Audio Cyclone SP410D / MINTON
接続バス:PCI Bus (32bit 33MHz 5V)
サウンドコントローラ:YMF-744B-V / YAMAHA
Codec:STAC9708T / SigmaTel
対応機種:PC/AT互換機
動作確認マザーボード:S2460 Tiger MP,S2466N-4M Tiger MPX
今ではすっかりデジカメメーカーと化してしまったMINTONから2000年に発売された4番目のYMF-744搭載カード。
前3作(SP401F・SP402D/F)が共にLabway製Xwave 5000/6000シリーズのOEMであったのに対して、どうやらこれは自社設計だったらしく、雰囲気がまるで異なっていた。
ブラケット部のレイアウトは上からマイク入力・ライン入力・フロント(ライン)出力・リア(ライン)出力・Optical SPDIF出力・JOYSTICK/MIDI端子の順に、そして内部はCD入力(Sound BLASTER互換)・CD入力(ATAPI)・TAD I/O・AUX入力・Video入力・SPDIF I/OそれにPC/PCI、と内外とも単体のカードに可能な限りのコネクタが実装されており、アナログ/デジタル双方での使い勝手を本当に良く考えられたカードである事が判る。
実際、ライン出力4chとOptical SPDIF出力が共存する1枚もののYMF-744搭載カード、それも内部にSPDIF I/Oコネクタを実装した製品はこれの他には殆ど存在しない(注1)ので、その存在価値は高い。
だが、このカードで真に評価すべきはそういった搭載コネクタの種類や数ではなく、基板設計そのものの出来の良さで、アナログ信号パターンの自由曲線処理(注2)、GNDパターンでガードする事による徹底した信号ラインのノイズブロック、それにGNDパターン面そのものの意図的なパターン分割による迷走電流の逆流阻止など、基板デザインで出来る工夫を大技小技入り乱れて極限まで凝らし、しかもフィルタチップの厳格な実装やラインアンプの作り込みによって、同じAC'97 Codecチップ搭載でありながらLabway製Xwave6000系カード群とは格段に違うアナログ音質を実現している。
また、この辺の基板設計の良さが影響したのか、このカードのOptical SPDIF出力は高精度を要求されるが故に難物(同じMINTONブランドのYMF-744カードであるSP402Dではロックしなかった)のEsoteric D-2の入力につないでもきちんと同期しており、私の知る限りでは最良のYMF-744搭載サウンドカードである。
察するに余程オーディオに造詣の深いデザイナーが設計に関わったのであろう。
もっとも、その凝った設計故かこの手のカードとしては比較的高価な製品であったのも事実で、このカードはSPDIF入出力用ブラケット付きのHOONTECH製カード程ではなかったにせよ、Labway製Xwave6000系の大半(注3)よりは高い、という価格帯で取り引きされた。
YMF-7x4というとどうしても最大派閥であったLabway系の製品を思い浮かべる向きも多かろうが、そんな方にこそこのカードの音を聴いてみて欲しいと思う。
無論、以後の高音質を謳ったカードやオーディオカードなどと比べられるレベルのものではなく、あくまでYMF-7x4搭載サウンドカードの枠内に留まるが、YMF-744でもコストをかけてきっちり作り込めばここまで音質の水準を引き上げる事が出来る、という事実には教えられるものが多々あると思う。
なお、MINTON製としては次にAudio Cyclone SP420Dという製品が出荷されているが、これはLabwayからのOEM品に逆戻りした(Xwave 6000 N6B相当)ため、このSP410Dの系列に属するカードは結局このモデル一つ(注4)に終わってしまっている。
(注1):例えば、AOpenのAW744SやAW744Pro等は外部はこれと同等だが内部SPDIF Outを持たない。
(注2):通常なら45°ずつ2回曲げて90°向きを変える部分などに多用されている。基板上において、電子は光速には達しないものの充分に高速で伝達されるから、エネルギー損失やノイズを考えれば自由曲線でパターンを描いた方が良いのは自明である。ちなみに後年のHDMIインターフェイスでは、自由曲線でパターンを描かず手を抜いて45°ずつ2回曲げて90°向きを変えていたせいで高周波の信号がきちんと伝達されない、という深刻な事態が発生したケースがあった。
(注3):例外は拡張出力をサポートするL00ドーターボード付きのグループである。
(注4):厳密にはRev.AとRev.Bの2つのバリエーションが存在するが。
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