GA-SV432/PCI / I-O DATA
Graphic Acceralation Chip:Savage 4 PRO Plus / S3
RAM:7ns SDRAM 32MB
Port:PCI Rev.2.1 (32bit 33MHz 5V)
動作確認マシン:PC-9821RvII26/N20、PC-9821Xv20/W30、PC/AT互換機(S2466N-4M Tiger MPX)
S3製Savage4シリーズの2番目に高速なバージョン(最上位はXtreme)であるSavage 4 PRO Plusを搭載する、I-O DATA自社設計によるPC-9821対応を謳うグラフィックカードとしては末期(1999年)の製品である。
筆者は基板の設計の異なる2枚を入手して使用した。
Savage 4はRIVA128の登場で大打撃を受けたS3が勢力回復を目指して開発したものの、技術的な立ち後れから事実上失敗に終わったSavage 3D(86C391)の後継改良モデルで、86C395という型番を持っている。
前作Savage 3Dはテクスチャ圧縮技術(S3TC:S3 Texture Compression。後にDXTC:Direct X Texture CompressionとしてMicrosoftのDirect Xに標準搭載されている)を初めて実装するなどそれなりに見るべき点の多いチップであったのだが、いかんせん基本設計がViRGE(86C325)のそれを踏襲し続けていた(事実開発途中まではViRGE/GX3の名で呼ばれていた)為にこの時期のチップとしては絶対的な基本性能が不足しており、そもそも目玉のテクスチャ圧縮技術自体がそれそのものの目指す方向性は決して間違ってはいなかったものの、チップの基本性能の不足を隠蔽するのが目的と解されても仕方ない様な状況では、ソフトハウス側にこの機能の利用を促すにはあまりに説得力に欠けていた。
只、実績のあるViRGE系コアがベースということで内蔵RAMDACは意外と高クロックに耐える設計となっており、少なくとも2Dの画質については(きちんと作ってあるカードならば)RIVA128よりマトモだ、との評もあった。
そんなSavage 3Dの後継機種として当初より普及機市場への展開を目論んで設計されたSavage 4であるが、タイミング的に周回遅れといいながら製造プロセスの進化によるチップの動作クロックの高クロック化等で漸く性能が実用レベルに到達しており、特に上位のXtremeやPRO Plus辺りならばRIVA TNT以上TNT2未満という微妙なラインの性能を実現していた事と、そもそもチップ自体がダイサイズの関係でRIVA TNT/TNT2系に比してかなり廉価であった為、登場前の下馬評以上の普及を示している。
このカードは原則的にKM416S4030CT-G7なる型番を記された容量64Mega bitの三星電子製SDRAMチップを表面に4枚実装しているが、綺麗にまとまっていた前期モデルとは異なり、後期モデルの場合はこれとは別に16Mega bitのチップを表裏各4枚ずつ実装可能なパターンが用意され、16Mega bitチップ表面4枚実装で容量8MB、16Mega bitチップ表裏8枚実装で容量16MBのバリエーションモデル生産を考慮した設計に変更されていた。
事実、8MB版はGA-SV408/PCIという型番で主としてAGPスロットを持てないIntel 810系チップセット搭載機へのOEM供給用ホワイトパッケージ品として販売されており、件の配線パターンは無駄になっていないのだが、チップが4枚単位となっている事で判る通りこのSavage 4はメモリが64bitアクセスとなっており、カードの設計/製造上はチップの調達や配線パターンの自由度が高くなるなどメリットが多かった様だが、性能的にはこれはかなり不利な要素である事は言うまでもない(むしろ、その条件下でTNT〜TNT2相当の性能を引き出せている事を誉めるべきか)。
もっとも、RAMが半分の16MBしか搭載していないGA-VDB16/PCI(128bitアーキテクチャ)ではフルカラーが可能な1920*1440モードでハイカラーしか利用出来ないなど、メモリのピーク性能の不足が表面に出る局面もあって、メモリバス幅が狭い事はやはり好ましい事ではない(当然ながらDRDRAMの様にバス幅が狭くとも超高クロック転送で速度を稼げる様なアーキテクチャならば話は別だが)様だ。
世代が新しいだけにMotion Compencation機能によるソフトウェアDVD再生支援機能の実装(これは世代の古いVoodoo Bansheeには無い機能である)や、大容量メモリ実装を利した24bit Zバッファ、あるいは32bit3Dレンダリングといった機能も充実してはいるが、動作速度を見る限りは決して充分ではない。
流石のI-O DATAもこれではセールストークに欠けると思ったのか、この機種ではDFP(Digital Flat Panel)タイプの液晶モニター用デジタル出力端子が搭載(これのインターフェイスを持たされている事もSavage 4の特徴の一つである)されており、また基板上にはこの為にSilicon ImageのPanel Linkチップ(SiIl50ACT)が実装されている。
この時期液晶モニタ用デジタルインターフェイスはDVIとDFPが標準の座を争っていて、グラフィックカードベンダーはどちらに付くか迷っていた(中にはSR9というSavage 4 PRO搭載カードを出していた#9の様にOEM先の意向次第で仕様変更が容易な様に液晶出力部分をドーターカード形式にして両対応を図ったメーカーもあった)のだが、これは最終的に(条件付きながら)DVIに軍配が上がっており、DFPを採用したメーカーはこのI-O DATAも含め、変換ケーブルを出すなどアフターケアに追われた様である。
さて、肝心のこのカードの性能だが、ドライバの問題かデュアルCPUなRvII26に挿してチェックした(この時点ではPCIバス搭載98はこれしか持っていなかった)所、Windows 2000で青画面を出して停止した(これは後日デュアルCPU搭載マシンでテストしても再現したため、ドライバレベルの問題と判明した)ため、シングルプロセッサ構成のPC/AT互換機に挿した場合の印象しか書けないのだが、その範囲では画質はそれなりに良好で、3Dグラフィック機能もこの時期の製品としては決して高速という訳ではないがそこそこ良好であった。
只、PCIの3D対応グラフィックカードという観点で見るとGA-VDB16/PCIの方が古くてVRAM容量も少ないにもかかわらず高速である為、意外と高価なその価格設定を考えると不満が残ったのではないだろうか?
このカードのメリットは、ワイドタイプのモニタに対応する特殊解像度での出力が可能な事と、GA-VDB16/PCIで不可能な高解像度画面モード(2048*1536ハイカラー)が利用可能な事の2点で、後継機種としてこれを完全に凌駕するSavage 2000搭載のGA-SV2K32/PCIが存在する以上、それ以外については取り立てて評価に値する点は無い様に思われる。
無論、PC-9821に正規対応するグラフィックカードであるだけで充分貴重な存在ではあるのだが・・・。
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