X68030内蔵SCSIコントローラ / SHARP


インターフェイス:SCSI-1 (50pin 5MB/s)

転送モード:DMA

Bus:X68000 Original Bus (16bit 10MHz)

SCSIコントローラ:MB89352 / 富士通

実装機種:X68030


 私にとって初めてのSCSIコントローラ。

 電気的・ハード的な規格としては時期的な事情もあってもろにSCSI-1準拠だが、ソフトウェア的にはCCS(Common Command Set:共通コマンドセット。ソフトウェアレベルでの仕様統一を図る目的で制定されたもので、その殆どが後のSCSI-2規格のソフトウェア仕様に継承された)の制定でHDDだけではなく、CD-ROM / MOドライブ等に対するIDの割り振りが行われた後の製品であり、シャープ側が積極的にこの仕様に準拠する様にIOCS(Input Output Control System:SHARPではBIOSの事をこう呼んだ)を書いたお陰でMO(HDフォーマット)からのブートも可能となるなど、非常に素直な挙動を示すコントローラである。

 もっとも、MOドライブは5.25 inch版が純正で用意された(CZ-6MO1:シャープオリジナルのドライブ(JY-700)内蔵で、元来自社のWS用ドライブの転用品であった様だ)が、CD-ROMドライブは何故か最後まで用意されず、結局純正ドライバも用意されずに終わってしまったから、MOの件を別にすればSCSI-1完全準拠でも問題なかった訳ではあるのだが。

 ちなみに、従来機種とのソフトウェア的互換性維持の為にわざわざ専用チップを起こしてまでしてX68000のバスと互換の信号波形を「作り」、その下に各デバイスを置いているX68030用である為にこのコントローラも10MHz 16bit DMA転送で動作する様になっていて、その転送速度は今日的な目で見るといかにも低速である。

 余談になるが、ここで用いられているDMA (HD63450) こそはX680x0の特徴と欠点の大半との関わりを持つ重要なデバイスである。

 具体的には、これあるが故に実装可能な物理メモリ空間が16MB(VRAMを始めとするメモリマップドI/O空間込み)に制約され、これの公式動作クロック上限が12.5MHzであった事でX68030の正規動作クロック周波数が25MHzとならざるを得ず、逆にこれが強力であったが故にPCM8の様なトリッキーなプログラムが実現を見たのである。

 要するに功罪相半ばする訳だが、後々のシリーズの展開の事を考えればこれは積むべきではなかったのではあるまいか、と今にして思う。

 このHD63450は型番からも判る通り本来のm680x0ファミリーには存在しないデバイスで、日立製作所が680x0系のセカンドソースであった当時にその必要を感じて独自に開発した、曰く付きのチップであった。

 もっとも、所謂DMACとして見るとこれは非常に強力なチップであり、非力なmc68000(10MHz駆動)を搭載せざるを得なかったX68000初代開発の時点では、コストやトータルバランスを考えるとこれ無しで済ませるのが困難であったのも確かなのであるが・・・。

 なお、”HSCSI”と言ってこのコントローラを無理矢理DMAではなくMPUで転送、つまり世間的にはFIFO転送と呼ばれている方式で動作させてしまう常駐ソフトが存在するのだが、ハードを直に叩く行儀の悪いソフトが相手ではコケてしまう危険があるし、そもそも68030の25MHz駆動ではMPUパワーの不足からかなり動作がシビアだった。

 要するに、無理はせずに本来想定された使い方で使うのが正解、という事なのだろう。


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