eXtremeRAID 1100 (DAC1164P) / Mylex


インターフェイス:Ultra 2 Wide SCSI (68pin LVD 80MB/s) * 3

転送モード:Bus Master

Bus:PCI Rev.2.1 (64bit 33MHz 3.3/5V)

SCSIコントローラ:53C895 / SYMBIOS LOGIC * 3

対応機種:PC/AT互換機

動作確認マザーボード:SUPER PIIIDME


 1998年にデビューした、Mylexの64bit PCIバス対応ハードウェアRAIDカード。

 IBM・NEC・日立・富士通と大手サーバ機メーカー各社に挙って採用された当時を代表するRAIDカードの1つで、「Ultra 2 Wide SCSIでは最速」との評価も聞かれた逸品である。

 基板上には“DAC1164P”という型番が見られ、元々はDAC960系の後継としてStrongArm搭載と64bit PCIバス対応をアッピールする意味でその様に命名されていたらしく、世間的にはOEM先を中心にこちらの名で呼ばれる事が多い。

 上記の通り、このカードはi960系チップの搭載が定番であった当時のハードウェアRAIDカードには珍しく、CPUとしてDECのStrongARM(SA-110S 233MHz)を採用しており、故にそのチップセット(Footブリッジと呼ばれている)としてIntelの21285-ABを、PCI-PCIブリッジとしてDECの21154-ABをそれぞれ搭載している。

 この内21285-ABはIntel製だが、これはDECの半導体部門がIntelへ売却された事に伴うもので、内容的にはDEC時代の同型番のものと何ら変わりは無い。

 また、RAID 5動作時の死命を制する最重要デバイスであるXORジェネレータとしてMYLEX自社製の189232-01 ORBITが搭載され、NVRAMモジュールはDALLASのDS1644L-120が搭載されている。

 これらのチップ群に制御されるSCSIコントローラとしては、この時期の定番であったSYMBIOS(LSI LOGIC)の53C895が3基実装されており、その性能に不足は無い。

 ちなみにこの製品は搭載各チップの製造元が買収されてパッケージ替えを行った時期に製造されていた為、53C895がLSI LOGICパッケージで21154がDECパッケージの物も存在した事が確認されている他、53C895がLSI LOGICパッケージでしかもDECパッケージの各チップが全てIntelパッケージに置き換わった製品(StrongArm(SA-110S 233MHz)→i21284EBと21154-AB→i21154ACで置換。ちなみに2000年後半製造)も存在する。

 なお、筆者が入手した製品は富士通のGrandPower向けOEM品(GP5-144)で、特殊なコネクタで接続されるバッテリバックアップモジュール(Energy SalesのES 757Bという3.6V 650mAh Ni-Cdバッテリが搭載されている)に富士通製81F64842C-102LFNというPC100 CL2 128Mbit SDRAMメモリチップを8枚(つまり物理的には合計128MB。但し内部処理にも当然メモリが要るので、それを差し引いてディスクキャッシュには32MBが割り当てられる)実装し、外部68ピン高密度コネクタ(VHDCI)は3chフル実装だが内部68ピンSCSIコネクタは何故か1ch省略した構成になっていた。

 StrongArmをCPUとするコンピュータが丸々1セット搭載されているのだからある意味当然の成り行きだが、このカードの場合基板をフルサイズとし、メモリをドーターボードに追い出してさえ実装面積が足りなかったらしく、各SCSIコントローラの為のターミネータチップ(DS2118MB / DALLAS)は3チャネル分9枚の内部品面に搭載出来た1枚を除く8枚が基板裏側に並べられている。

 余談だが、このカードでメモリチップがバッテリパックと共にドーターボード上に実装されているのは、メモリ回路を他から電気的に分離してバッテリパックの給電ロスを減らす事でメモリ維持時間の延伸を図る上では非常に合理的な設計で、流石は老舗のMylexと感心させられたことであった。

 もっとも、この構成ではメモリが専用品となる為どうしてもコスト増が否めず、そのせいか後継のeXterneRAID 2000/3000では他社製品同様に汎用のDIMM搭載となってしまっている。

 さて、このカードの性能だが、筆者は例によってHDDを揃えられなかったのでRAID 5については書く事が無いのだが、JBOD扱いで1台のHDD(ST318406LW Cheetah 36ES。10,000rpm級のUltra 160 SCSI対応モデル)を接続してベンチマークを取ってみた所、53C895を単独で搭載したカードに比べるとやや落ちるがかなりの性能を記録しており、このカードの持つ潜在能力の高さが伺えた。

 また、RAID 0でディスクアレイを構成した場合の性能は相当な物で、キャッシュに32MBのメモリを奢ってある事もあってUltra 2 Wide SCSI接続とは思えない程のパフォーマンスを発揮した。

 筆者自身、この種のRAIDカードは不案内なので偉そうな事が書けないのだが、世代の古いDAC960PLやNetRAID (D4943A) とは格というか次元が違う性能だというのが正直な感想で、やはりこの種の製品でも搭載CPUの処理能力がモノを言うのだ、と痛感した次第である。

 ちなみに、MylexのハードウェアRAIDカードとしては次のeXtermeRAID 2000/3000で事実上打ち止めとなったが、この2000と3000は1100の53C895をそれぞれ4ch分のUltra 160 SCSIあるいはFiber Channelに対応するコントローラに交換し、汎用DIMMでメモリ増設するように 変更した物で、CPU等の基幹部分の設計は殆ど1100のままとなっている。

 つまり、この1100のアーキテクチャはUltra 160 SCSIの時代になっても通用するだけの内容を備えていたという事であり、冒頭に記した「Ultra 2 Wide SCSIでは最速」との評もあながち嘘ではないという事であろう。

 最後に、2002年第3四半期にMylexのRAIDカード事業をIBMから買収したLSI Logicは“LSI Logic Legacy RAID adapters are considered to be at the end of their life cycle.”とアナウンスしており、一応ドライバやファームウェア、それに各種ユーティリティは現在も同社サイトで滞りなく提供され続けているが、今後のサポート(特に消耗品であるNi-Cdバッテリの供給)はOEM販売していた各社次第という事になりそうである。


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