WGN-DX4 / Melco(BUFFALO)
Graphic Acceralation Chip:86C775 (Trio64 V2/DX) / S3
RAM:50ns EDO DRAM 4MB
Bus:C Bus (16bit 10MHz)
動作確認マシン:PC-9821As2/U8W
1997年に発売された、S3製のRAMDAC内蔵チップである86C775 Trio64 V2/DXを搭載したPC-9800シリーズ用のグラフィックボードである。
姉妹機種としてグラフィックメモリを2MB搭載したWGN-DX2、WGN-DX2・WGN-DX4にWindows Sound System互換PCM音源のCristal Semiconductor製CS4231Aを追加搭載しオプションのドーターボード(SRO-F)の搭載でYMF-288(OPN3-L)によるステレオFM音源にも対応するWSN-DX2・WSN-DX4の3機種が存在する。
前世代のWGN-A系が低速なGD5434搭載で不評を買ったのに対し、本機種では廉価版扱いながらも86C864譲りの基本性能の高さでそこそこの性能を評価されていたS3のTrio64シリーズの中でも上位機種とされる86C775 Trio64 V2/DXを搭載、50nsのEDO DRAMを4MB搭載することでCバス対応グラフィックボードとしては最速級の性能を実現した。
特に、フルカラーノンインタレース表示で1024*768表示に対応したことと、DirectDrawをハードウェアレベルでサポートしたことの2点は重要で、両方をサポートするのはCバススロット対応のグラフィックアクセラレータボードではこのシリーズのみであった。
Trio64系グラフィックチップはシングルポートのDRAMに対応する86C864 Vision 864にRAMDACを内蔵したものを出発点としており、基本になった86C864が廉価機とはいえメモリバス幅が64bitとなっていて意外と高速であったことと、内蔵されたRAMDACの出力が割とまともであったために少ない部品でそこそこマシな画質が得られたことなどから、GD54xx系などの他社製廉価チップを駆逐する勢いで普及した。
元々PCIバスで接続するのが基本のVGA互換グラフィックチップをCバス接続とするため、ボード上のCバスカードエッジ端子の直近にSGC-4なるBUFFALOの社名入りブリッジチップが搭載されている。
基板上では、モノラルスピーカーやCS4231A、それに2種のドーターボード(FM音源用のSRO-Fだけでなく、もう1種搭載するためのコネクタが用意されている。ただし、これはパターンのみで実際には利用されていない)用コネクタなどのパターンが面積を占めるため、グラフィック関係の部品は6割程度の面積を占有するにとどまっており、98本体からのRGB入力コネクタ、RGB出力コネクタ、入力信号とTrio64 V2/DXからの出力を切り替える電子スイッチ、8枚のNPN製NN514265J-50 EDO DRAMチップ、SGC-4、2つのクロックオシレータ、そしてTrio64 V2/DX、と非常に簡素な部品構成となっている。
グラフィック機能のみを搭載するこの製品については、Cバスボードとしては確かに最速に近い性能が出ており、メモリを4MB積んだおかげで多色高解像度表示ができ、比較的まとも(この時期の製品としてはトップクラスである)な内蔵RAMDACのおかげでそこそこの画が出るなど、WSN-A2などとは比べものにならないほど良い製品となっている。
ライバルのI-O DATAは同時期にTridentのTGUi9680XGiを搭載したボードを出していて、これが性能的に今ひとつであったこと、それにCanopusが1995年のPower Window 968でCバス対応を事実上打ち止めにしていたことなどを考えると、PC-9800シリーズの終了が宣言される直前にデビューしたこの製品は、Cバスしか拡張スロットの空きのない98でWindowsの描画性能を向上させる最後の手段あるいは最後の救済策となる製品であった。
無論、PCIバス対応のグラフィックチップとしては低速な廉価機種と見なされるTrio64 V2/DXを、それも更に低速なCバスにバスブリッジを介して接続して使用するのであるから、絶対的な性能は低かったし、ドライバの出来もCanopusのPower Window用のものと比較すると正直良いという印象はなかった。だが、そもそも前期のValustarでは平然とCirrus Logic製GD54xx系チップを、それもグラフィックメモリ1MB(増設不可)で搭載していたことを考えれば、Cバス接続とはいえ高解像度と新しいDirectXに対応し、そこそこ以上の性能の出るこの製品には十分な利用価値があった訳である。
なお、これは一応386マシン以上に対応することになっているが、最低でも486以上のCPUを搭載する速いマシンで使わないとあまり意味のないボードであることは申し添えておく。
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