Auzen X-Fi Prelude 7.1 / Auzentech


接続バス:PCI 2.1 Bus (32bit 33MHz 3.3/5V)

サウンドコントローラ:X-Fi Xtreme Fidelity(CA20K1-PAG) / Creative + XC9536XL / Xilinx

DAC:AK4396VF / 旭化成マイクロシステム *4

ADC:AK5394AVS / 旭化成マイクロシステム

対応機種:PC/AT互換機

動作確認マシン/マザーボード:S2885ANRF Thunder K8W,xw9300/CT,xw9400/CT


 CreativeのX-Fiチップを搭載するAuzentech製カード。アメリカでは2007年夏に発売された。

 日本では2007年秋に少数が今は亡きUSER'S SIDEで高価な並行輸入品として販売された後、2008年9月に設立されたDTC Japan経由でWebショップにて販売された。

 Auzentechは製造拠点を韓国に置く米国メーカーで、元々はC-Media製コントローラを搭載したカードを販売していたのだが、このカード以降はCreativeが外販し始めたX-Fi系コントローラを搭載するカードを主力とするようになった(注1)。

 このカードはCA20K1を搭載するPCIバス対応サウンドカードとしてみた場合、本家Creative製カードではSound BLASTER X-Fi Fatal1ty FPSシリーズに相当する機能(注2)を搭載する。ただし、基板・コネクタのレイアウトは本家と全く異なっており、まず、ブラケットには上から順に

・MIC IN
・LINE IN
・FRONT OUT
・SIDE SURROUND OUT
・CENTER SUB WOOFER OUT
・BACK SURROUND OUT

と6つの金メッキステレオミニプラグ端子が並び、その下にRCA同軸/TOS光両用タイプ(注3)のSPDIF OUT・SPDIF IN端子が並んでいる。つまり、本家で実装されていた、AD_LINKと呼称するブレイクアウトボックス接続用3列D-SUB26ピン拡張入出力コネクタを省略し、一般のニーズの高い各コネクタをナチュラルに並べたレイアウトとなっている。

 次に、内部接続用には9ピンのアナログ音声入出力用ピンヘッダ(フロントオーディオ端子用)とアナログステレオライン入力、それに独自規格の拡張入出力ピンヘッダ(注4)が実装されている。

 さらに、上にも記した通りDACには4個のAK4396VFを搭載し、オペアンプにNational SemiconductorのLM4562NA(注5)とTexasInstrumentsのPA2134(注6)を採用、いわゆるケミコンをすべて排し、表面実装タイプの固体キャパシタを使用するなど、本家Sound BLASTERとは比較にならないほど徹底した音質向上策を講じている。

 ソフトの面では基本的に本家のPCI版X-Fiに準じたドライバ・ユーティリティ(注7)が提供されているが、PCI Express対応のX-Fi Titaniumシリーズに先行してDolby Digital LiveとDTS Interactiveに対応したことが特徴(注8)となる。

 以上の通り、これはCreative純正のX-Fiシリーズとはひと味もふた味も違う個性的かつ真っ当な仕様のカードで、こと音質に限れば純正・非純正を問わずX-Fiシリーズ全体で最強(注9)を謳われる一品である。

 何と言ってもDACとオペアンプで贅沢をしたことの効果は覿面で、CMSS-3Dを有効にしたときの印象でさえ純正のX-Fi Digital AudioやX-Fi Platinumなどとはまるで異なっている。

 それは一言で言えばまともなオーディオの音で、もう少し低音に制動力が欲しい気もするが、CS4382-KQ/KQZ搭載のAudigy/X-Fi系カードの音を聞いて、「サウンドブラスターの音はこの程度なのか」と思った方に聴いて欲しい、Audigy/X-Fi系チップの性能に対する再評価を迫る音がそこにはある。

 現在、日本のAuzentechの公式サイトではこのカードはなぜか“無かったこと”にされてしまっているが、そうするにはあまりにも惜しい、音質と機能のバランスが絶妙にとれた逸品である、と断言しておく。

 なお、機能的には必要十分な本カードだが、一つだけ致命的な問題点がある。

 ヒートシンクが、熱硬化樹脂などではなく厚手のスポンジらしき柔らかいシートに粘着剤を塗布したものを挟んでX-FiのBGAパッケージに貼付するという、かなり頭の悪い実装となっており(注10)、高負荷時などに突然熱暴走を起こしてノイズをまき散らすことがある。

 対策としては、カード本体に冷却ファンなどを用いて直に冷風を当てる、あるいはメーカー保証の対象外となるが熱硬化樹脂やシリコングリス+接着剤で直接ヒートシンクをコントローラのパッケージに接着してしまう、という2通りのパターンが考えられる。

 もっとも、前者はファンの騒音が付加されるので本末転倒で、筆者の見る限り後者が(メーカー保証の問題はあるものの)適切な対策であると考える。


 (注1):どうも同時期にC-MediaがASUSTekとの関係を強化したのが原因であったらしい。

 (注2):32MB DRAMチップを2枚実装し、64MBキャッシュメモリ(X-RAM)機能をサポートしている。

 (注3):光入出力時には専用の透明樹脂製アダプタをはめてTOS-Linkケーブルを接続する。

 (注4):X-Tension DINと称する、PCI/ISAブラケット仕様の拡張I/Oユニット(元々はC-Media製チップ搭載のX-Meridian用)を接続するのに用いる。アメリカの公式サイトで配布されているpdfファイルを見る限り、標準ステレオジャックによるMIC INとSPDIF INが使用不可(こちらはカード上にあるのと同等だから特に要らないが)で、SPDIF OUTとMIDI I/Oが使用可能となっている。MIC INはPhone Outと共にフロントオーディオ端子で代用が効くので、実用上、X-Fi Prelude 7.1 + X-Tension DINで、本家Sound BLASTER X-FiにX-Fiドライブベイを組み合わせた場合と比較して不足する機能はない。なお、フロントオーディオ端子のPhone Outについても、音質や出力の音圧が充分(インピーダンス600ΩのAKG K240DFでも実用上困らないレベル)である。

 (注5):フロント2ch用。これのみDIPソケット実装となっており、交換可能である。

 (注6):フロント以外の6ch分で3個を搭載。こちらは全て基板に直に実装されており、交換不能である。

 (注7):すべてCreativeから供給されている。

 (注8):Creative製カードではPCI Express版のSound BLASTER X-Fi Titaniumシリーズ以降で標準サポートされるようになったが、従来のX-Fiシリーズではソフトが有償で提供されている。そのため、X-Fi系コントローラ搭載機種でこの機能に標準対応するPCIバス対応カードはこのカードが唯一無二となっている。

 (注9):本家最上位のSound BLASTER X-Fi Elite Pro(メーカー直販価格42,800円、ちなみに本カードはDTC Japan扱いでのWeb販売時価格24,800円)さえ大きく上回る。オーディオではそれは自明のことだ、と言ってしまうとそれまでだが、DACとオペアンプ、それにキャパシタをまともなものに変えるのは、残酷なほどに効くのである。

 (注10):ちなみに、本家X-Fiではさすがにグラフィックカードの製造販売も手がけていただけあって対処がきちんとなされており、ヒートシンク付きのPCI版X-Fiでは筐体内のエアフローが適切であれば、筆者の確認した範囲では特にこの種の問題は発生していない。


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