X68030 (CZ-500CB) 付属キーボード(DSETK0023CE04) / SHARP
X68000初代から最後のX68030まで、色を変えながら採用され続けた、ノンクリックタイプのメカニカルキーボードの最終モデル(1993)。
折角のアルプス電気(ALPS)のメカニカルスイッチ搭載機ながらキータッチはそれ程宜しくない、というのが筆者の使用感(他のALPSメカニカルスイッチ搭載キーボードと比べるとストロークが微妙に浅過ぎる様に感じられ、またストロークそのものの感触もややもっさりしている)だが、それでも名作の誉れ高きALPSキースイッチ搭載という事で押下時のぐらつきは少なく打鍵感も水準以上(上の評価と矛盾すると言うなかれ。あちらはALPSメカニカルスイッチ搭載キーボード間での相対的評価であって、世間全体の絶対的評価で言えばこれは充分優秀な部類に入る)だから、今の世間一般のPC用キーボードなど足下に寄せ付けない出来であるのは確かである。
キーコントローラはINTELと沖電気の著作権表記の入ったシャープ自社製80C51(M80C51F-113)で、スチールのフレームに組み付けられて薄いシールド板とサンドイッチにされたメイン基板上に直接実装されている。
キー配列的には、X1系で苦情の多かったカーソルキーの配置が改善され、ASK68Kという独自のFEPに対応してSPACEキー両脇にXF1〜5、それに「ひらがな」と「全角」が、カーソルキー上部に「かな」・「ローマ字」・「コード入力」が、そしてテンキー上部には「記号入力」・「登録」が追加されている。
更に、カーソルキー下部に「OPT.1(Option 1)」と「OPT.2(Option 2)」キー(PC/AT互換機のキーで言えばALTに相当。つまり68のキーボードでは、同じキーでSHIFT動作を含む本来の割り当て以外に2種類のコードを入力可能である)も追加されているので、一見相当煩雑な印象がある。
実際、筆者の知る限りこれ以上沢山特殊キーにLEDを内蔵したキーボードは無い訳で、それを逆手にとって音楽に合わせてそれらのLEDを明滅する様にした「COTTON」の様なゲームもあったりした。
これは恐らくPC-9800シリーズのキーボードを念頭に置いて独自の機能拡張を加えたレイアウトであると考えられるが、折角の新規設計にも関わらず「Caps」キーが何故かテンキー上部に配されるという言語道断の配置である為にひどく使い辛く、これを嫌って“KeyWitch.X”(鎌田 誠 氏作)という「ひらがな」キーと「Caps」キーを入れ替えるフリーソフトが普及した。
この配列問題はX68000Compact用に開発されたテンキー無しキーボードで漸く改善されたが、これはこれで別の問題をはらんでおり、つくづくシャープのXシリーズはキーボードのキー配列に恵まれなかったと思う。
この機種のキートップは黒と白の2色の樹脂による層状成型で文字表記がなされており、発売当時の関係者筋の情報では、「金型代に数億円かかった」由であった。
ちなみにMacに倣ったのかこのキーボードにはマウス端子が搭載されているが、これはMacのそれとは異なり汎用性が無く本体のそれとは独立したマウスポート(但しソフトウェア的には特に区別しない限りは同じものとして取り扱われる)であって、逆にその事を利用して本体のマウス端子とこちらの端子との両方にマウスを接続し、それらを並列動作させるドライバを作成する向きもあったりした。
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