最終更新:2024/1/8
X68000の拡張IOスロットの基板に直接はんだ付けして取り付ける拡張メモリ(8M)です。
X68000初代,ACE,EXPERT,SUPER,PROは2M以上のメモリを増設するには拡張スロットに拡張メモリボードを取り付ける必要があります。 ところがPROを除くタワー型には拡張スロットが2つしかなく、定番のSCSIボードやMIDIボードといった拡張ボードを搭載しようとすると、必然的にどれかをあきらめる、もしくは必要に応じて付け替えるといった事が必要になります。 スロット消費を抑えるために拡張ボードの中にはメモリ増設を同時にできるものもあります。しかしながらオークションでもそのような拡張ボードはほとんど流通しておらず入手性はよくありません。
X68000 ACEを入手して2Mの増設メモリとSCSIボードを取り付けるとMIDIボードが使えないという問題に直面して何とかならないかなと拡張スロットを見ていたら、その奥底にコネクタのあるIOボードが見えました。 当然そのIOボードの基板には拡張バスの全信号のはんだ付けがあります。そこで閃きましたメモリが実装された互換IOボード、もしくは超小型の拡張メモリボードをIOボードに直接はんだ付けして取り付けられないかと。
下の写真はIOボードです。スロット0,1のカードエッジコネクタの脚がはんだ付けされています。その下は本体との接続用コネクタのはんだ付けです。赤線で囲んだ2箇所を利用することでメモリボードの基板面積を確保しながら直接はんだ付けは可能と判断しました。
こうやって寄生します。
拡張メモリの実現方法にはいくつか方式がありますが素人でもシンプルに設計できるパラレル型の大容量SRAMを採用しました。 その他にレベル変換IC、バス制御IC(GreenPAKで実装)、定電圧レギュレータ等を利用しました。 十分な基板面積を確保できたので2層基板で設計しました(といいながらもかなり試行錯誤したけど)。
拡張メモリの基板はTSSOPの部品ばかりではんだ付けが大変ですが手でも制作できるレベルです。 基板の裏にカプトンテープを貼って絶縁して完成。その後GreenPAKのファームウェアを書き込みます。
IOボードに基板を重ね合わせるために赤四角で囲ったランド(足)を利用する一方で、 その間の領域のランドは全てニッパーで削除する必要があります。
赤四角内のランドも曲がっているものがあるので丁寧に引き起こします。 削除するランドはニッパーでぎりぎりまで切り詰めます。
メモリボードの裏にカプトンテープを貼っていますし、IOボードのランドは出来るだけ切り詰めてますから、 そのまま重ねてはんだ付けをしていきます。もちろんはんだ付けするスロットのランドはスルーホールよりも 少し下に見えるか見えないかの位置です。
正面から見た図
横から見た図
IOボードを組み立てて本体に戻します。シールド(IOスロットを覆う銀色のもの)を取り付けることも可能です。
本体2Mに8Mを増設することで合計10Mに拡張すると12Mフル実装時のHUMANのバグも踏まないので使い勝手は上々です。 DRAMリフレッシュによるウェイトも無いので本体メモリよりも若干速いこともメリットです。 なんといってもスロットを全く消費しないのでACEでSCSIボードとMIDIボードを同時に取り付けれるメリットは大きいです。
ちなみにMARSXの名前の由来はSRAMを逆さに書くとMARSなのでXを付けました(安直)。
本体に取り付けるまで動作確認できない上にTSSOPの部品を使ったこのMarsXを頒布することに躊躇していました。
ツイッターでアンケートを取った結果同じ悩みを持っている人が多かったためキットの頒布を企画しました。
キットの内容
更新頒布サイトで頒布するキットの内容は以下を想定しています。
部品 個数 内容 ピンヘッダ 1 メモリマッピング変更のためのピンヘッダ 0.1uF表面実装コンデンサ 10+α 単なるパスコンです 100uF表面実装コンデンサ 2 電源平滑用 3.3Vレギュレータ 1 5V->3.3Vを生成するためのレギュレータ SN74LVCH16T245 3 16ビット2電源バストランシーバ AS6C6416-55TIN 1 64MBITパラレルSRAM MarsXボード+GreenPAK(SLG46826G) 1 ファーム書き込み済みのSLG46826Gを実装した基板です ピンヘッダのはんだ付け(必要な場合のみ)
MarsXはデフォルトで$200000以降に8MBのメモリをマッピングします。
したがって2MB搭載のX68000の場合はこのピンヘッダを取り付ける 作業そのものが不要です。あくまで既に4MB等に増設した人のみが作業の対象です。
ジャンパ設定はジャンパするとON(オン)です。SW1とSW2の組み合わせのマッピングはシルクに書いてあります。
DISABLEは一時的に拡張メモリを無効にするもので使用することはないでしょう。
固定でかまわなければ次のように廃材でも使用してジャンパしてしまっても問題ありません。
付属のL字型ピンヘッダーを付ける場合には少々足を切り詰めて裏面を面一にするようにはんだ付けしてください。
短絡ジャンパを使用できるようになります。
バストランシーバとSRAMのはんだ付け
U2,U3,U4にバストランシーバを、IC1にSRAMをはんだ付けします。
ユニット名のシルク(U2等の文字)があるところが1番ピンです。
釈迦に説法ですが1番ピンはICの小さな〇印があるので判別できます。この取付方向を間違うとリカバリは不可能ですのでご注意ください(専用の機材があれば別だが・・・)。
冷たいようだけど助けてと泣きつかれても助けません。
その他部品はんだ付け
U1にレギュレータ、C11,C12に電源平滑用のコンデンサ、C1~C10にパスコンをはんだ付けします。
特に難しいことはありません。絶縁用カプトンテープの貼り付け
基板の裏に基板取付時のショートを防ぐためにカプトンテープを張り付けてください。
無くても出来ないことはないですが安心のために処置しておいた方がよいでしょう。カプトンテープはご自身でご用意ください。
IOボードの取り外し
X68000本体からIOボードを取り外してください。
手順の説明等はモデル毎に異なるため省略します。写真はX68000 ACEのIOボードです。
IOボードの加工
スロット1,2のそれぞれA列、B列のリード(足)を利用して接続します(写真赤枠)。
その間のリードはニッパー等でカットしてメモリボード取付けのクリアランスを確保します(写真青枠内すべて)。
写真赤枠内のリードの中で倒して実装されているものがあります。
そのリードはうまく引き起こしてください。
加工したIOボードの一例です
IOボードへのメモリボートのはんだ付け
IOボードのA1,B1のシルクとメモリボードのA1,B1のシルクの位置を確認し重ね合わせた後はんだ付けします。
カプトンテープで絶縁している場合は特に注意することはないです。もしカプトンテープ等で絶縁していない場合はIOボードとメモリボードの間に隙間を作って、
IOボードのリードがメモリボードに触れないようにしてください。
BASEショップにてキットを有償頒布中です。