RADEON 8500LE / ATI Technologies

GA-R8500/AGP / I-O DATA


Graphic Acceralation Chip:RADEON 8500LE (R200) / ATI Technologies

RAM:3.6ns DDR-SDRAM 64MB

Port:AGP (32bit 66MHz 4x 1.5/3.3V)

動作確認マシン:PC/AT互換機(S2460 Tiger MP


 カナダのATIが2001年秋に出荷開始した、同社の第二世代ハードウェアT&L機能搭載グラフィックチップであるRADEON 8500シリーズのミドルレンジモデルに当たる、RADEON 8500LEを搭載したカード2種。

 RADEON 8500シリーズ(R200)はその名が示す通り初代RADEON(R100)の改良後継モデルで、旧Tseng Labs.(かつてはET4000シリーズという高速VGAコントローラでグラフィックカード市場に覇を唱えたメーカー)の2Dコア(この初代RADEONについてはRage 6という開発コードで呼ばれていた初期段階から旧Tseng Labs.スタッフの関与が明言されていた)に、旧Chromatic Reserch Inc.(あのRambusからのスピンアウト組で、MpactシリーズというDolby Digital AC-3デコードまで含む極めて高度なDVD再生機能を早期に実現したVLIW構成のメディアプロセッサで知られる。ちなみにATIは主にここのRambus技術を欲して買収した由である)の動画再生技術(こちらについては明言されていないが、付属DVDプレイヤーの品質が同社合併以前のものと比べてかなり向上しており、Mpactのノウハウの流入は明らかであろう)と、CHARISMA ENGINEと命名された旧ArtX(いわゆるSGIスピンアウト企業の一つで、OpenGL系の3D描画を得意としていた。任天堂ゲームキューブのグラフィックエンジンも開発)のハードウェアT&L 3D描画エンジンという、ATIがここ5年程の間に吸収合併した各社の技術を統合してGeForce2に対抗すべく誕生した同チップを拡張・改良して、GeForce3対抗となるDirect X8ネイティブ対応描画機能を完全実装した、非常に強力なグラフィックチップである。

 特に、Direct X8対応についてはGeForce3を上回る機能実装/拡張で、Microsoft側にDirect Xの8.1へのバージョンアップを促す程であり、加えてその出自故にDVD再生支援機能やOpenGLドライバの実装が充実しており、殊に前者は同業他社の追従を許さないレベルに到達している。

 また、多少癖はあるがこの種の内蔵RAMDACを使用するタイプのカードとしては水準以上の画質を実現しているのもこの製品の特徴で、この頃までライバルのnVIDIAがチップ単体のRAMDACの品質ではかなり低水準に留まっていたのと比べれば称賛に値するだろう。

 ここ何年かAppleへのチップ供給契約を抱えていたせいか、ATIはWindowsマシン用としては市場の2番手にしかなれない様な割とつまらないチップの開発を続けていたのだが、nVIDIAがAppleへのチップ供給を開始した事に刺激されたのかそれとも危機感を抱いたのか、R100以降強力なチップの開発に精を出す様になっており、同時にシェア確保を目論んで他のグラフィックカードベンダへの供給を再開している。

 RADEON 8500とRADEON 8500LEの相違はコア/メモリ駆動周波数(RADEON 8500LEの場合は双方共250MHzで、メモリについてはDDR-SDRAMなので500MHz相当となる。なお、これらのカードの場合、250MHz駆動のメモリが入手難であったのか、上位のRADEON 8500と同じく3.6nsの275MHz駆動対応品が実装されている)のみで機能的には完全に同一であって、RADEON 8500が高クロック動作の選別品である事が伺える。

 ちなみにこのカードにはDVI-I・VIDEO OUT・RGBの3端子が実装されているが、DVI端子でアナログRGB出力を行う為にAnalogDevices製ADV7123が搭載され、S/RCAヴィデオ出力の為にはALL IN WONDERシリーズでおなじみのヴィデオ入出力用コンパニオンチップであるRage Theaterチップが搭載(このカードではヴィデオ出力機能のみを使用しており、ヴィデオキャプチャ機能は殺されている)されるなど、コスト的にはやや不利な仕様で、どうやらチップの基本設計開始段階ではこれらの機能は無視されていて、ライバルnVIDIAの動向から急遽これらの機能追加が決定されたものの様である。

 筆者が入手したのはRADEON 8500LEの純正品とこれのI-O DATA向けOEM品の2種で、後者はI-O DATA製品として販売されてはいたが、その実体は基板のATIロゴを見るまでもなくATI純正のRADEON 8500LEカード(バルク品として市場に出回っている)そのもので、チップのみならずカードまで完全にOEM供給された事が判る。

 但し、PnPで返すコードは純正品が

 VEN_1002&DEV_514C&SUBSYS_013A1002

であるのに対し、GA-R8500の方は

 VEN_1002DEV_514C&SUBSYS_119010FC

で、そのままではATI純正ドライバはインストール出来ない仕様となっていた。

 この辺りはATIチップ/カードのOEM供給版にほぼ共通する問題であったが、流石にOEM供給の数が増えると苦情が多くなった様で、ある時期のバージョンのドライバからは純正チェックとでも言うべきサブシステムIDチェックは基本的に行われなくなっている。

 この2種のカードは前述の通り出力端子として15pin D-SUB RGB、DVI-I、それにS/RCAヴィデオの3端子が搭載されておりマルチモニタ機能も使えるが、このメーカーの伝統か、初期段階でのWindows 2000対応ドライバではこの機能について色々と不具合が発生していた。

 もっとも、初期にはドライバに色々問題が出たのだが、バージョンアップを繰り返す事でこの辺は大幅に改善されており、今では動作が格段に安定している。

 前作R100は商業的に決して大々的な成功を収めたとは言い難かったが、このR200はnVIDIAに相当な衝撃あるいは打撃を与える事に成功しており、派生モデルとして機能を多少削った廉価版というべきRADEON 9000(RV250)→RADEON 9200(RV280)が登場した他、このチップ/カード自体もBIOSの改良(細部の改良というかバグフィックスが結構行われているらしく、S1837UANG Thunderboltなど、初期のRADEON 8500用BIOSでは起動できなかったマザーボードの多くでも起動するようになっている)を施されてRADEON 9100として販売が継続されるなど、後継となるRADEON 9700/9800系(R300・R350)が登場した後も長らく同社のグラフィックカード事業の屋台骨を支える重要な機種であり続けていた。

 このR200はR300/RV350系以降に比べて消費電力が格段に少なく、3D描画でDirect X9.0以降で固有の命令を必要としない場合には、描画が高速でしかも安定動作が期待できるという意味で今も選択肢足りうるカードである。


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