MZ-DISK
(MZ-80K/Cシリーズ用FDD)

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 MZ-DISKは吉喜工業が発売していたシングルFDDユニットです。吉喜工業と言えばColor Gal 5でMZユーザーにはお馴染みですね。

 お馴染みですけど、吉喜工業自体はそれほどパソコン周辺機器を発売していたわけではありません。マイコン関連では「Basic Bull」「Eaglet」などのボードコンピュータ製品が中心のメーカーです。

 このケースのデザイン、中小企業らしく板金で安上がりに作られてはいますが、前縁が逆スラントになってるとか、側面も下を少し詰めてベース(わかりにくいけど青く塗られている)部分が見えるようにされているなど、コストを抑えつつ工夫が凝らされているように見えますね。

 当時の雑誌広告がこれです。月刊I/O・1982年7月号より。

 見た目はシンプルなFDDユニットですが、いろいろ特徴がありますね。

 拡張ユニット不要というのはいいですね。MZ-80SFD(158000円)を接続しようと思ったら、MZ-80I/O(29800円、拡張ユニット)とMZ-80FIO(27000円、インターフェース)、さらにMZ-80F15(4300円、ケーブル)まで必要になるのに、一切不要の上さらに3万円も安いときています。

 しかもプリンタI/Fまで内蔵してるのですから、これでさらに1万円ほども節約できます。ただし、「セントロニクス規格を満足する」I/Fなので純正プリンタを接続することはできません(制御信号の論理が逆なので)。広告を見る限り、事実上EPSONのMP-80 TYPE2専用と捉えるのが良いのでしょう。接続ケーブルにROMが添付されているとのことなので、おそらくMP-80のROMを交換してMZ固有のキャラクタも印字できるようになっているのではないかと思われます。

 もちろん拡張ユニット不要というのは逆に拡張ユニットが接続できないということでもあるわけで、FDDとプリンタ以外を接続したいという希望は叶えられません。とにかく安くFD運用システムを組み上げるために割り切れる人向けということになるでしょうか。

 正面の図。搭載されているキヤノン電子のMDD6108はレバーではなくドアが全面を覆っています。CZ-800Fで採用されている沖のドライブみたいなタイプですね。このドア操作とチャッキング(ディスクを回転部に正しく挟み込む)が連動しているのも同様です。

 パソコン黎明期にはこういったドア型などレバー型ではないFDDがいろいろありましたが、5インチ時代が終わるよりも早くに淘汰されたという印象です。やっぱりレバー型の方が機構が簡単なのかな…?

 MZ-DISKの広告によればMDD6108は高速アクセスを誇るとされていますが、カタログなどが見当たらずスペックが不明です。ディスクの回転数は決まってますし、プログラムで読み書きするのですからデータ転送速度に優れているとかいう話ではないのでしょう。とすると差があるのはステップレートかな…。なおMDD6108はMZ-80SFD搭載ドライブなどと比べると相当薄いですがハーフハイトではありません。だいたい57mmくらい、2/3ハイトですね。

 しかしこの「MZ-DISK」という商品名、シンプル極まりないったらありゃしませんね。結果的に他のパソコン製品向けFDD製品を出すことはありませんでしたし、他のメーカーもMZ-80K/Cシリーズ専用FDDとかもありませんでしたから名前で困ることはなかったのでしょうけど…海外にはクイックディスクを「MZ DISK」と称したことで今になってちょっとややこしいことに…。

 沖のドライブのようにドアを開けるとディスクがイジェクトされるというようなギミックはなく(モデルによるのかは不明)、ディスクの出し入れは完全に手操作です。

 ということで目立つ色のディスクを入れてみました。これで目いっぱい奥まで差し込んだ状態です。取り出しはこの状態からディスクをつまみ出すので、表裏とも斜めにカットされたような形状になっています。

 ちなみにこの状態でのディスクの表裏の方向は、右側が表です。アクセスランプがある方ですね。写真の黄色いディスクも見えているのは裏面です(溶着痕がわかります?)。「親指の法則」は左手でないと合わないか…。

 こちらは背面。

 青いコネクタが目立ってますが、これが拡張用のFDの信号です。
 その左のコネクタは、上がプリンタ、下がCPUバスです。右上にいかにも空冷用ファンという感じの取り付け穴がありますが、入手時にはファンはありませんでした。そもそもついてなかったのかは不明…。

 銘板が見えてますが、シリアル番号が書かれているわけでもスペックが記されているわけでもありません。こんな内容ならそもそも必要? どういうことなの…。

 というわけでダイレクトに接続するの図。入手時はケーブルが欠品していたので製作しました。長さはてきとうに、約60cmとしています。

 簡単に中も見てみましょう。これはカバーを取ったところで、ドライブが見えています。電源はケースの後ろにまとめられています(電源ユニットなどではなく、パーツを集めて作った電源回路といった雰囲気)。

 ドライブユニットの向こう、アイボリーの板で仕切られた反対側にI/Fがあります。

 取り出してはいないので完全な全景というようにはなっていませんが、おおよそはわかる写真になっているかと思います。

 中央上に目立つ大きなLSIがFDCであるTM3444M。右下に丸いシールの貼ってあるのがブートROMですね。MZ本体とケーブル1本で直結ということはI/Fボードの中身がここに搭載されているということでもあるわけで。しかしT3444MなんかMZ用カスタム品との噂もある他では見ないLSIなのに、よく手に入りましたね。BtoBであれば東芝に直接言えば買えたんでしょうか。それともシャープに卸してもらった? ROMだって純正品と同じ内容じゃないかと思うのですが(未確認)、どうしたんでしょうね? まぁ当時はソフトの著作権がちゃんと確立してなかったりしましたけど…。

 左の青いコネクタがFD信号で、そのままFDDに接続されています(DISK OUTとシルクがある)。その下の白いコネクタが電源コネクタです。一方右端にはプリンタ(PRINTER OUT)とMZとつなぐバスコネクタ(BUS LINE)があります。

 最後に、実際に動かしてみた様子をご覧頂きましょう。単密度なのでディスクの読み出し速度は遅いですし、ヘッドロードの音も仰々しいですね。

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