MZ-1F11
(クイックディスクドライブ)

 今じゃ信じられないでしょうけど、フロッピーは高嶺の花だったのです。ドライブはもとよりメディアのほうも。まぁドライブは高いけど一度買えばあまり増やさなくてもいいですよね。でもメディアはそうはいかない。当時2Dの320KBという容量はそれはもう広大なものに思えたものですが、使い勝手の点からしてどうしても目的別に複数枚のディスクを使い分けたくなるもの。ところが、ある程度安くなっても1枚千円はくだらなかったのです。一箱じゃなくてですよ。「大人買い」なんて言葉は当時なかったですけど、大人でもそう何枚も買うのははばかられた値段でしたね。
 そこにさっそうと現れたのが、QDことクイックディスク。メカをミツミが、メディアを日立マクセルが開発して、それをシャープが初めて製品に採用するというぐあいで登場しました。なにせ、メディアが1枚450円ですからね。両面あわせて128KBと考えれば1350円の2Dフロッピーよりもビット単価は若干安くなりますし、IPLブートするソフトを1枚で二つ収録できて経済的だし、ロードが速い!となればそりゃもう猛烈に憧れるってもんでしょう。

 MZ-1500に採用されたあと、MZ-2000/2200やMZ-700/800にもオプションで供給されるということで、雑誌などではX1用のドライブを切望する声がありましたね。Oh!MZでのX1turbo緊急特集記事に、QDを搭載するという「X1E」なるリーク情報(?)も紹介されるなど、私でなくとも憧れていた人は多かったようです。MSX用にはいろんなメーカーから外付けドライブ製品がリリースされ、またファミコンのディスクシステムとしてかなりの台数が出荷されたんですけど、標準装備されたり(つまりQDからシステムがブートする)という例が少なく、さらにはパソコンで取り扱いたいデータ量が増えてフロッピーでないと運用が現実的ではなくなったりして、パソコン用としては一瞬の徒花みたいになってしまいましたね。

 MZ-2000では、QD起動にすると32KBまでというブートのプログラムサイズの制限がなくなります。これを利用して、2段ロードしていたプログラムを結合して一発ロードに改造することができました。MZ-1M01のシステムは2段と言わずかなり複雑なロード形態をとっていたのですが、その改造方法が雑誌で紹介されてからは楽々ブートできるようになりました。




 外付けドライブの全景。MZ-1500に使われた内蔵ドライブと中身は同じで、MZ-700では内蔵としても使用できるようになっています。左下の白いのは保護用シート。ケーブルの先は、角型ヘッダになっています。



 フタを開いたところ。中央とんがっているのが回転軸です。そのとんがっているのから少し右に寄ったアーチ型の白い線がありますが、これがヘッド。見た目はカセットテープなんかのヘッドとよく似ています。実際技術的にはカセットテープ並みですむようにして、全体の価格を下げる効果を狙っています。



 背面に見えている白いコネクタは、MZ-700で使用する際にMZ-1T01を接続するためのもの、のカバーです(本当はケーブル側のハウジングなのだが)。カバーを外すと、基板上についているのと同じ機能の端子が現れます。接続すると内蔵だったはずのMZ-1T01が外付けとなるのです。

 MZ-700に接続するとこんな感じ。データレコーダの代わりに本体に装着します。

 よくよく考えると、MZ-1F11の幅ってMZ-1T01と同じなんですよね。代わりに装着するからそうなっている…と思う分には何の不思議もないんですが、MZ-1F11の中身を見るとあまり余裕がなくて…外から見えるこの大きさが裸のドライブの大きさと言って差し支えないくらいのものがあるのですよ。これって偶然なんでしょうか…?

 MZ-700に接続する場合は、MZ-1T01の代わりに装着しないといけません。というのも、I/F(MZ-1E14)のための電源を拡張バスコネクタから供給することができず、元々MZ-1T01用のコネクタから電源をMZ-1F11を経由してもらわないといけないのです。

 いくら横幅が同じでピッタリ装着できるとか言っても一段背が高くなってるのは不格好ですし、完全に外付けドライブとして使える方法があると良かったのにな…。

 MZ-800の情報をネットで調べていけばそのうち見かけるだろうと思うのですが。



 これもMZ-1F11。ある意味カラーバリエーションと言えなくもないのですが、実際の所は輸出モデルということになります。黒いMZ-1F11は輸出されていません。

 どうして白、というかアイボリーなのかと言えば…もちろんMZ-800と合わせてるからですよね。


 MZ-800のデータレコーダの代わりに搭載できます。その見た目はまるでMZ-1500…。色合い含めて違和感ありませんね! というかなさすぎてMZ-1500を見慣れた目にはそういうモデルだと思ってしまいそうです。まぁ最初からQDかFDで運用する人用のデータレコーダ非搭載モデル・MZ-811というのもあったんですけどね。



