S2885ANRF Thunder K8W / TYAN
CPU Type:Socket 940 *2
Chip Set:AMD-8151 + AMD-8131 + AMD-8111 (AMD-8000) / AMD
FSB Clock:200,266,333,400MHz
RAM Module Type:184pin 2.5V PC1600・PC2100・PC2700・PC3200 ECC Registered DDR-SDRAM DIMM *4*2
Ext.Slot:x8 AGP Pro *1, 64bit PCI-X *2*2, 32bit 33MHz PCI *1
Ext.Onboard Device:Sil3114 / Silicon Image (S-ATA) , BCM5703C / Broadcom (1000base-T LAN) , TSB43AB22 / Texas Instruments (IEEE1394) , AD1981B / Analog Devices (AC'97 Codec)
Power Supply Type:SSI EPS12V
Board Form:Extended ATX
BIOS: AMI BIOS
2003年秋に市場に姿を現した、Dual Opteron + 8x AGP + PCI-X + オンボードS-ATA・GbEという重装備な構成のマザーボード。
日本のVisual Technology(注1)が開発費を出して開発が進められたAMD-8131+AMD-8111搭載のS2880 Thunder K8S系(注2)やAMD-8151+AMD-8111搭載のS2875 Tiger K8Wの開発経験や実績を反映して、満を持して登場したAMD-8151+AMD-8131+AMD-8111搭載ボードである。
同クラスのHDAMCがあえなく1週間足らずで即死したのに懲りて、2004年4月に購入。
この時筆者が購入したパッケージはturbolinux 8 for AMD64が同梱されていて、型番がS2885ANRF-Tと末尾に“-T”というサフィックスが付加されていた。
次に2005年12月に2枚目として通常のS2885ANRFを購入したが、これは短期間で後輩のU君に売却した。
更にその後2006年7月に3枚目を購入したが、こちらはS2885ANRF/400、つまりDDR400=PC3200 DDR SDRAMに正式対応となった後期モデルであった。
いずれも例によってTYANらしい見事な仕上がりの基板で、やはりThunder系はコストのかけ方が違うのだ、と痛感した。
これについては、あるいは前述のVisual Technologyや富士通シーメンスによる大量購入(注3)が効いて、量産効果で同じ価格帯でもHDAMCより1ランク上の部材が使用出来ている可能性もある。
HDAMCで悲惨なトラブルが多発した同じ拡張カード群を同じ様に挿したにも関わらず、組み上げて最初に電源投入して何事も無かったかの如くするするとブートシーケンスが進行し、Windowsがノントラブルで起動した時には思わず感涙が目に浮かんだ事であった。
このThunder K8W自体はTYAN製マザーボードの例に漏れず、各所でBIOSについてあれこれ苦情が出されている多少難ありの代物(注4)なのだが、それでさえその動作の安定ぶりに万歳したというのであるから、その比較対象たるHDAMCの挙動が如何なるものであったかはご想像頂けようかと思う。
RADEONとの相性問題については前に使っていたS2466N-4M Tiger MPXでも発生していたので、半ば諦めている(注5)のだが、それ以外については上記のRADEONとの相性という事もあるかも知れないが、筆者の環境ではSCSIカード(ASC-29320-R)とサウンド/オーディオカードの組み合わせ(特にPCI-Xスロットにサウンド/オーディオカードを挿した場合)によってSCSI BIOSが見えなくなる/“Unknown BIOS Error”という警告メッセージが表示されて起動出来なくなる、というトラブルが発生しており、やはり初期バージョンのBIOSには完成度に少なからず問題があった。
もっとも、この問題はBIOSのアップデートで一応解消しているから、AMD-8000シリーズがほぼ0からの出発であった事を含めて考えればむしろこの程度で済んでいるというのは上出来と見るべきであろう。
