HALO
ALCA-1 / ZaZa/ALFA
1990/1/25発売
1.SUSPECT
2.HOLY STAR
3.EARTH
4.IN RAIN
5.TIME & GRACE, TIDE & GROUND
6.ILLIAN
7.NEVER ENDING STORY
8.BIG MONDAY
9.AMENITY
10.AMANA
昔、PINKという凄いバンドがあった。
どの位凄かったかというと、参加メンバーの大半が後年それぞれの道で一流として大成した、って位に凄いバンドだったのだけど、そういうバンドの常として、メンバーの方向性が食い違ってあっさり解散してしまった。
で、その中で中核を担っていたヴォーカルの福岡ユタカとドラムスの矢壁アツノブの2人がPINK解散後に、その方向性を先鋭化させる形で結成したのが、このHALOというユニットだ。
このユニットは本当の意味での録音専門ユニット(というか、遂に一回もライブをせずに解散したらしい)で、もう完璧という他は無い程に多重録音を駆使した、素晴らしく分厚くて緻密な構成と、流麗かつシャープな演奏がウリだった。
何というか、基本的に技量が余人の追従を許さない超絶レベルに到達してしまった(特にヴォーカル)ユニットなのだけど、それだけに隙が無さ過ぎて(爆)、発売当時は一般の受けが悪かった感がある。
まぁ、写真で見る限り、正直言って福岡ユタカ氏はハンサムではない(失礼)ので、そういう方面での需要(苦笑)を求める訳には行かなかったのだろうし、全体としての構成を優先して、大向こうの受けを狙う様なキャッチーなメロディを持ったシングルカット可能曲は入っていなかったりしたから、それはそれでやむを得ない事なのだが、それでも、これだけの凄みをもったアルバムが、そしてユニットが大して騒がれるでもなく淡々と消えて行った事には、個人的に納得が行かない物があった。
ヘヴィなリズム主体の旋律の中から淡々と立ち上がる、それでいて恐ろしく存在感のある歌声に打ちのめされる「SUSPECT」、
要所要所で鮮烈なイメージを喚起する清水一登のクラリネットが印象的な「HOLY STAR」、
ドライブ感というのか、スピード感というのか、ドラマーとしての矢壁アツノブの資質と、不世出のヴォーカリストとしての福岡ユタカの圧倒的な才能が炸裂する「EARTH」、
BANANAのスティールドラムがリズムを支配する、強烈な「IN RAIN」、
一種の情景詩なのだが、何とも言い難い感情がひたひたと押し寄せてくる「TIME & GRACE, TIDE & GROUND」、
軽やかなリズムに乗せて不思議な感覚の言葉が飄々と投げ出される、コーラスのハーモニーが美しい「ILLIAN」、
リズミカルで、緩急の付いた演奏が響き渡る「NEVER ENDING STORY」、
一見簡単そうな、それでいてちょっと真似の出来ない様な、多彩な表情を見せるヴォーカルが魅力的な「BIG MONDAY」、
疾走する力強い言葉、小刻みに揺らぎ続けるリズムセクション、そういった複雑且つ精緻な構成が生み出すある種のビジョンを要所で締める窪田晴男のギター、と見所満載の「AMENITY」、
そして最後に音節の切り方一つでまるで異国の言葉の様に響くコーラスと、滅茶苦茶格好良いMECKENのベースが炸裂する「AMANA」。
以上の通り、ゲストミュージシャンの個性的演奏も印象的だが、結局の所これは福岡ユタカの独演会(苦笑)みたいなアルバムな訳で、そういう意味では非常に個人的であるが故に万人受けは期待出来ない面がある。
実際、基調に一貫して流れるテーマ、あるいは喚起されるイメージとでも言うべき物を実現する為にのみ存在するかの様な緻密な構成を採るこのアルバムが、ある意味で売りにくい事は確かだろう。
理性的にはその事を理解しているつもりなのだが、それでも何か悔しい(苦笑)。
とりあえずこの1枚目はそれなりに売れたらしく、2枚目(TIDE)がリリースされた。
だが、結局それで打ち止め、ユニット自体も解散と相成ってしまった。
まぁ、ある意味煮詰まって、行き詰まってしまったのだろう、というのは何となく判るのだが・・・。
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