PC-H98 model U105-300


CPU:

Intel 486DX2 66MHz → AMD-X5-133ADZ (Am5x86-P75) 133MHz

RAM:

8 + 4 = 12MB

HDD:

2GB(F-SCSI)

FDD:

3.5inch 2 Mode * 2 → 3.5inch 2 Mode * 2 + 5.25inch 2 Mode * 1

 

拡張機器:

(グラフィック・アクセラレータ)

Power Winodw 968 / Canopus

(サウンドボード)

PC-9801-86 / NEC + MPU-PC98II / Roland → PC-9801-86 / NEC + S-MPU/PC / Roland

(LANボード)

LGY-98J-T / MELCO


 筆者にとっては通算13台目の98。

 これはかつてPC-9800シリーズの主力がPC-9801シリーズだった時代に、独自の32bit汎用バス(NESAバス)を搭載するハイエンドマシンとして君臨したHyper 98ことPC-H98シリーズの最終型で、Video Chipsの薙澤君から拡張ボードその他一式と共に譲り受けた機体である。

 NESAと言っても今や世間では完全に忘却の彼方だと思うので説明しておくと、EISA(注1)の98版で、NECがEISA制定に参画していた事から論理的な仕様はこれに酷似しているが、物理的にはEバスと呼ばれる独自規格の専用バス(注2)を使用する様になっていて、NESA-FO(NESA-Flexible Option)と呼ばれる半自動セットアップ/リソース取得機構が導入されており、NESAバス対応の拡張ボード類や内蔵専用ボードの場合は取り付け・取り外しをASP(Auto Setup Program)と呼ばれるファームウェアが起動時にその実装/接続を自動検出し、当該ボードが新規に取り付けられた場合には各ボード上に用意されたセットアップ情報を参照してリソースを自動的に割り当て、取り外された場合にはそのボードに割り当てられていたリソースを開放する(注3)という後のPnPの祖型となった先進的な機構を備えていた。

 もっともこのNESA-FO、ISAのPnP対応と同様に非対応のCバスボード実装時にはマシン付属のリファレンスディスクと呼ばれる専用FDを用いる正確かつ厳密なリソース予約が必要(注4)で、通常の98に比して恐ろしく手間がかかったから、当時のPC市場では甚だ不評であった。

 それはともかくこの機体、売れ筋のPC-9801がFAの頃の製品で同機を含むFシリーズに搭載されたファイルスロットがこちらにも搭載されており、またFA譲りの非常に手の込んだ複雑かつ精緻な造りの筐体が採用されるなど、PC-H98シリーズの最後を飾るのに相応しい設計であった。

 なお、この機種を含むH98型番の本体はRGB出力端子として専用のコネクタ(注5)を採用しているため、この端子に対応する純正専用CRTを用意するか、さもなくば変換ケーブルないしは変換アダプタ+マルチシンクディスプレイでの利用が稼働にあたっての必須条件となっている。

 ちなみにこの機種、ASPがNESA-FOで設定した情報はバッテリバックアップされたSRAMに保存されているのだが、その電源はNi-Cdなどの二次電池ではなく三洋のCR12600SEという円筒形リチウム電池(一次電池)であるため、とりあえず電池からの電解液流出による基板の腐食(注6)という問題は発生しにくい設計となっている。


 (注1):Extended Industry Standard Architectureの略。IBMのMCAに対抗して誕生した、ISAとのハード/ソフト双方についての上位互換性を備えた32bit汎用バスで、NECの米国法人がエプソンなど当時の有力PC/AT互換機メーカー各社と共に規格制定に関わっていた。規格としてはこちらも既に歴史的使命を終え、消滅している。

