RADEON 9800PRO / ATI Technologies


Graphic Acceralation Chip:RADEON 9800PRO (R350:コアクロック380MHz) / ATI Technologies

RAM:2.8ns DDR-SDRAM 128MB(680MHz 256bit)

Port:AGP (32bit 66MHz 8x 1.5/3.3V)

動作確認マシン:PC/AT互換機(S2885ANRF-T Thunder K8W


 成功作であるRADEON9700シリーズ(R300)の後継機種としてカナダのATI Technologiesが2003年春に発表した、RADEON 9800シリーズ(R350)の上位モデルの純正品。

 紅い基板が特徴だが、製造はSapphireが担当している由である。

 台湾TSMCの0.15μプロセスで製造される256bitメモリインターフェイス・4バーテックスシェーダ・8ピクセルシェーダ・8ピクセルパイプライン構成のAGP 8x・Direct X9対応VPU(Video Processing Unit)という点ではR300と変わりないが、ライバルであるnVIDIAが繰り出してきたGeForceFX5800への対抗上、動作クロックの向上の他に、バーテックスシェーダの最大命令数が大幅拡張(1024→65280)され、更にPixel Shaderについてはチップ内部のFIFOバッファ拡張とその制御ロジック追加(F-bufferと命名された)で無制限長のシェーダプログラム実行が可能に改良されている。

 無論、普通のゲーム等のリアルタイム3D描画を要求するアプリケーションでは長大なシェーダプログラムを実行する事は非現実的であり、これはどちらかと言えばオフラインレンダリングで3DCGを作成する場合に有効なクリエイター向けの機能拡張である。従って、この辺の機能拡張は一般ユーザーには殆ど関係のない話であるが、ともあれこれでnVIDIAがGeForce FX発表時にR300に対する優位点として挙げた機能の大半がフォローされた事になる。

 また、機能面では全く変化が無い為見落とされがちなのだが、このR350ではR300に比べて論理レベルでメモリコントローラ周りがかなりチューンされており、R300とのクロック差以上のパフォーマンス向上を実現している。

 実を言うとここまで記した各改良点はチップ全体からすると本当にわずかな修正で、必要最小限の労力で最大の成果を引き出す作業が行われた事と、原型であるR300の基本設計の優秀さが判る。

 R100以降のATIのチップ設計方針は一貫して明瞭で、シンプルかつコンパクトな、それでいて強力なアーキテクチャを旨として来た訳だが、その一方で非常にシビアなリアリストぶりも発揮している。同社は、シェーダーロジックのある意味理想主義的な解体→再構築で性能向上を目指したnVIDIAがGeForceFXで将来を見据えて128bit(各色32bit)でのピクセル演算処理を選んだのに対し、現状では32bit演算は合理的ではないとして24bit演算を選択(当然演算に要するトランジスタ数は単純計算で3/4になるから、同じトランジスタ数でも発生した余剰分を他のパフォーマンス向上に必要な部分に回せるし、何より熱の出るピクセルシェーダの演算ロジックが3/4になる事による発熱量の減少が大きい)するなど、「現時点で存在するアプリケーションを動作させた場合の実効性能」を最大にする道を選択し続けているのである。

 この辺の設計方針の相違はそれぞれメリットとデメリットがあるので最終的な評価が難しいのだが、少なくとも現状では消費電力(なお、この製品はAGPスロットからの給電以外に汎用の5/12V電源コネクタからの外部給電を必須とする)と発熱量、それにパフォーマンスのバランスでハイエンド製品に限ってはATIの方が望ましい結果が得られている様に筆者は思う。

 実際、総合的な描画性能で言えばこれは非常に優秀な製品であり、外部電源供給を必須とする回路設計のお陰で、AGPからの給電のみに頼る為に何かと不安要素を抱えるRADEON 9600系の上位モデルよりも余程安定しているという印象がある。

 只、互換性という点ではこの製品には問題が多少あって、筆者が使用しているDual Opteronマザーボード(S2885ANRF-T Thunder K8W)ではやたらとVPUにリセットがかかるという問題が発生している。他にも、マザーボードのBIOS設定によってはDOS画面表示が正常に行われないという症状さえ発生していたし、S2466N-4M Tiger MPXではVGA BIOSの仕様の問題かそもそも起動しない、というTYAN製マザーボードとATI製グラフィックチップ搭載カードの組み合わせではおなじみの現象が発生していた。

 結局お手上げの後者はともかく前者は結局マザーボードBIOSのAGP設定項目が問題である事が判明し、BIOSメニューの「Chipset」→「AGP Chipset ConfigurATIon」にある「P Data Drive Strength」以下4項目の設定がメーカー推奨の「Auto」では駄目で、筆者の環境では全て「Fixed(BIOSのバージョンによっては「Data」?)」でメモリがPC2700の2枚単位増設の場合は上から“1”、“1”、“0”、“0”、PC3200で2枚単位の場合は上から“2”、“1”、“1”、“1”とすると、筆者がチェックした範囲では一応安定動作する様になった。とは言え、nVIDIA製品ではAuto一発で安定動作している事や、そもそもここに挙げた各設定の意味や機能が今一つ良く分からない事、それにメモリの構成で設定を変えねばならない事を考えると、非常に敷居が高い感があるのは否めまい。

 このあたりは複雑化した最近の製品では原因の切り分けが難しいのだが、こういった相性問題の多さはRADEON投入開始以後急速に弱点の減ったATIに残された数少ないウィークポイントであり、可能ならば何らかの対策を望みたい所である。


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