WSN-A2F / Melco(BUFFALO)


Graphic Acceralation Chip:CL-GD5434 / Cirrus Logic

Sound Controller:YMF288-S (OPN3-L) / YAMAHA + CS4231A-KQ (WSS) / Crystal Semiconductor

RAM:70ns EDO DRAM 2MB

Bus:C Bus (16bit 10MHz)

動作確認マシン:PC-9821As2/U8W


 Cirrus Logic製のRAMDAC内蔵チップであるCL-GD5434に加えてWindows Sound System互換PCM音源のCristal Semiconductor製CS4231A、それにFM音源のYMF288(OPN3-L)を搭載したPC-9800シリーズ用のグラフィック/サウンド複合ボードである。

 姉妹機種としてグラフィックメモリを4MB搭載したWSN-A4Fが存在する。

 Windows用グラフィックアクセラレータやサウンドボードの関係で拡張スロット不足が叫ばれていて、各社が複合ボードや複合化可能なボードを送り出していた中での登場で、これ1枚を挿すだけでWindows 3.1動作に必要な諸条件が揃う(何しろMKEタイプのCD-ROMドライブを接続する為のインターフェイスを追加搭載する事さえ可能だった)というのがセールスポイントだった。

 もっとも、その性能はグラフィックアクセラレータが低速なGD5434、しかも性能が良くない事では定評のあったメルコ製ドライバ(当時最大のライバルであったI-O DATAのGD54xx用ドライバはリファレンス以上と評されるほど優秀だったが、当時のメルコはコード盗用をCanopusに訴えられた前歴がある程開発力が低く、性能的に芳しくなかった)という事でグラフィック性能の評価は今一つ、サウンドもPC-9801-86互換を謳っていたがPCMがWSS-PCM互換のCS4231Aでしかも何の工夫もなくそのまま接続されており、加えてFM音源も正規のOPNAではなくその簡略版であるYMF-288(OPN3-L)であった為にDOSレベルでの互換性はかなり低く、更に言えばオプションのCD-ROMインターフェイスもいわゆるサウンドブラスター互換の専用インターフェイスである為にドライブ調達等で問題が多い、と多機能だが全てに中途半端な、器用貧乏の典型と言うべき完成度の製品であった。

 画質については初期のRAMDAC内蔵グラフィックアクセラレータ搭載という事で絶望的といって良いレベルで、音質についてもモノラルの小口径スピーカーを面積的に厳しい基板上に直接搭載する(基板下向きに装着され、基板に丸い開口部が設けられている)という正気を疑う設計である為、正直まともな論評の対象足り得ない。

 厳しい言葉ばかりが続くが、この時期のメルコ=BUFFALOブランド製品はCPUアクセラレータやメモリボード、LAN、それにプリンタバッファ関係(これらについては間違いなく一流だった)を除けば(それだけあれば充分、という話もあるが事はそう簡単ではない)全般に良い印象が無く、“安かろう悪かろう”というのが当時の筆者がこのブランドに抱いていたイメージであった。

 何より、基板の部品配置やアートワークの乱雑ぶりが悪印象を与える最大の原因なのだが、加えて実装部品、殊にコンデンサ類の品質が良くなかった事の印象も強く、良く見ると結構難しい事をやっている割に評価が低くなっていた。

 無論、当時の我々(私や、周囲の友人知己)が意識的に拡張スロット数の多いマシンを選んで買っていて、この種の微妙に互換性の低い複合ボードを使う必要が無かった事が低評価を更に加速していた事は否めないのだが、この辺の機種がソフトウェア互換性の点で問題を多発したのもまた確かで、それが災いしてメルコ/BUFFALOのブランドイメージには「安いがどこかに問題がある」という印象が今なおつきまとい続けている。

 そんな訳でこのボードそのものについては今の視点においてなお、筆者には好意的評価を下すべき理由が見つからない。

 「無いよりはマシ」という言葉を使う事が憚られる様な製品が確かに存在するという、一つの反面教師として忘れがたい製品である。


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