S2665ANF Thunder i7505 / TYAN


CPU Type:Socket 604 *2

Chip Set:E7505(MCH) + 82870P2(P64H2) + 82801DB(ICH4) / Intel

FSB Clock:400,533MHz

RAM Module Type:184pin 2.5V PC1600・PC2100 Unbuffered DDR-SDRAM DIMM *2*2

Ext.Slot:8x AGP Pro50 *1, 64bit 133MHz PCI-X *1, 64bit 100MHz PCI-X *2,32bit 33MHz PCI *2

Ext.Onboard Device:82540EM / Intel(1000base-T LAN),TSB43AB22 / Texas Instruments (IEEE1394) , AD1981A / Analog Devices (AC'97 Codec)

Power Supply Type:SSI EPS12V

Board Form:Extended ATX

BIOS: Phoenix BIOS


 2002年冬に発表され、翌年正月より国内販売が開始された、Intel E7505(Placer)チップセット搭載Dual Socket 604対応マザーボード。

 姉妹機種としてAdaptecのAIC-7902 Ultra 320 SCSIコントローラを搭載するS2665UANFが存在する。

 これはTYANのXeon対応ハイエンドマザーボードとしてはIntel 860(Colusa)を搭載するThunder i860の後継に当たり、Intel製ワークステーション/サーバ用チップセットとしては初めてDDR 266(PC2100)SDRAMやAGP 8x、それにFSB 533MHz動作をサポートするE7505を搭載している為、新規設計が実施されている。

 基板設計そのものはいかにもTYANらしい、そして伝統の“Thunder”の名に恥じない見事な仕上がりで、またCPU周りにOSコンを多用しVRM回路にも贅沢に国産ケミコンを集中搭載するなど部品もよく吟味されており、眺めていて飽きない。

 Intel 860が良くも悪くもPentium III・Pentium III Xeon用Intel 840チップセットのXeon版でしかなかったのに対し、このボードに搭載されたE7505は先行したEシリーズ1番手であるE7500の成果を踏まえつつ以後のPentium 4用チップセットの進む方向性を予告する内容を備えており、一見地味ながら重要な役割を果たしたことが判る。

 E7505においてはIntel流に言うところのICH、一般的な言い方で表現すればサウスブリッジに相当するチップとして同時期のPentium 4用チップセットと同じ82801DB(ICH4)が使用されており、USB2.0サポートや内蔵ATAインターフェイスの仕様等はそれに準じるが、これとは別にフルスピード動作のPCI-Xバスに対応する82870P2(P64H2)がサポートされており、PCI-Xバスや64bit/66MHz PCIバスに対応するストレージ/ネットワーク系高速デバイスを接続する場合には特に絶大な威力を発揮する。

 実際、オンボード搭載のGbEコントローラである82540EMはこのP64H2に接続されており、このチップがGbE動作している場合でも通常の32bit PCIバスへの負荷は殆ど問題にならず、また133MHz動作スロットが1本と100MHz動作スロットが2本の計3本搭載されたPCI-XスロットにUltra 160/320 SCSI対応カードを挿してテストした限りでは、Pentium 4 520(2.8GHz LGA775 FSB:800MHz)を搭載したIntel 915G搭載マザーボード(RAM 256MB *2)で最新のS-ATA HDDを使用する場合より、Xeon 2.4BGHz(Socket 604 FSB:533MHz L2C:512KB)を単発で搭載するこのボードに1世代以上前のU160 SCSIカード(注1)を挿して2世代以上前のU160対応10,000rpm級SCSI HDDを繋いだ方が圧倒的に快適な動作を実現しており、やはりこの高速バスコントローラのサポートこそがE7505チップセットの最大のメリットという事になりそうである。

 無論デュアルCPUサポートがこのチップセットの大きな特徴である事はまぎれもない事実だが、その高速性を生かすには相応の高速ストレージや高速ネットワーク環境が必要であり、その意味でこのチップセットが真価を発揮するにはP64H2が、つまりTYAN製品で言えばTiger i7505ではなくこの製品の構成が必須という事である。

 強いて言えば、サポートするメモリがUnbufferedのPC1600/2100 DDR-SDRAM DIMMのみ対応で、サーバやワークステーションで一般的なRegisteredメモリをサポートしておらず、そのせいかDIMMソケット数も4本に抑えられているのが不満と言えば不満(注2)だし、Intel純正のクーラーモジュールが取り付けられない(注3)為に適当なCPUクーラーを別途用意しなくてはならないのも困りものだが、このボードは上述した通りE7505の備える機能を、そうしてFSB533MHz版Xeonの真価を発揮させる上で最適の構成を採っているものと筆者は判断している。

 このボードのオンボード搭載デバイスは上述のGbEコントローラの他、Analog Devices製AC'97 Codec(注4)とIEEE1394インターフェイスが標準で搭載されており、登場時期の関係でSerial ATAこそサポートされていないが、基本的にAGPのグラフィックカードさえ挿せば後は特に拡張カードを挿さずとも実用に耐える様になっている。

 TYAN製マザーボードというとお約束のようにBIOSのどこかに問題があるのが常であるが、このボードに関してはトラブルの出やすいAGP(注5)周りを始め問題はほぼ皆無で、これについてもバランス良く手堅くまとまっているというのが筆者の印象である。

 なお、この製品はSSI EPS12V仕様の24ピン+8ピン構成の電源と組み合わせての使用が必須(注6)であり、一般的なATX12V仕様の4ピン12V給電ケーブルしか付いていない電源では(何らかの変換ケーブルでも使わない限り)起動さえ出来ないので、特にご注意願いたい。


 (注1):53C1010-66搭載。つまり64bit 66MHz動作である。

 (注2):Unbufferedタイプの大容量DIMMで良質なものを探すのはRegistered DIMMを探すより大変である。

 (注3):VRMやMCHの背の高いヒートシンクが干渉する。

 (注4):AD1981A。ちなみに同軸SPDIF出力にも対応しているが、この系統のチップはドライバのせいか妙に低音にブーストがかかっていて音のバランスが悪い為、残念ながらその利用価値は低い。

 (注5):余談だがこのボードのBIOSメニューのAGP関連項目では、珍しい事に起動時点で挿してあるAGPグラフィックカードに搭載されているグラフィックチップのベンダー名やタイプ等を表示する機能があって、各ベンダ毎に最適設定を行っている事をうかがわせている。

 (注6):更にAGP Pro50規格準拠のOpen GLアクセラレータカード等を使用する際には別途6ピンコネクタを接続して給電する必要がある。


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