 もちろんMZ-700にも搭載できますよ! 色合いが良いのか悪いのかなんとも言い難いのですが…。

 実は、MZ-1F11の輸出はMZ-800の登場前から行われていて、その時はMZ-700用のオプションということになっていました。マニュアルにもMZ-700との接続しか説明されておらず、MZ-800との接続についての説明が入るのはもちろんMZ-800発売後のことだったようです。当たり前と言えば当たり前の話ですが。

 でも新製品ニュースとしてこれを見た当時の欧州の人はどう思ったでしょうね? MZ-700の白い部分に合わせたと思って、あまり気にならなかったとは思いますけど、これがMZ-800の布石のひとつとか(つまりこういう色を基調としたニューマシンが登場する)までは想像できなかったでしょうね…。


クイックディスクに関するメモ

 MZ-1500で世に初めてお披露目されたと言って過言ではないほどのクイックディスク(QD)ですが、ファミコンのディスクシステムに採用されたことがあだになった(と言われている)こともあって、尻すぼみな結末を迎えたのはご存じの通り。ですが当時は媒体の安さゆえ熱狂的にも見えるほどの注目を集め、X1シリーズにも対応させてほしい!という声が雑誌などでもよく紹介されていました。

 一般ユーザーからはMZシリーズとファミコンに採用されただけの印象が強いですが、注目していたのは他メーカーも同様で、そのドライブユニットの価格の安さから手軽に高速な外部記憶装置として採用する動きがいくつもありました。そういった引き合いからか、長期的に改良品がリリースされてけっこう息の長いメディアとなっていたようです。

 雑誌の新製品ニュースから各モデルを見てみましょう。こちらは初代の製品・D280。月刊I/O誌1984年4月号のNew Productsより。

 MZ-1500やMZ-1F11にも採用された、トップローディングタイプですね。この時はメディアも初お披露目ですから、両方の内容について書かれています。

 次いで二代目のD281。月刊I/O誌1986年1月号のNew Productsより。

 ディスクドライブとして一般的なフロントローディングタイプに改良されました。この機種がファミコンのディスクシステムとして採用されたものです。もちろんディスクのシェル形状が異なりますから、ドライブのフレームも含めてカスタム対応されたということになるのでしょうが…案外と出荷台数ではカスタム対応品の方が標準品より多かったりしたのではないかと…。

 そして三代目のD284。月刊I/O誌1986年12月号のNew Productsより。

 3.5インチFDDの方がメジャーになったので、そのスペースに収められる大きさに改良されました。もちろん3.5インチFDDといっても当時の薄型、初期型からすると半分の薄さのものですね。

 CQ出版「フロッピ・ディスク装置のすべて」によれば、さらにこの後D286というドライブが発売されていたようなのですが、ちょっと資料がなくて詳細どころか外観さえわかりません。

 それぞれのドライブはどこに使われたのか? 今頃調べてるのでマイナー機種なんかを落としてるかもしれませんが、QDを採用したメーカー・機種(ファミコンとシャープ以外)には次のようなものがあったようです。

メーカー 型番 搭載ドライブ 備考
1984 AVT QDM-01 D280 MSX用外付け(ミツミ・QDM-01)
CASIO QD-7 D280
Logitec QDM-01 D280
LEAD QDM-01 D280
PHILIPS VY-0002 D280
Reis-Ware QDM-01 D280
Sakhr QDM-01 D280
Daewoo DPQ-280 D280 MSX用外付け(大宇・DPQ-280)
Fenner DDQ-200 D280
Olympia QD-64/2 D280
Yeno DPQ-380 D280
1985 AKAI MD280 D280 S612用(サンプラー)
THOMSON extension MO5 D280 M05用拡張ユニット
QD90-128 D280 T07用外付け(QDM-01)
1986 KORG SQD-1 D280 MIDIレコーダ
Roland S-10 D281 サンプラー
MKS-100 D281 サンプラー
Canon QD-70 D281 ワープロ(外付け)
THOMSON QD90-280 D281 M05/T07/T08用外付け
Sakhr QDM-02 D281 MSX用外付け
1987 AKAI S700 D281 サンプラー
X7000 D281 サンプラー
KORG SQD-8 D281 MIDIレコーダ
Roland S-220 D281 サンプラー
PR-100 D281 ミュージックレコーダ
YAMAHA MDF1 D281 MIDIデータファイラー
EMQ-1 D284 ディスクレコーダ
1988 Roland MT-100 D284 デジタルシーケンサー/音源モジュール
Smith Corona PWP80 D284 ワードプロセッサ