 (注2):拡張スロットコネクタも専用品で、Cバスが基板直接のカードエッジ端子であるのに対し、基板上にプラ成型された特殊なアンフェノールコネクタを乗せて本体側Cバススロットの間の空きスペースに新設された専用コネクタと結合するようになっていた。この専用コネクタのピンアサインは、ISA上位互換故に特に給電系がひどい配置になっていたEISAとは異なり各データラインごとにGNDなどががっちりガードする見事な仕様で、その安定度は抜群であった。なお、当然ながらNESA対応ボードにはCバススロット用のカードエッジコネクタは用意されておらず、この部分は切り落とされている。余談になるが、このEバスコネクタは後にPC-9821Ae/As/Apに始まる一連のMate A(A Mateとも単に98Mateとも呼ばれるが、便宜上以後の各シリーズの呼称と揃えてこう表記しておく)と呼ばれる機種群の486ローカルバス(MLバス)用スロットコネクタとして流用されている。但し、当然の事として相互の電気的な互換性は一切無く、間違って挿すとPCが燃える危険性さえあるので注意されたい。

 (注3):挿してある増設メモリボード上のSIMMを抜いても次回起動時にその事が認識されメッセージ表示される(増設時には特に何も言われない)程のインテリジェントぶりである。

 (注4):それまでのPC-9800シリーズでは、拡張ボードはEMSメモリボードを複数枚挿すとかいった特殊なケースを除くと「挿せば動く」のが普通であった為、Cバス拡張ボードを抜き挿しする度に厳密なリソース指定を強要されるNESAマシンの仕様ははなはだ不評だった。なお、この設定機能の関係でIBMのMCAマシンや各社のEISAマシンと同様、これらNESAマシンでもリファレンスディスクが絶対無くしてはならない最重要アイテムである事は言うまでもない。ただ、1つ強調しておかねばならないのだが、NESAデバイスの割り込み設定をレベルトリガではなくエッジトリガに設定(つまりIRQ共有を禁止)してCバスデバイスのリソース設定を完全に正しく行った場合のPC-H98シリーズのノーマルモード動作はPC-9801シリーズに対してほぼ完全互換(厳密にはPC-98型番のハイレゾ機と同様グラフィック回りのファンクションの本当にごく一部が非互換だが、その大半は大昔のデジタルRGB出力機能等、そもそもハードがサポートしていない部分(最初期のソフトでは決め打ちでこの辺の機能をコールしている場合があり、そこで固まることがある)に限られている。また、後の9821にも継承されたカラーパレット読み出しや低速I/Oポートアクセス時の自動ウェイト挿入(もっとも、これは高速なNESAバスに低速デバイスを直結できない事から必然的に生じた仕様であるが)といった機能が実装されており、実用上はむしろ上位互換である)であり、後のPC-9821シリーズよりは余程ノーマルモード動作時のソフトウェア互換性が高く(動かないのはV30必須のソフトかそれ以前のものの一部位だろう)、N88-BASIC(86)の搭載を含め、その実現にNECが非常な努力を行っていた事が良く分かる。

 (注5):SUNのワークステーションなどでおなじみの13W3に似ているがこれとも配列が異なる専用品で、RGBそれぞれの同軸端子と通常のピン端子(当時のワークステーションの流行を意識したのか、キーボードケーブルの信号も内包している)を組み合わせた特殊な配列となっており、更にモニタも長残光の専用機種が前提であった関係で特殊な同期周波数となっており、専用の変換ケーブルか変換アダプタ(PC-H98-U03マルチシンクアダプタ)が無い限り、一般的なRGBモニタは使用出来ない。

 (注6):21世紀に入ってから深刻化しつつある、98の業病の一つ。PC-9801nやPC-9801Tなど、基板上にバッテリパックを直接実装するなどして内部に作り付けでNi-Cd電池を搭載している機種において経年劣化により電池から電解液が流出、基板のパターンやリード線などを腐食させて機能不全に追いやる。一旦発生すると運良く早期に発見したケース以外では、事実上健全な基板への交換以外に対処策がないため、予防策として早い内に電池交換を行う必要がある。


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