CZ-8NT1
(X1turbo/X68000シリーズ用トラックボール)

 シャープ純正のトラックボールです。トラックボールと言えばマンハッタンシェイプとともに象徴となっていた「マウス・トラックボール」CZ-8NM3がありましたね。ただあれはアイデア勝負の一発商品というか、ボールが手垢で汚れるとマウスとしての性能が落ちるという欠点がありました。もちろん本物のトラックボールならそんな心配はいりませんね。

 このトラックボールを買ったのはX68000PROを買って程なくの頃で、当時キーボードを膝上に置いて使っていたくらいでマウスの場所などなかったくらいなのに、PROの付属マウスが普通のマウスだったため、「転がさないで使うマウス」として入手しました。マーブルマッドネスやサイバリオンなど、ゲームの中にはトラックボール前提のものもありましたから、そういったソフトではより楽しく遊べました。

 数少ないですが、一部のソフトでは使えないものがあったようです。プロトコルの問題ではないでしょうから、通信速度の誤差が大きかったとか、そんなところでしょうか。

 ところで、これはHAL研究所製のMSX用トラックボール。2003年のMSXのイベントで展示されていた時の写真を拝借しています。

 しかしこれ、色が違うだけでCZ-8NT1そっくりですね。いやそのものと言って差し支えありません。というか、どうやらこのトラックボールはどちらかからどちらかへ、あるいは第三者からシャープとHAL研究所へOEM供給されていたものと思われます。まぁシャープが供給していたとは考えにくいので、HAL研究所かどこかの製品が元なのでしょう。
 とすると、分解してみると何が出てくるか興味深いところです。というわけで御開帳…。

 右と下にある金属棒がボールの回転を捉える回転軸。回転の検知はそれぞれ上と左のロータリーエンコーダで行います。基板が左上に寄せてあるので、反対にボールは右下に寄ることになりますね。なんかボールの入るところには丸い印のようなものがありますが、実はボールは回転軸などに支えられて宙に浮いています。

 左上隅に並ぶスイッチは、ばねで支えられて高い位置にあって、いくらか遊びがあって基板のタクトスイッチから延びる軸と当ります。この遊びが操作性を悪くしている印象がありますね。ゲームとかでは一瞬の判断が成否を分けるというのに、こんなところのレスポンスが悪いようではお話になりません…。

 また、タクトスイッチは当時のマウスで多用されていた部品ですけれど、マウスで使うには短寿命過ぎて、「使えなくなった」と廃棄されてしまうものが多数ありました(現在の製品ではマイクロスイッチを使うのが一般的)。とは言え、スイッチが壊れただけなので交換してしまえば解決するものです。

 ご多分に漏れずこのCZ-8NT1も酷使がたたって壊れてしまい、日本橋で同等の部品を買ってきて交換してしまいました。当時確か満開製作所がPC-98用マウスをX68kで使えるようにするアダプタを発売していて、分解能調整など付加価値の高い製品を使うためならともかく、故障のための代用品目的で高額の出費をするのにはちょっと呆れていたものです。




 基板左部分の拡大図。つまりマイコンのところですが、使われているのは沖電気の80C49ですね。
 こちらは基板の右側、コネクタ部分です。
 CN1〜CN3までシルクが書かれていて、そのうちCN2にだけコネクタが実装されてありますが、ここに本体接続用ケーブルの先が刺さります。ということは、ちょうど9ピンありますし、CN1はMSX接続用のコネクタということなのでしょうか。
 でも、ここにコネクタを取り付けてMSXに接続しても動かないでしょうね…。もちろんファームが共通化されているのが一番低コストなんでしょうが、実際のところファームが複数あってもチップメーカーでの書き込みでしょうからコストは変わらないでしょうし。

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