MZ-2000コンパチボード
(SID-1001/1002)

 MZ-2000/2200のオプションで一番のキワモノが「16ビットボード」MZ-1M01なら、MZ-80Bの最高のキワモノオプションはこの「MZ-2000コンパチボード」であることは間違いないはずです。アップグレードオプションというものは昔からいろいろありましたが、たいていはベースマシンにその余地があらかじめ残してあるとか、最上位グレードと最下位グレードが初めから用意されていて差をオプションで埋められるとかいうものです。このMZ-2000コンパチボードはサードパーティ製だけのことがあって、差を改造により無理やり埋めてしまうという手法が採られています。まぁこんなことはメーカーにはできることではないのでしょうが。

 千葉に「マイコンショップ・セキグチ」という会社?お店?がありました。ゲームなどいくつかのソフトを制作して販売するなどしていたのですが、MZ-2000発売後何を思ったかこのコンパチボードを設計し発売します。その後もハード製品は出てこなかったみたいなので、そもそもハード開発要員はおらず、出入りしていたマニアとか外部の人間の手によって設計・製作されたものではないかと考えます。
 普通に考えても、MZ-80Bを知っている身ならMZ-2000の仕様はあまりに惜しいと思うでしょう。ほとんどMZ-80Bのアーキテクチャを踏襲しておきながら、微妙に異なるハードウェア。もしかしたら「改良した」というよりは「仕様を借りてきた」という表現の方が正しいのかもしれません。でも、これだけ似ているならなんとかなるかもしれない。ハード屋ならそう考えても無理ありません。

 結果的にどうしたかというと、MZ-80Bの一部の回路にオリジナルの回路を割り込ませ、スイッチで旧来回路と新規回路を切り替えて動かすようになっています。カスタムLSIを引っこ抜いてソケットにボードを差し込むとか、ケーブルを抜いてコンパチボード添付のケーブルを挿し、コンパチボードに元のケーブルを挿すとか、アクロバットにならざるを得ない品物のわりには、ハンダ付け一切不要というのが感心します。

 コンパチボードを取り付けてあるところ。拡張I/Oスロットの上段右が拡張GRAM・MZ-8BGKで、基板からコネクタがいっぱい生えてるのがコンパチボードです。本来直接メインボードに接続されているケーブルをコンパチボードにつなぎ、コンパチボードからメインボードに新しいケーブルで接続することで、回路を割り込ませているわけです。
 また一部のケーブルは、内部の配線をぶった切ってそこに割り込ませ、必要な信号を得るために使われています。ぶった切ると言っても、MZ-80Bの製品として最初からコネクタで連結されているものであり、それを外してつけなおすだけのことです。ここまで接続が楽だと、もしかして最初からそうしてもらえるようにMZ-80Bを設計していたのではないかと勘ぐりたくなります。
 こちらはGRAMを接続するためのボックスです。カラーグラフィックはMZ-2000のを流用するのが早いということで、特に工夫することなく必要な信号を作って接続しています。まぁカスタムLSIもついてますし、一番素直でしょうね。
 カラーCRTにはここから接続します。もちろんキャラクタVRAMの内容もそこから出力されます。外部にグラフィックを出すかどうかの切り替えスイッチがついています。
 見事に起動した、MZ-2000化MZ-80B。

 …で終りならカッコいいのですが、やはり無理があるのか制限事項が存在します。それはデータレコーダ部で、ロード後巻き戻すと録音ヘッドがオンになってテープの内容を消去してしまうそうなのです。MZ-2000モードでは自動では巻き戻さずストップさせるようにしています。

 宣伝も兼ねていたのか、1982年9月号のI/O誌に「SIDの居候」名義で製作記事として掲載されました。MZ-2000の発売を考えると、かなり早い時期に完成していたことになりますね。もっとも、この記事ではMZ-1R01が未発売だったらしくカラーグラフィックについては未チェックであり、またマニュアルによると外付けボックス発売に際して一部の部品を交換しているようです。
 Oh!MZ誌1982年10月号にはカラーグラフィックをサポートした仕様にて広告が登場、翌11月号には「SIDの風来坊」名義にてレビュー記事が掲載されています(このそれぞれのペンネームも、設計者を外部協力者と推測している理由です)。

 まぁ、この後パソコンが高機能化してくるにつれて、ユーザーはハードを扱えなくなり、ハードも劇的な変化が少なくなって、さらにオプションハードも高度になってメーカーのみが供給するようになり、こんなものすごいサードパーティ製ハードはあまり現れなくなりました(X68000時代になって一度復活しますが)。ソフトはハードの枠の中でしか身動きがとれず、新しいことをするには新しいハードが必要。それを突破するハードを発売した勇気に、敬意を表しましょう。

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