京阪電鉄2200系


 2200系改修工事施工済車7連による準急樟葉行。

 この2200系は先行する2000系の後期モデルと共通設計の車体を持ち、折から設計・生産が可能となりつつあった大出力電動機の採用でMT比1:1を実現した経済性重視の急行車である。

 これは、ラッシュ時に線路容量が飽和してダイヤグラムが“寝て”しまう事と多数の列車が走行する事で発生する架線電圧の降下を極力防ぐ為に開発され、磁界増幅を用いる分巻界磁制御で高加減速と電力回生制動を実現した2000系“スーパーカー”において、そのメリットを最大限に生かす為に採った低出力電動機による全電動車方式が製造・補修コスト等の点で問題を抱えてしまった事に対する反省を踏まえてのデザインであり、ラッシュ時の運行を急行運転に限定して(ラッシュ時以外ならば当系列が普通運用に充当されても問題は無い)加速性能に対する要求レベルを落とす事で一気に低廉化を実現している。

 つまり、2000系が開発当初の国鉄101系電車の様な存在であったのに対して、これは101系の車体+113系の足回りといった組み合わせ(103系では無い所がミソだ)の存在と言うべきで、関西私鉄には阪神の青胴車(“ジェットカー”の名で知られる5000番台の全電動車方式高加減速通勤車シリーズ)+赤胴車(車体仕様は大差ないが経済性重視でMT比1:1に設定された急行車グループ)という類例が存在する。

 余談になるが、2000系製造時に大出力電動機によるMT比1:1の編成が考慮されず当時の標準軌間向けでは異例の低出力となる75kw級電動機によるオールM編成となったのは、その時点で大出力電動機が設計出来なかった為ではなく(2000系登場の1959年は大出力電動機の搭載による新性能通勤電車のMT編成化が一般化し始めた年で、既に阪神電鉄5000系や国鉄101系によって小容量電動機によるオールM編成のデメリットが明らかになった後であったから、創業以来TDKとの関係が密接な京阪の技術陣がそういった情報を全く知らなかったとは考え難い)、粘着特性が良く高加減速に適し、しかもブレーキ力を回生制動で架線に戻せる為にブレーキシューの損耗が少なく変電所負担を軽くできる、というオールM方式のメリットが設計時点では切実に求められていた為である。

 この種のハイ・ローミックスはダイヤが錯綜していて各種列車種別の緩急結合を重視する必要のある阪神電鉄では戦前期から見られたコンセプトであるが、京阪においては沿線の宅地化の急進に複々線化が追いつかなかった1960年代前半に有効利用されたものの、結局の所最混雑区間である大阪方の複々線化や急行停車駅のホーム延伸がある程度完成してラッシュ時の線路容量に余裕が生じた段階で実質的に不要となったらしく、折角の高加減速車である2000系も国鉄101系が辿った様に中間に電動機を持たないトレーラーを挿入されて限定運用を解除され、この2200系と共通の運用に入る様になってしまった。

 なお、当系列が電力回生制動ではなく発電制動に留められたのは、コスト面ばかりではなく電力回生制動を搭載した車を一定数以上製造して運行した場合、回生ブレーキによって供給される電力で架線電圧が定格を超えてしまい、回生ブレーキが失効する(=発電電圧を架線電圧が上回る)危険性があった(2000系の電力回生による回生率は20%程度であったとされ、普通を全列車これに置き換えると確実に変電所に過負荷がかかってしまう)事も理由と考えられ、只でさえ変電所に過剰な負担をかけざるを得なかった600V時代の京阪線の電力事情を考慮すればそれは妥当な判断であった。


インデックス

一応、当ページの内容の無断転載等を禁止します