それでも電源を入れても完全に沈黙するX1turboがあります。その場合テロッパ基板を疑ってみるといいかもしれません。

 1側のFDDの背後、拡張スロットと同じフレームのところにテロッパ基板があります。ここにはメイン基板方面から4本のケーブルが接続されているのですが、このうち黄色と黒の線…つまり電源を外します。テロッパ基板が原因の場合これだけで起動するようになります。

 テロッパ基板には多数の電解コンデンサが使用されていますが、この容量抜けのため電源(黄色なので12V)に過大な負荷がかかり、安全回路が働いて電流が止められてしまう…というのがテロッパ基板が原因となる電源が入らないトラブルの真相です。

 茶色い基板がテロッパ基板。この上の方の隅っこに、丸いマークが描かれているのが分かると思います。ここには手前に転がっている1000uFの電解コンデンサがついていました。これを外すことで12V電源のプラスとマイナスの間の抵抗が妥当な値を示すようになりましたが…これだけを交換しても根本的な解決になるとも思えず。
 実はこのボード自体が最初のリビジョンのものらしく、無理矢理付け足された部品が裏面に貼り付いておりまして…その中には電解コンデンサも多く、どう始末を付けたものかと…。

 幸いにしてわざわざテロッパを使用して録画するようなことも今更するとは思えませんし、HDMI時代ですから相応の信号に変換して相応の機器にて録画した方が美しい映像が得られるというもの…。というわけで電源供給はせず外したままにしてあります。


カーソルが点滅しない・TIME$やDATE$でエラーが出る(時計が動かない)

 StartUp.Basを実行した時にエラーが出る、カーソルが点滅しない…こんな場合はRTC(リアルタイムクロック)関係がおかしいと考えられます。RTCアクセスはサブCPU経由で行われますが、とりあえずシステムが起動したりキー入力できるなら、サブCPUではなくRTCを疑うべきです。

 X1turboでのRTCの場所(赤丸)です。NECのuPD1990というICが使われています。RTCはメインボードにあって、サブボードに完全に隠れているため、ここまでバラさないとアクセスできません。このX1turboは6MHz改造が施されているため(それと初期ロットのため)ジャンパ線が多数走っています。なお、液漏れ対策として充電池は取り払ってあります。

 ハンダクラックによって電源が供給されなくなる可能性はないこともないのですが、それよりもRTCが時計の基準信号として使っているクロックが供給されなくなった可能性の方がずっと高いです。

 X1turboのRTC部の回路図を拡大してみました。32.768kHzの水晶発振子(X1)がRTCの12と13番端子に接続されており、それぞれはコンデンサ(C3,C4)を介してGNDに接続されているという、典型的な回路です。ただ少し違うのはC4にトリマコンデンサが使われており、容量を調整できるようになっていることです。

 RTCのクロックが供給されないトラブルの場合は、このトリマコンデンサを調整すれば解消できると思います。調整といっても、細いドライバーを使って右か左にちょっと動かすだけで十分なはずです。

 一家に一台はオシロスコープがあると思いますので…と言いたいところですがさすがにそれはネタですので、発振しているのかどうか直接確かめるのは難しいと思いますが、面倒でも仮組みしてBIOSのタイマー画面にて時計が動いているかで確認して下さい。

 このコンデンサは水晶の発振を安定させるためのもので、おかしければ発振しませんし、おかしな周波数で発振するなんてこともありません(やたら寒い日とか暑い日に動かなくなるとかいう可能性はある)。なので細かい調整を気にする必要はないと思って差し支えないでしょう。

 故障の原因はトリマコンデンサの経年劣化による、内部の変形であったり端子の酸化といった部品の特性変化によるものだと思われます。ただトリマコンデンサなので回せばまだ特性の変化していない部分が残っていることから、その部分を使えばコンデンサとして復活できるというわけなのです。
 水晶発振子を使った回路では普通トリマコンデンサを使わないものだと思うのですが、結局最後のX1turboZIIIでも同様の回路になっており、いったい何を意図した、あるいは何を心配したものだったのか…。

 なお上記写真はX1turboのものでしたが、X1turboIIでも同様のトラブルは確認されています。RTCがサブボードにあるなどの違いはありますが、同様の対処にて同じ効果が得られると思います。


ガガガガと異音を発する(FDDトラブル)

 ブート時やフロッピーアクセス時にガガガガとものすごい異音が発生する場合、まぁさすがにそんな音を立てそうな機械部品のある本体内のアイテムってFDDしかありませんけど、ドライブのヘッド位置を検知するセンサが故障していると思われます。

 例えば電源投入直後など、前回ヘッドがどのトラックをアクセスして電源断されたかなんて記録しているわけなどないので、まずはヘッドを第0トラックに移動させてその情報をご破算にします。これをリストアというのですが、実は今どこのトラックの位置にヘッドがあるのかをドライブから読み取る仕組みは第0トラック以外にないのでこのようなことをするのです。一旦第0トラックに移動した後、いくつ動いたかはソフトが数えていられますので、それで十分なのです。

 このリストアが完了したかどうかは第0トラックのところにあるセンサ(フォトカプラ)の状態で判別されます。ところがこれが故障しているとまだヘッドは第0トラックに到達していないと判断されてしまうため、もうそれ以上動けないのにムリに動かそうとしてしまい、異音を発するというわけです。

 このフォトカプラを交換できれば良さそうなのですが、残念ながらX1turboなどの時代に製造された部品は現代のお店には置いておらず、しかも故障したと思われる部品の特性もよくわからないので代替品の選択ができず、さらには仮に部品を交換できたとしてもちゃんと調整できなければ他のマシンとの互換性が低くなってしまいます。というわけで手元の故障ドライブは修理を諦めた状態です。クイックディスクぐらい簡単な構造だと良かったんですけどね…。

所蔵品一覧に戻る