ELSA GLADIAC 940 PCI-E 256MB / ELSA JAPAN


Graphic Acceralation Chip:GeForce 6800(NV40:コアクロック) / nVIDIA

RAM:DDR-SDRAM 256MB(600MHz 256bit)

Port:PCI-Express 1.1 (x16)

動作確認マシン:PC/AT互換機(S2895A2NRF Thunder K8WE


 2004年4月にデビューしたGeForce 6800シリーズの下位モデルであるGeForce 6800を搭載するカード。

 GeForce 6800シリーズは前世代に当たるGeForce FX 5800/5900/5950シリーズの問題点や欠点をほぼ全て改良したチップで、特にピクセルシェーダー周りの強化が著しい。

 PCI-Express対応という事でHSI(High Speed Interconnect)と称するAGP to PCI-Expressブリッジチップ(グラフィックチップ-ブリッジチップ間はnVIDIA独自定義のAGP 16x相当で接続)を介してバスに接続される設計となっており、グラフィックチップがネイティブ接続のATI陣営と比べてやや不利とされるが、そもそもPCI-Expressの広帯域転送をフルに実現可能なチップセットが存在しなかった開発段階の状況や、PCI-Expressにはシリアル通信であるが故のオーバーヘッドによるロスが含まれる事を考えると、グラフィックチップとブリッジチップとに分けて開発や検証を行いやすくしたnVIDIAの判断も決して間違いではない。

 GeForce 6800系は基本的にコア400MHz・メモリ1.1GHz・16ピクセルパイプラインのUltra、コア350MHz・メモリ1GHz・16ピクセルパイプラインのGT、コア325MHz・メモリ700MHz・12ピクセルパイプラインの無印、そしてコア300MHz・メモリ700MHz・12ピクセルパイプラインのLEに大別され、UltraとGTはIBMの0.13μmプロセスで製造されるトランジスタ数約2億2千2百万(それは同時期のPentium4に匹敵するかこれを上回る集積度である)のチップによる高クロック動作という事で消費電力が大きい(このため6ピン給電端子が1本接続必須となっている)=発熱が著しく、特にUltraについては大多数の搭載カードで前作同様に2スロット占有型の大型クーラーが採用されている。

 この膨大なトランジスタ数は前作GeForce FX 5800/5900/5950系が限られたトランジスタ数の範囲で32ビット浮動小数点演算をサポートした為に32ビット処理時に16ビット処理時の半分しか性能が出ず批判の対象となった(これについてはnVIDIA側がドライバレベルで著名ベンチマーク対策を講じた事も悪影響を与えた)事への対応の為に費やされており、これにより重いフィルタをかけて32ビット処理した場合でも速度低下が発生しにくくなっている。

 また、前作までに無かったPVP(Programable Video Processor)ユニットの搭載で動画再生機能が大幅強化されており、ビデオ入力をサポートしたモデルではこれを活用してMPEG2/4ハードウェアエンコード(完全なソフトウェアエンコード時に比べておよそ60%のCPU負荷がPVPで代行される)機能を実現している。

 GeForce 6800系の最大の特徴はPCI-Express版で専用ブリッジアダプタ併用によるnVIDIA SLI(Scalable Link Interface)をサポートしていて同一メーカー製で同一グレードのグラフィックカード2枚のマルチGPU構成による高速描画が可能な点で、PCI-Expressの広帯域転送機能が生かされてAGP版に対するアドバンテージが明確に示された形となっている。

 nVIDIA SLIはあまりに懐かしい響きを伴ったその名と機能から、今は無き3DfxのVoodoo SLIと同種の技術と思われがちだが、Voodoo SLIが単純にフレームの奇数ラインと偶数ラインを2基のVoodooチップで交互に描画するインターリーブの手法によって描画の高速化を実現していたのに対し、こちらはカード間を結合する専用ブリッジあるいはPCI-Express経由でチップ間通信を行いつつフレキシブルにリソースの分散を行う様になっている。

 このSLIによって得られるパフォーマンス向上は3D描画で約87%前後との事で、リソースの動的分散に要するチップ間通信やフレームバッファへのデータ転送等の負荷を考慮すると描画エンジン部分の性能向上が約2倍に相当し、各ロジックの並列度向上がストレートにパフォーマンス増大に寄与している事が判る。


 さて、このカード自体についてだが、未実装の給電端子を中心に電源回路周りに空きパターンが多く、上位機種との共用の可能性を思わせるものの、実は上位のGeForce 6800 GT/Ultra搭載モデルとは異なる基板を使用しており、恐らくリファレンスデザインのままで基板を作成してELSA側の独自判断かnVIDIAのデザインガイドライン(恐らく後者だろう)に従って給電端子周りの実装を省略したと思われる。

 また、クーラーは1スロットタイプの物で特に妙な小細工はなく、比較的コンパクトなアルミ製ヒートシンクに長寿命セラミック軸受を使用した静音ファンが搭載されているのが目を引くが、それとてまるで奇を衒った所の無い設計なので、目立たない事おびただしい。

 無論この種の製品では確実に動作する堅実な設計の方が有り難く、殊に空冷ファンの耐久性はGPUコアの焼損などカードそのものの寿命にも直結する問題だけに高耐久性タイプの物を搭載していて欲しいのであるが、不思議とちゃんとした物程目立たず控え目な印象があって、このカードもその例に漏れない。

 なお、実装されている出力端子はHDTV(S Video・コンポジット・コンポーネント複合ケーブルとコンポーネント-D端子変換ケーブルが付属する)とDVI-I、それにアナログRGBの3種だが、アナログRGBの周辺の基板パターンを見るとDVI-I端子用のパターンが存在しており、上位モデル同様にDVI-I*2という構成が可能であった事が判る。

この時期既にDVI-Dインターフェイス対応の液晶ディスプレイによる2画面出力も一般化し始めていたから、そうなっていても良かった気がするが、コスト面の問題もあってか上記の仕様となっている。

 これは総じて素直な設計のカードであり、コンパクトで良質なクーラーの搭載に価値を見い出すべき製品であると言って良いだろう。


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