何しろバスの相違その他のお陰でさんざん苦労したAMD-760MP/MPXの経験はほとんど生かせず、公開されているデータシート(“AMD-8111 HyperTransport I/O Hub Data Sheet”)の記述に従えばAC'97サウンドとUSB 2.0、それに100Base-TX LANをサポートしている筈のAMD-8111がUSB 2.0と100Base-TX LANを殺した状態(但しUSBについてはUSB 1.1としてならば問題なく使用出来る)で利用されている事を考えると、恐らく現段階ではこのチップは稼働はするが機能面では未だ不完全で、BIOS側のソフトウェアによる障害回避や機能の無効化でどうにか体裁を繕っている、といった状態(注6)なのではないかと推測される。
これに対してAMD-8131はAppleのPower Mac G5(注7)に搭載されている事が知られており、早い時期からそうした外販に応じられる程度には安定動作していた様だ。
歴代チップセットのこのあたりの実績を見る限り、AMDはサウスブリッジ相当のチップ開発を苦手としている(注8)らしく、サウンド・グラフィック・USB2.0・LAN・SATAを統合したチップセットを苦もなく開発しているIntelとは対照的である。
まぁ、この辺は会社の規模の差も影響しているのだと思うが、せめてUSB 2.0対応だけは何とかしておいて欲しかった(注9)所である。
なお、上記の通り何かと挙動が特殊で不満の出やすいTYAN製マザーボードのBIOSだが、いったん動作するようになった時の挙動の安定性の高さは抜群で、こちらが妙な色気さえ出さなければほぼノントラブル(Windowsが腐るのはまた別の話だ)で使用出来ることは特に強調しておきたい。
(注1):今から10年程前にはDECのAlphaを搭載するワークステーションの製造販売で知られた会社。
(注2):故に同社にはTYAN製Opteron対応マザーボードが優先供給されており、最初期には独占状態であった由である。詳しくはこちらをご覧頂きたい。なお、この系列はサーバの筐体の形態に合わせたバリエーションモデルが豊富で、他にフォームファクタやオンボードデバイスが異なるS2881 Thunder K8SRやS2882 Thunder K8S Proが存在している。
(注3):Visual Technologyは512 CPUによるクラスタ構成といった形態で大学や各種法人に納入する事が多いので、普通のDual CPU対応マザーボードとは出る数が違った。また、TYANは他社へのマザーボードのOEM供給も多く(実はi750x時代のIntel純正XeonマザーボードもTYANが供給していた)、このボードも富士通シーメンス向けにCELSIUS V810用として供給された実績が存在する。また、他にもSUNやHewlett-PackardなどへK8系マザーボードを大量供給している。
(注4):例えば筆者は、購入時点でATiのRADEON 9800PRO(及び9800XT系(R360)を除く9700(R300)・9800(R350)系各モデル)との間に3D系の高度な機能を利用すると、AGPの設定によってはかなり致命的なエラーが出る、という問題が存在するのを確認していたが、これは結局BIOSのAGP設定項目の変更で問題の回避が可能である事が判明した。詳しくはRADEON 9800PROのページをご覧いただきたい。
(注5):これまでの所はこの辺の問題に関しては、取りあえず待っていればその内何らかの手が打たれてきたし、前述の設定を行えば特に問題が出なくなっている。
(注6):誤解が無い様に書いておくと、問題が分かってソフトウェアで回避するというのはCPUのエラッタもそうだが、どんどん回路規模が巨大化して不具合の追跡/検証によるシリコンレベルでの修正の困難な昨今の半導体では日常茶飯事の現象である。
(注7):HyperTransportを搭載する。ちなみにAppleは初期段階からHyperTransport支持の姿勢を明らかにしていた。
(注8):対してバスブリッジ系はCPUの延長線上だから苦にしていない、というか明らかに得意としていた。もっとも、この辺の状況もAMDによるATI Technologiesの吸収合併で様変わりしている。
(注9):本音を言えば、それは前作AMD-760MP/MPXの段階で当然に実装されていなければならなかった機能である。
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