PC-E200

 1987年末、工学社から待望のポケコン専門雑誌が創刊しました。その名も「ポケコンジャーナル(PJ)」。それまでプログラム投稿雑誌「PiO」にいろんな機種のソフトが掲載されることはあっても、専門に取り扱う雑誌はなかったのですからそれは画期的な事件でした(正確にはPC BOXとかいうパンフレット形式で配布する情報誌もありましたが、まぁちゃんとした雑誌ということで)。
 早速買って見てみると、いろいろ興味深い記事があったのですが、その中でも「ポケコンと8255ボードでメカトロの世界がひろがる」と題したカラーページに心奪われました。そこには、これまでなかったスタイルのポケコン「PC-G801」とポケコン用教材で実績がある太平洋工業のボードがカラーで紹介されていたのです。
 カラーページにもそれに連動する連載にもPC-G801は「学校教育用」とあって一般販売するようなことは書いてありません。ですが驚愕のスペックを見てどうしても欲しくなりました。
 そのスペックとは、
  • Z80A搭載
  • 24桁×4行表示
  • テキストエディタ・シリアルI/F内蔵
  • タイプライタフェイスのキー配列
という、それまでPC-1600Kでしかありえなかった仕様でした。どうしても欲しい!でもどうやって手に入れればいいかわからない!どうしてこんなすごいポケコンを一般販売しないんだろう?!ぜったい売れると思うのに…。

 その思いが通じたか、はたまた同じ思いを抱いてシャープに問い合わせる輩が続出したか、あるいは元から計画されていたのか、数ヵ月後にはこれをPC-E200として発表。同時に発表されたPC-E500と共に「Eシリーズ」として新たに展開していくという意思表示がなされたわけです。
 どーしても欲しかった私ですが22000円というのは意外に高い値段で、結局は就職してから(つまり発表があって1年半ぐらいしてから)買いました。直接的なきっかけは同僚が使っているのを見たからで、またPC-1250/1251を使えば良かったとはいうもののなんとなく古すぎるポケコンを使うのに気が引けたからということもあったような気がします。

 ここで教育専用機についてちょっと触れておこうと思います。先述のPJ誌の特集にあった系統図によれば、最初の専用機はPC-1404Gと呼ばれるもので、PC-1401のような関数機能強化型ポケコンのスタイルを持っていました。今は火事でなくなってしまいましたが長崎屋尼崎店の電器コーナーのショーケースになぜかPC-1404Gがあって(欲しかったんですが買えなかった)その実物を見る機会に恵まれたのですが、それを踏まえての専用機の特徴は
  • 工業高校向けを意識して、一般用でなく関数強化型ポケコンをベースとする。
  • リチウム電池は高いので乾電池で使用できるようにする
  • 教材として生徒に買ってもらうので、あまり高くしない
  • 複数年使用する前提なので、それだけの保証期間を設ける
というものだと考えられます。私も、PC-1251の電池を初めて交換した時はあまりの高さ(当時のCR2023はひとつ500円、2つ必要なので1000円…)におののき、でも必要なので泣く泣く支出したという思い出があります。またPC-G813などは15000円くらいで売っているようでしたし、保証書を見ると3年間有効になっていました。

 教育専用機はこんな感じなのですが、教育の現場では実はもっと前からポケコンが使われていて、PC-1251/1245の時代にはすでに太平洋工業から専用の教材が発売されていたようです。学生向けということで、ポケコンの特徴である「安い」「見かけによらず強力なBASIC」というのが大きな理由だったとは思いますが、実はそれ以上にポケコンの内部情報が公開されるようになって制御実習に使えるようになってきたことのほうが大きかったでしょう。工業高校ではプログラムを組むことそのものよりは「何をするためにプログラムを組むのか」が重要であり、その意味でモーターやロボットアームなどを制御できるマイコンが必要だったわけです。しかし機械語は慣れないものには理解しにくく、BASICの使えるコンピュータならまだ教えやすいだろうと期待できます。しかしパソコンを宿題をやるために持って帰らせるわけにはいかず、また家で買わせるのも大変。もしポケコンが外部機器の制御に使えるならこんなに好都合なことはありません。

