Imagine128 4MB VRAM 1280 PCI / Number Nine Computer Corporation


Graphic Acceralation Chip:Imagine128 / Number Nine Computer Corporation & CL-GD5422-80QC-D / Cirrus Logic

RAM:70ns Dual Port DRAM 4MB (for Imagine128) + 70ns Fast Page DRAM 512KB (for CL-GD5422) + 70ns Fast Page DRAM 512KB (for Masking Buffer / Option)

Bus:PCI Rev.2.0 (32bit 33MHz 5V)

動作確認マシン:PC/AT互換機(MS-6163)


 グラフィックアクセラレータカードの名門、Number Nine Computer Corporation(以下#9と略記)が1994年に発表した、世界初のPC用128bitグラフィックアクセラレータチップであるImagine128(初代)を搭載した、高級グラフィックカードシリーズの最下位モデルである。

 このシリーズにはPC/AT互換機用としてVRAM 4MB版(RAMDACの相違で1280と1600の2タイプが存在)と最上位モデルとしてVRAM 8MB版が存在した。

 ちなみに起動時のBIOSメッセージは“Imagine there's no limit...”(言うまでもなく、ジョン・レノンの名曲“Imagine”の歌詞のもじり)であった。

 時期的にMatroxのMillenium(1995年発表)とほぼ同時期の開発で、70nsの小容量デュアルポートRAM(所謂VRAM)が整然と並ぶ大柄な基板レイアウトに時代を感じる。

 このカードに実装されたImagine 128チップの生産はSYMBIOSブランドのSCSIコントローラで知られるLSI Logicが担当しており、同社のロゴが大きくプリントされた、相当に大きなサイズの表面実装タイプセラミックパッケージ(ちょうどSocket 7 CPU並のサイズだ)に納められている。

 このImagine 128というチップは、世界初の128bitアーキテクチャに基づくその設計仕様故か、試行錯誤の跡があちこちに見られ、このチップの機能を直接利用するネイティブ対応のVGA-BIOSは開発が間に合わなかった為にカード上のBIOSには内蔵されておらず、それ故そのVGA機能を代行するチップを接続する為にPCI to ISAバスブリッジ機能がわざわざ実装されており、VGAモードはこのブリッジにISAバス接続されたCirrus Logic製CL-GD5422とこれに対応したVGA-BIOSが代行するという、かなり複雑な構成となっている。

 つまり、かつてハードウェア仕様の関係でPC-9800シリーズでは一般的であった(そして最近の高級Open GLアクセラレータでも採られている)、DOS画面専用の低速なグラフィックコントローラ+高速のグラフィックアクセラレータという構成を採っているのであり、ある程度コスト上昇を無視出来るハイエンドカードならではの贅沢な構成であると言えよう。

 もっとも、当時のグラフィックチップ市場を見回してみると、あのPower 9000シリーズをはじめとして結構VGAコントローラ機能を内蔵していないチップがあったから、必ずしもこのチップが特別であったという訳ではない。

 当然ながらこの仕様ではDOSモード=VGAモードでの描画性能は期待出来ず、良くも悪くもユーザーを選ぶ製品であった。

 この辺はライバルのMilleniumも同様で、どうやら矩形描画を最重視するGDI描画命令への特化・最適化が過ぎた事が原因の様だ。

 まぁ、このカード/チップの開発時点では、Direct Drawの様な描画命令がWindowsに実装されると言うのは全くの想定外の出来事だった訳で、一概にメーカー側を責められる物でないのも確かなのだが。

 このImagine128シリーズのチップは、通算第3作に当たるTicket to RideまではRAMDAC外付け(それどころか第4作のRevolution IVに搭載されたTicket to Ride IVでは、チップ自体に相当高品質なRAMDACが内蔵されていたにも関わらず、わざわざ別に外付けRAMDAC用のインターフェイスが用意されていた)であるが、この製品の場合はTexas InstrumentsのTVP3025-175PCEと呼ばれるドットクロック175MHzのRAMDACが外付けされている。

 これは上位モデルや後継モデルに実装されていたIBM社製のRGB526と呼ばれるパレット付きRAMDAC(ドットクロック220/250MHz)と比較すればややグレードが落ちるが、当時としては立派にハイエンドの扱いを受ける高クロック対応のRAMDACで、ライバルに位置付けられるMatroxのMillenium(初代)も最初は(PC-9821用としてNECにOEM供給された分については最後まで)このTVP3025-175系を搭載していた。

 Cirrus Logicの一連の製品群に始まるグラフィックチップへのRAMDAC内蔵は、確かにグラフィックカードそのものの低コスト化を実現する上で大きな力となったが、一方でチップとRGBコネクタの間の距離が伸びてしまった事に起因する、信号線のインピーダンス不整合等の問題を引き起こしてもいて、必ずしも良い事ばかりではないのである。

 いずれにせよ、今時の高速なAGP接続のグラフィックカードと比較すれば随分見劣りする仕様であるのだが、それでもGDI描画性能は同期のライバル製品であったMillenium同様に今なお一級品で、その傑出した画像品位を考えれば、ビジネス用としてならばこれから先も結構“使える”カードである。


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