PC-9821As/U2
CPU:
i486DX 33MHz → Am486DX2 66MHz
RAM:
3.6MB(内蔵)+ 4(専用ボード)+ 2(PC-9801-61 SIMM)* 4 − 1 = 14.6MB
HDD:
340MB (IDE) + 730MB(SCSI-2)
FDD:
3.5inch 3 Mode * 2
拡張機器:
(グラフィック・アクセラレータ)
(サウンドボード)
Sound BLASTER 16/98 / Creative
(SCSIボード)
壊したBXの替わりに1996年1月7日に日本橋の祖父地図にて\36,000(税抜)で購入。
この時期はWindows 95発売に伴う端境期で、これまで高値安定だったMate Aの中古価格が一瞬下落していた。
購入理由は「86音源内蔵」、「9821固有画面モード搭載」、「拡張スロット数が多く、しかもローカルバスまである」、「ベース33MHzなので改造の必要がない」、そして「BXのRAMボードやSIMMがそのまま流用可能」の5点だった。
中でも86音源と9821固有画面モード(注1)の実装は有り難い物だった。
何しろBXではこれのせいで動作しなかったゲームが全部動いたのだから嬉しくない筈が無い。
特に26互換音源ではショボショボだったゲームのBGMがFM音源の発音数倍増(3→6)とステレオ化、それにPCMの追加で一気に豪勢になったのは強烈だった。
そもそも最初からベース33MHz駆動で設計されたマシンである事がどれ程Windowsの動作に大きな意味を持つ物であるかはCバスのグラフィックボードでも明らかだったし、ここでCバスグラフィックボードの限界も見えてしまったから、この時期にして拡張スロット4本(注2)のAsの仕様は必須の物に思われた。
グラフィックの速度問題はこの直前に発売されたWindows 95をBXにインストールした時にも何となく感じていた事なのだが、この時はCPU回りも激しく遅かったのでどちらがボトルネックなのかが判断出来ずにいた。
ともあれ、ここまでは感動や喜びの連続だった。
実際時間をかけて良く考えられ、きっちりお金をかけて造り込まれた筐体設計(注3)や、所詮は廉価版でしかないBXのそれとは比較にならないキーボードのタッチを含め、Asは非常に満足度の高い機種だったと思う。
だが残り一つの特徴、これこそがこの機体の価値を半減させた。
購入時には利点と思われたメモリ仕様が実は罠だったのだ。
この時期、今は亡き「Super ASCII」誌の付録CD-ROMにWindows NT 3.51の体験版が収録された事があった。
当然、興味津々でこれをインストールしてみた訳なのだが、ここで私は愕然とさせられた。
14.6MBじゃ全然足りねぇ(泣)。
これが決定打だった。
DOSでアダルトゲームをやるだけならAsの上限である14.6MBというのは非常に広大な空間(笑)なのだが、Windows NT 3.51にとってはそれはシステムをロードする為の空間以上の物ではなかった。
今はまだこの程度で済んでいるが、近い将来Windows 95の系統もそうなって行くに違いない。そう判断した私は決断を迫られた。
メルコのアッパー14.6MBを実現するCPUアクセラレータを買うべきか、それともいっそ他の機種に乗り換えるべきか。
それは非常に難しい選択だった。
この時の結論は「Asを商品価値のある内に後輩にでも売り払ってAs2を買う」となって実際にもそうしたが、ここで悩んで踏み止まった人というのも結構多かったのではなかろうかと思う。
今にして思えば、このAsを買って早々に売り飛ばしたからこそ、BXの引継部品であるそれなりに高価な専用メモリボード(注4)もPC-9801-61 2MB 専用SIMMとセットで処分出来た訳で、どのみちこのマシンは一度は買う必要があったという事になる。
ちなみにこのマシンはAm48DX2 66MHzを搭載した状態で後輩のK.Y.君に転売されて1年を過ごした後、彼へのAs2の転売時にもう一つ下の代の後輩であるA.S.君に転売され、メルコ製の“ハイパーメモリ(注5)”を搭載して本来のメモリ上限を超えるRAMを挿したり、委託品で見付けて買った中古のPower Window 928II LBやLANボードを入れたりしながら1999年10月末まで使われていたが、突如98固有グラフィック回路(PEGC)部分に異常が発生して使用不能となり、またもやK.Y.君宅から発生したAs2と交代で廃棄処分と相成った。
故障の原因は不明だが、修理コストで中古のAs2が買えるご時世であれば、この判断が正解だろう。
結局の所、拡張を繰り返しつつとは言え6年半に渡って無故障で稼働し続けたという事になる。その意味ではこれは決して高い買い物ではなかった。
(注1):PEGC。公式にはNECはこの名を使用していないが、Windows 3.1/9x用のデバイスドライバのファイル名等で用いられていた為、便宜上この名で呼ばれている。なお、初代Mate AではPEGCの他に従来のEGCも搭載されており、モード切替で使用デバイスそのものを物理的に切り替える実装になっている。それ故、正規のEGCがあるお陰でMate Aでもこれら初代だけはグラフィックについてPC-9801FA以前と同等の互換性を維持している由である。
(注2):その内下側の2本はローカルバス兼用で、PC-H98シリーズでNESAバス用に用いられていたのと全く同じEバスコネクタがCバスコネクタと並べて実装されている。それ故、NESAバス対応ボードをローカルバスに挿し込まない様、背面等にくどい位注意書きが記載されている。
(注3):こと筐体の造り込みに関しては、頂点を極めたPC-9801FAの後継機だけにその残り香が強く、CPUボードとメモリボードの挿し込み方向以外はほぼそのまま流用されていると言って良い。
(注4):初代Mate Aと初代FELLOWは専用増設メモリボードが共通であるので、使い回しが可能である。ちなみに、このタイプのボードはメモリ実装量の上限に関わる制約さえ配慮すればPC-9801FAでも利用可能(厳密にはFA用を後発2シリーズが流用した)となっている。
(注5):エンハンスド・ライトバックキャッシュ版のAm486DX4を実装していて高速化が図れるだけではなく、ノートPC用SO-DIMMを基板上のメモリソケットに追加する事でオーバー16MB空間へのメモリ増設(但し、対応OS上で専用メモリマネージャを用いないと認識されない)が可能となっていた。
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