Apple Extended Keyboard II [M0312J] / Apple Computer


 中古(Made in USAの91/95年製)と新品(Assembled in Mexicoの98年製で恐らく最終生産ロット)で入手。

 Apple Keyboard IIの拡張配列版という扱いであるが、当モデルは前作に引き続き高価なアルプス電気製ノンクリックメカニカルスイッチ(軸足の成型色はアイボリーホワイト)を採用している。

 当然ながらこれは「拡張キーボードII」と呼称されている。

 これは前作と異なりデザインがApple社内で行われており、“Espresso”と呼ばれるデザイン言語に従った同時期のMacintosh、例えばMacintoshII VXあたりと共通する有機的な曲線を採り入れた造形に変更され、同時に前作には無かった傾斜角度調整機構が搭載されている。

 このティルト機構は、本体後側に控えめに組み込まれたスライドスイッチの移動量に合わせて本体の横幅一杯の薄い“足”が迫り出す、という他に類例を見ない非常に独特な装置で、一見しただけではそんなものが内蔵されている事さえ気付かない程である。

 こういうデザインの為のデザインとでも言うべき部分に無闇に金をかけるのはこの時期のApple製品の悪癖であるが、ティルト機構が組み込まれた事自体は取りあえず歓迎すべき改良ではあった。

 これは1990年の発表から実に8年に渡って殆ど仕様変更もデザインの変更も無いままに生産販売が続けられた驚異の長寿命モデルであるが、同時にその製品寿命の後半期にあっては国内市場で普通に入手可能な唯一のALPSメカスイッチ搭載ノンクリックメカニカルキーボード(PC-9801-114も同時期のALPSノンクリックメカニカルスイッチ搭載機種だが、特殊配列であったから一般的とは言えまい)でもあった。

 キータッチの入りは特徴的且つ絶妙だった初代と異なりかなり素直だが、ストロークの終端の感触では明らかに初代に劣る。

 分解してみると初代のスイッチに比べて多少簡略化されている様で、それがクリック感に影響しているらしい。

 なお、初代のコントローラはNEC製だったが、こちらは東芝製の80C49AP6-6771を搭載している。

 個人的には、どうしても稀にみる傑作であった先代と比較してしまうので、余り高い評価は出来ない部分があるのだが、世間の自称“高級”キーボードの品質が急降下していった中にあって、これ程高水準のキーボードを98年まで生産し続けたAppleの姿勢は高く評価すべきであろう。

 逆にそうであればこそ、今の同社製マシンのキーボードの品質には納得が行かない面が多々あるのだが・・・。


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