Cobra ENVY24LP / AOpen
接続バス:PCI Bus (32bit 33MHz 5V)
サウンドコントローラ:VT1721 ENVY24HT-S / VIA/ICEnsemble + CS4341-KS / Crystal Semiconductor + VT1616 / VIA
対応機種:PC/AT互換機
動作確認マザーボード:S2885ANRF-T Thunder K8W,WinFast K8NW Pro / Leadtek
2004年3月に購入した、96KHz 24bit SPDIF光出力・7.1chアナログ出力 Low Profile対応のサウンドカード。
搭載チップのVT1721 ENVY24HT-Sは2002年4月にVIAの傘下に入ったICEnsembleが1999年に発表したENVY24(ICE1712 / VT1712)を祖とする一連のENVY24シリーズの中でもミドルレンジのサウンドカード向けとされる製品である。上位のENVY24HT(VT1724)と同様に、初代ENVY24に存在した20ch 36bitのデジタルミキサー、同時16ストリームDirectSoundアクセラレータ、12chずつの入出力ポート、2chのMPU-401互換MIDIポート、それにSoundBLASTER pro互換機能といったサウンド/オーディオカードとしては過剰な、あるいはもはや時代にそぐわない機能を簡略化あるいは省略してWindows Media 9に特化(VT1712はWindows 9x/NT4.0対応)することで192KHz 24bit入出力や7.1chサラウンド出力(但しWindows XPのみで他のOSでは5.1ch出力対応。チップ自体は10ch出力をサポート。ちなみに入力は2chのみ)に対応している。
このENVY24HTとENVY24HT-Sは、VIAが公表しているブロックダイアグラムを眺める限りは全くと言って良い程同一仕様となっており、CPUで良くある様に同一チップの動作モードを変えて出荷している可能性を示唆している(実際にもカード上に実装されたPROMの内容を書き換えることで動作モードが変わることが判明している)。
もっとも、当然ながらソフトウェア側の挙動は異なっており、オーディオカード用の上位機種であるENVY24HTの場合、チップの機能をフルに生かすWDMドライバはカードベンダーから個別に提供されるのが原則である(中にはオンキヨーや玄人志向のENVY24HT搭載製品のように、サウンドカードという扱いでVIA提供のリファレンスドライバをほぼそのまま、あるいは完全にそのまま丸投げで製品に同梱して済ませたケースもある))に対し、あくまで“サウンドカード”の範疇に入るENVY24HT-SではVIAから提供されるジェネリックなリファレンスドライバを使用するという相違がある。
このカードはアナログ音質を支配するDACでメインのステレオ2chについては96KHz 24bit出力をサポートするCrystal SemiconductorのCS4341-KS(2ch出力対応)を奢っているが、残る6chについてはENVY24HT-Sの機能面での制約から48KHz出力になっていて、VIAチップセット搭載マザーボード等でおなじみのVT1616(AC'97 2.2準拠の48KHz 18bit 6ch出力対応Codec)で済ませており、実はフロント2chとそれ以外では音質傾向が微妙に(人によってはかなり)異なるという問題がある。
本来192KHz対応の筈のENVY24HT-Sを搭載しているのに何故このカードが96KHz対応としか言わなかったのかと言えば、正にこのCS4341の仕様に由来するものらしく、ENVY24HT搭載のオーディオカード群がことごとく高価で高音質のCodecを搭載している事を考えると、ENVY24HT搭載オーディオカードとENVY24HT-S搭載サウンドカードの最大の差は正にこの辺の外部Codec部分の性能/特性差にこそある訳である。
無論、只のMME/DirectSoundドライバでしかないEnvy24HT-S用VIAリファレンスWDMドライバと、各社がそのノウハウをフルに投じて開発したENVY24HT用WDMドライバとの性能/機能差も当然無視出来ない(特にASIO 2.0対応等の拡張部分での差は非常に大きい)が、サウンド/オーディオカードの音質/音色差は結局搭載DAC(Codec)の固有の性能差に支配される部分が大きいし、例えばAKMのまっとうな音質のCodecチップは1個あたり千円以上という単価になっていたりするから、この推測もあながち間違ってはいまい。