 ポケコンの内部情報はまずアメリカなどでマニュアルが発行され、それを雑誌編集部が逆輸入する形で日本でも広まりました。なんで海外と国内の扱いに差があるのかよくわかりませんが、アフターサービスのレベルの問題なんですかね(手厚いとかえっていろいろ期待されますし。情報はあげるから質問するな、という態度もアリだったのかも)。PC-1251などはCE-125なんかを接続するために11ピンのコネクタを備えていますが、基本的にはパラレルI/Fで、CMOSレベルであるということに注意すれば難しいことはありません。CPU内部レジスタをいじれば各端子を自由に読み書きできますので、そのためのサブルーチンを(例えブラックボックス扱いでも)用意すれば制御実習は成立するわけです。
 このことに気づき実行に移したのが現場なのか教材会社なのかメーカーなのか私には知る術がありませんが、そのうち学校教育に適した仕様のポケコンを作ろうという機運が盛り上がり、三者が結託して専用機を企画し商品が出てきたのでしょう。最新型であるPC-G850Vでもマニュアルにはある学校の先生の名前が協力者として挙げられており、また教師には「指導マニュアル」という別扱いの冊子が用意されているようです。
 PC-E200はPC-G801とほとんど変わるところはなく、RAMが8KB(PC-G801)か32KB(PC-E200)かという部分と見た目に「PROGRAM FILE」という赤い文字列があるかどうかしかないと言えるでしょう。そのRAMの違いも、基板に学校用と一般用の違いがあるわけではなくて6264と62256のチップが載るパターンが両方ともあって、仕向け先ごとにどちらかを搭載して出荷しているというだけにすぎません。
 使ってみるといくつか不満も出てくるもので、まぁプログラム容量としては申し分ないものの、キーというかボタンが押しにくい(なんか入力されない角度というのがあるような感じ)、筐体がちゃちに見える、電源断時に画面にノイズが走る、などという問題がありました。
 左の写真もそのちゃちさを見せようと撮影したものだったのですが、あまりわかりませんねぇ…。曲線のまとめかたなどそれなりに意匠を凝らしたところが見受けられますが、筐体の合わせ目とか、もうちょっとなんとかできなかったのかな…という気もします。
 電源断時のノイズですが、PC-E200の場合ほとんどが一瞬全ピクセルの点灯(一部点灯しない横線がある)というものが見られます。ノイズの発生しないことはありませんと断言できるくらい必ず何か出ます。
 何回かに1回、ノイズパターンが反転して一部だけ点灯する横線、というのがあります。左の写真がそれ。いつあるかわからないので捉えるのに苦労しましたよ〜。で、このノイズって実はPC-1600Kにも見られるものなんですよね(PC-1600Kでは全ピクセル点灯みたいなノイズはありません)。そこでその様子を並べてみました。この横線は長さ・位置ともランダムで、その点も似通っています。
 このノイズの原因はさっぱりわかりませんが、液晶モジュールより本体回路に原因があるとしたら、PC-E200とPC-1600Kの設計には共通性があるということになりますよね。まさかPC-E200は技術的にはPC-1600Kの延長上にあるものなのでしょうか…。
 11ピンI/Fに代わり教材基板を接続することになった拡張バスコネクタ。中身はありふれた信号で構成されています。M1とかZ80特有の信号もありますが、積極的に必要になることはないと思います。そのせいもあってか、カシオがZ-1などで拡張バスを装備した際コネクタの形状も信号配置もこのコネクタとコンパチにしてしまいました。現場の要求でカシオが折れたんでしょうかねぇ。
 それとこのカバーですが、PC-1500やPC-1600Kのコネクタカバーと色以外は全く同じものです。こんなところを流用してたなんて…。
 なんだかんだ言ってもそれまで持っていたポケコンに比べたら計算速度も速かったのでそれなりに重宝しましたが、C言語が使えるということでPC-G813を入手した後は実質引退。その後似たようなものを複数持っててもしかたないということもあり同僚の女の子に売ってしまいました。ですが最近ヤフオクの取り引きの流れでなぜか2つも入手(^_^;)。久々にラインアップに戻ってきたわけです。

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