RH5770-E1GHW/HD/DP / 玄人志向



Graphic Acceralation Chip:RADEON HD5770(RV840(Juniper XT):コアクロック850MHz) / Advanced Micro Devices

RAM:GDDR5 SDRAM 1024MB(4,800MHz相当 128bit)

Port:PCI-Express 2.0 (x16)

動作確認マシン:PC/AT互換機(S2915A2NRF Thunder n6650W


 2009年10月に発売が開始された、Direct X 11対応としては最初のミドルレンジチップであるAMD(旧ATI Technologies)のRADEON HD5770(Juniper XT /RV840)を搭載するカード。

 これはリファレンスの外排気型2スロット占有クーラーを搭載するモデルで、このカードを挿すマザーボードのスロット構成および筐体内エアフローの制約から、隣接スロットに挿したハーフサイズのPCIカードと冷却ファンの吸気口が干渉しないこのタイプを敢えて選択、購入した。

 RADEON HD5770は型番からも明らかなように、前世代のRADEON HD4000シリーズで末期に追加されたRV740搭載のHD4770の後継という扱いになる、ミドルレンジの中でも上位に位置づけられるモデル(注1)である。

 このカードに搭載されたJuniper XTは、世界初の量産Direct X 11対応グラフィックコントローラでありRADEON HD5000シリーズではハイエンドに位置づけられるCypress / RV870(注2)をちょうど半分に切った様な構造のチップ(注3)である。そのため、前世代のハイエンドであったRADEON HD4850/4870に搭載されていたRV770と比較するとメモリインターフェイスのバス幅が半減した以外のスペックが同格となり、さらにメモリ・コア共に動作クロックがそれらよりも引き上げられているため、RADEON HD4870と比較するとメモリの実効帯域が約2/3しかないことを除けば、これらと同等以上の性能が得られる設計(注4)である。

 また、このCypress/Juniper系では製造プロセスの55nmから40nmへのシュリンクに加え、消費電力削減のための改良が各部で行われており、公称最大消費電力は108WとHD4850よりも2W低く、さらにアイドル時消費電力に至っては18Wにまで引き下げられ、HD4850/4870とは比較にならないほどの省電力化(注5)が実現している。

 さらに、上位のHD5850/5870と同様、DVI-I 2ch、HDMI、Display Portの4つの出力コネクタを備え、この内DVI 2chとDisplay Portを組み合わせた3画面出力に対応している(注6)。

 筆者の場合はHD4850からのリプレースであったが、低発熱、高速、高機能と性能面での不満はほぼ皆無であった。ただし、リファレンスクーラーに限らずこのHD5770についてはどの製品も2スロットタイプのクーラーを搭載しているため、1スロットでないと運用上色々制約の多い筆者の環境ではやはり不便で、またVGA-BIOSがHD4850の61KBから128KBへ倍増したためか、S2915ではPCI Express x16スロット#2でしかVGA-BIOSが認識されないという問題(注7)が発生しており、その対応に苦労する羽目に陥った。

 なお、最近のCatalystドライバでDVI-D出力とアナログRGBの2画面出力とし、なおかつVRAMの動作クロックを引き落とした場合、筆者の環境ではホイールマウスを使ってIEなどで表示したページをスクロールさせると、アナログ側画面に大きなノイズが走る現象が発生している。これはメモリクロックを定格で固定した場合には発生しておらず、ドライバ側か、それともRAMDACかのいずれかに何らかの問題が発生している可能性が考えられる(注8)。

 今時アナログRGBモニタとデジタルモニタを混用する人も少ないかとは思うが、この現象が起きたときにはVRAMの動作クロックを確認してみることをおすすめしておく。


 (注1):下位モデルとして、シェーダーのSIMDユニット1セット、つまりVLIWプロセッサを16基無効化して単精度積和演算ユニット数を720とし、コアクロックも700MHzに引き落としたJuniper LEを搭載する、RADEON HD5750が提供されている。

 (注2):RADEON HD5850/5870などに搭載。

 (注3):シェーダーの単精度積和演算ユニット数800、レンダーバックエンドユニット数16、128bit GDDR5メモリインタフェース、というJuniper XTの仕様はフルスペックのCypressの丁度半分となる。

 (注4):動作クロックはコア・メモリ共にRADEON HD4890と同等である。また、HD4850との比較ではメモリバス幅半減が実効メモリクロック2.4倍で補われるため、差し引きしても実質的なメモリ性能は約20%増となる。更にコアクロックも36%増となっており、対HD4870/4890はともかく対HD4850では1ランク下のグレード・価格でありながら性能面でこれを完全に凌駕することになる。

 (注5):HD4850で30W、HD4870で90Wを公称した。

 (注6):どうやら内蔵TDMSトランスミッタの結線の制約によるものらしいが詳細は不明。ちなみに対応OSはWindows Vista/7となる。

 (注7):この症状はCypress搭載のHD5850でも発生する。挙動から判断する限り、3画面出力対応に伴うBIOS拡張が原因のようだ。

 (注8):HD4850・HD5770・HD5850の3機種全てで発生し、しかもアナログ側のV-Syncを75Hzから60Hzに落としたら軽減されたところから察するに、RAMDAC周辺のプログラムに何らかの不具合があるのではなかろうか。


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