 MSX関係の情報はMSX Resource Centerからピックアップしました。MSX用ドライブが多数あるように見えますが、実際には特定のメーカーからOEM供給された製品ばかりですね。

 一番下のSmith Coronaは今でこそインクリボンのメーカーですがかつてはタイプライタや英文ワープロを多数製造していた企業。このワープロがある時期までQDをずっと採用していて、このページによれば実に38機種にて搭載されていたようです。全部書きたいのですが何年に発売されたかの資料がみつからず、ひとまず判明しているPWP80のみリストした次第…。

 コンピュータ関係以外では音楽メーカーが目立ちますね。作成したデータを保存するメディアとして、もちろんその前はカセットテープだったのですが、内蔵または後付けオプションとして発売したところがあったんですね。私は当時はその方面に疎かったこともあり全然知らなかったのですが、後にDTMと呼ばれるジャンルを嗜んでいた人には常識だったようです。

 いざ使うとなればどんな工夫も厭わないということなのか、AKAIのMD280は接続されるサンプラーのS612同様ラックマウントタイプの機材なのですが、トップローディングのQDドライブであるD280を強引に搭載しています(Studio-Oz氏のブログ「S612、MD280のクイックディスクドライブを修理してみる!♪ [akai]」を参照)。

 当然ながら、メーカーはそれぞれのユーザーのために純正のブランクメディアを提供していました。とはいえ新たな規格参入メーカーが現れなかったQDですから、おそらく全て日立マクセルのOEMだったと推測されます。

 じきにMIDI機器もエクスクルーシブデータやサンプリング周波数の高速化などでデータ容量が増大し、1ファイル最大64KBのQDでは使いづらくなり、FDやメモリカードへ移行することになったわけで、QDがメディアの中心にいた時代もほんのちょっとの期間しかなかったのでしょうね。


MZ-6F03
(ブランクQD)

 サプライ品としての、クイックディスクのブランクメディアです。一応10枚一組のみの販売形態とされていました(お店がバラ売りしてたところもあるかもしれないけど)。一枚450円ということになっていたのですけど、10枚まとめてだとそこそこの値段になっちゃいますね。



 ディスク一枚につき、この三点セット。上に見えるのはラベルです。


 エンベロープの裏面は、磁気メディア特有の取り扱い注意事項。内容的に特別なものはありませんね。

 ところで、ちょっとこれを見てください。この2枚のディスク、明らかな違いがあるのですけど…?



 実はこれ、左が日本国内向け、右が海外向けのディスクです。QDのロゴ、さらには「Quick Disk」という名称さえ海外向けのエンベロープやラベルから消えています。

 というのも、シャープはどういうわけか海外向けにはクイックディスクと言わず"MZ DISC"または"MZ DISK"と称して商品展開していたようなのです。MZ-1F11についてのパンフもこんな具合。

 そりゃまぁねぇ、発売開始当初は他のどこのメーカーも採用してないメディアなのだからMZ DISKとか言っちゃってもいいのかもしれませんけど、そのうちどこかが使うようになった時、まさかそちらでもMZ DISKとか言ってくれるわけないじゃないですか。

 それとも何か、商標で問題があったんでしょうか。海外のどこかの企業がクイックディスクという商標を持っていて、後にミツミが無事譲渡を受けるとしてもシャープとしてはそれを待ってられないので、独自の名前をつけたとか…。

 改めて今海外メーカーのQD採用製品を見てみると、さすがにQuick Diskとは書いてあるものの、QDロゴが描かれてないものが散見されますね…でも一方でMSX系は当たり前のようにQDロゴがついています。うーん、何があったんだろうか…。






 ディスクには2つのバージョンがあるとされています。後期のものは前期のものに比べて内部の円盤が回転しにくくなりにくいよう、改良されていると思われます。

 いくつか特徴があるらしいのですが、一番分かりやすいのがA面・B面を示すマークの形です。丸にAまたはBとあるのが前期、ラベルにある矢印と四角の組み合わせになっているものが後期です。

 結果的に後期モデルが出荷された期間がずっと長くなりましたから、数もたくさん出ているものと思われるのですが…。


 これはオマケの写真、他メーカーのブランクメディアです。

 とは言うものの、結局全部日立マクセル製だと思われます。エンベロープやラベルの形が同じですしね…。

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