現実の問題として、このカードの96KHz 24bitアナログ出力の音質は額面上同スペックのDIGI96/8PSTのそれと比較して明らかに劣っていることを考えると、成る程このカードはサウンドカードであってオーディオカードではない訳である。
もっとも、このカードについて言えば、基板設計やその部品実装は手抜きの無いかっちりした仕上がりで、値段を考えるとかなり良く出来た製品であるのは確かである。
このカードの最大の特徴は、この時期のENVY24系チップ搭載サウンドカードとしては珍しくLow Profile PCI対応となっていることで、基板上には上から順にFRONT・SURROUND・CEN(CENTER)/WOOFER・BACKのアナログ出力(ステレオミニジャック)そしてOPTICAL OUTと出力端子のみが外部出力端子として実装されている。
ではアナログ入力がどうなっているかというと、フルサイズのマシンに取り付ける場合にはカード上のピンヘッダと接続するLine In・MIC Inコネクタ(当然上部の空きスペースに実装されている)付きブラケットをカードに装着し、Low Profileの場合はカード上のピンヘッダと接続するLine In・MIC Inコネクタ付き入力専用ブラケットを別スロットに取り付けて使用する様になっている。
この種のカードをLow ProfileのPCIスロットしか持たない機種で使おうとすると、市場には意外と“使える”対応製品が少ないから、その意味では実用性の高いENVY24HT-S搭載のこの製品には非常に大きな存在価値があると言っていいと思うが、ピンヘッダコネクタの高さが高くて隣のスロットに挿したカードと干渉しケーブルを痛めてしまう可能性が高いことだけは改善の必要があるのではなかろうか。
ちなみにENVY24シリーズは元来3.3V駆動として設計されているのだが、2004年春の段階で世に流通していた同シリーズ搭載サウンド/オーディオカードでは何故か3.3V PCIスロットに対応した誤挿入防止キーの欠き取りが設けられていない、つまり5V PCIスロット専用となっているものが大半を占めていて、この製品もその例に漏れなかった。
最近PCI-Xスロットや66MHz 64bit PCIスロットを搭載する関係で従来の5V駆動の32bit 33MHz PCIスロットの実装本数が少ないマザーボードが徐々に増えつつあることを考えると、そうしてAppleがPOWER MAC G5でPCIは3.3V駆動のPCI-Xスロットのみという大胆な構成(これについては、同社が自社開発したノース/サウスブリッジ相当チップに通常のPCIバスへのブリッジ機構が搭載されていないせいで5V 32/64bit PCIバスを搭載出来なかっただけではないか? という気もするが)を取ったお陰で、RMEやM-AUDIO(余談だがここの出しているRevolution 7.1はENVY24HT搭載としては数少ない3.3V対応となっている)といったMac対応オーディオカードも出しているメーカー各社が自社製PCIオーディオカードの3.3V対応化に追われたことを考えると、Mac市場でのこの動きはPC/AT互換機市場においても決して対岸の火事では無い筈で、回路的には僅かな修正で済む筈の3.3V対応を何故各社が放置しているのか、当時の筆者にはその理由が全く理解出来なかった。
もっとも、流石に2004年後半以降に登場したEnvy系チップ搭載カードでは、既存基板流用によるバリエーションモデルの類を別にするとその大半が3.3/5V対応となっており、メーカー側でもこの問題を認識していたことが伺える。
以上の通り、かなり辛い評価となったが、このクラスのカードが実売で\4k程度で販売されているというのは充分評価に値する。
何より、YMF-7x4亡き後はあのチープなCMI8738一色であったサウンドカード市場に一石を投じたという点だけでもENVY24HT-Sには価値があるし、この価格帯でこれだけの音質を実現しているというのは実は本当にすごいことで、筆者がきつめの評価を記したのも折角ここまで出来ているのであれば、という残念な気分を抱けばこその話であることはご理解いただきたい。
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