Revolution 3D WRAM 8MB PCI / Number Nine Visual Technology


Graphic Acceralation Chip:Ticket to Ride (T2R) / Number Nine Visual Technology

RAM:50ns WRAM 8MB(増設モジュールにより最大16MB)

Bus:PCI Rev.2.1 (32bit 33MHz 5V)

動作確認マシン:PC/AT互換機(S1837UANG Thunderbolt


 世界初の市販AGPグラフィックカードとなったRevolution 3D(AGP版)のPCIバス対応版で、AGP版と同じく1997年に発表された。

 Number Nine Visual Technology(以下、#9と略記)社の手になるオリジナルハイエンドグラフィックアクセラレータチップシリーズの第3作目に当たる、Ticket to Ride (T2R)を搭載している。

 #9恒例のVGA-BIOSの起動メッセージはこのカードの場合、“I've got a "Ticekt to Ride"”(アルバム“Help!”収録の“Ticekt To Ride”の歌詞のもじり)で、PCBの透かし文字は“When I get to the bottom I go back to the top of the slide”と“Where I stop and I turn and I go for a ride”(共にホワイトアルバム収録の“Helter Skelter”より) 。

 Imagine 128に始まる#9の128bitアーキテクチャグラフィックアクセラレータシリーズの系譜図で考えれば、姉妹モデルであるAGP版ではなく、こちらこそが正当な後継者であると見る事が出来ようか。

 ヴィデオメモリとして、韓国の三星電子が独自開発したWRAM(MatroxのMillenium系に搭載されて有名になったメモリだが、それらに搭載されたのが60ns品だったのに対し、こちらでは50nsの高速モデル(恐らく選別品と考えられる)が採用されている)が8MBないしは4MB分搭載され、それ以外にも増設用のWRAM 8MB搭載ドーターボードを接続する為の専用メモリコネクタが実装されていて、これにボードを挿す事でVRAM容量を最大16MBまで拡張する事が出来る様になっている(これはAGP版も共通)。

 ちなみに、PCI版についてはnVIDIAのRIVA 128でも採用された高クロック動作のSGRAMを採用した廉価版(4MB/8MB)が存在した事が確認されているが、こちらの場合は電気的に何らかの制約でもあったのか、メモリ増設コネクタは設けられていない。

 このSGRAM版の存在は次のRevolution IV(Ticket to Ride IV&SDRAM 16/32MB搭載。1998年発表)への布石とも考えられるが、この時期以降#9はWindows NTへの対応を特に重視するようになり、ハイエンド市場への急速なシフトを図ろうとしていた時期だけに、明らかにWindows 9xを利用するユーザー層への量販を前提としたこのSGRAM版の出荷からは、当時の同社の経営戦略に矛盾があった事が感じ取れる。

 その為かどうかは判らないが、この時期にRevolution 3D用として同社が提供した純正Windows 9x用ドライバの出来は最低で、Direct Xへの対応をはじめとして致命的と言って良い様なバグを多数抱えてさえいた。

 もっとも、Direct Xへの対応の遅れは、Imagine128/Ticket to Ride系チップ搭載カード全てに共通する問題であって、決してこのカードに限った問題ではなかったのだが、当時#9にとって主力商品であった筈のこのカードで充分な対応が出来なかった段階で、#9社内のドライバソフトウェア開発スタッフの能力不足は明白であろう。

 そのせいかWindows 2000については同社はドライバを提供せず、代わりにMicrosoftに#9の自社開発になる各チップの詳細な仕様情報を提供して同社がドライバを書く(もしかしたら#9のエンジニアがMicrosoftに派遣されてそこでドライバが書かれたのかも知れないが、この頃の#9の状況を考慮するとその可能性は低い)という形が取られた様だが、その方がずっと良いドライバが書かれた(各ドライバが汎用の、#9製品に限定しないマルチディスプレイドライバとして記述され、しかも動作時の安定性がかなり高いというのは、改善以外の何物でもない)というのはおよそ洒落にならない話ではある。

 話をハードウェアに戻すと、カードのデザイン、実装パーツ等はバス/ポートの相違に関わる部分を除けばほぼ完全にAGP版と共通であり、事実ベンチマークの測定結果もほぼ拮抗している。

 この時点ではAGPはx1モード、つまり66MHz 32bit転送で最大転送レート266MB/sという転送能力を備えていたのであるが、1GB/sを越える転送能力を備えたx4モードが登場した現在でさえ、3Dポリゴンの余程大きなテクスチャデータでも転送しない事には32bit 33MHz PCIバスの133MB/sの上限さえなかなか越えないのだから、転送能力以外特に積極的にAGPを活用する仕様であったとは言い難いTicket to Rideクラスのグラフィックチップでは、PCI版とAGP版の間に大きな差が存在しなかった事には不思議は無い。

 なお、当モデルではMilleniumショックの余波か、前作のImagine 128 Series IIから更に低コスト化の為の努力が払われており、このカードの命である高画質を支えるRAMDACについても、前作のImagine 128 Series II VRAM 8MB版で250MHz品が搭載されていたのが、今回のRevolution 3D WRAM 8MB版ではImagine 128 Series IIの4MB版と同じ220MHz品にグレードダウンしている。

 もっとも、現実にはその限界性能が必要になる様な使い方はしない訳で、このあたりは非常に現実的な判断と言える。

 実際、このカードは私の知る限り最良に近いフォーカス特性と発色能力を備えており、マルチディスプレイに対応したPCIカード中でも最速クラス(マルチディスプレイのスレーブ動作に回るカードにはDirect DrawやDirect 3Dの機能は特に必要が無く、とにかく速いGDI描画性能が求められる)である事もあって、その利用価値は今なお非常に高いと言えるだろう。


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