S2567U3AN Thunder HEsl / TYAN


CPU Type:Socket 370 *2

Chip Set:RCC-NB6576 (North Bridge:HE-SL) + RCC-IB6566-P05 (South Bridge:OSB4) + RCC-NB6555 (64bit/66MHz PCI SystemI/O Bridge:CIOB20) / Server Works

FSB Clock:100, 133MHz

RAM Module Type:168pin 3.3V PC/133 ECC Registered SDRAM DIMM *4

Ext.Slot:x2 AGP Pro *1, 5.0V 64bit 33MHz PCI *3, 3.3V 64bit 66MHz PCI *2, 5.0V 64bit 33MHz PCI/ISA *1

Ext.Onboard Device:53C1010-66 / LSI Logic (Dual Ultra 160 SCSI) , i82559 /Intel (100base-TX LAN) , ES1373 / Creative (PCI Sound)

Power Supply Type:ATX *2

Board Form:Extended ATX

BIOS: PHOENIX BIOS for PENTIUM III


 2000年12月に販売が開始された、Dual Socket 370ボード。

 基本構成を見ると明らかな通りこれはS1867DLU3AN Thunder 2500のSocket 370版に相当するが、チップセットがThunder 2500に搭載されていたServerSet III HE(注1)ではなく、ServerSet III HE-SL(Super Light)と称するサブセット版に変更され、メモリソケットが8本から4本に半減しているのが目を引く。

 もっとも、その一方で両者を並べて比較してみると、AGPスロットより下の拡張スロットおよびサウスブリッジ周辺は殆ど変更されていないことから、その設計の大半が流用されていることも明らかである。

 これはある意味非現実的なスペックでデビューし様々な問題を引き起こしたThunder 2500をベースとしつつ、当時のOSやCPU市場の状況などを考慮して一般に受け入れられ得る現実的な仕様となるように折り合いを付けた改良版製品と見るのが妥当であろう。

 事実、こちらの製品ではインターリーブアクセスであるにもかかわらず充分な実効速度が得られていなかったメモリアクセスがメモリスペックに見合ったレベルまで引き上げられており、AGPも決して充分な速度ではないが前作よりは高速となっている。

 つまり、難物中の難物であったThunder 2500よりは余程実用的な製品に仕上がっていることになる。

 ServerSet III HEとHE-SLの最大の相違点はオーバー4GBメモリ空間へのアクセス機能とn-wayインターリーブ機能(HE構成時)、あるいはAGPサポート(WS構成時)を実現するためのMADP(Memory Addressing Data Pass)と称する拡張メモリコントローラの有無(注2)であるが、AGPサポートとインターリーブ機能を両立させるべくこのチップを変則的な接続で使用し、それがメモリアクセス速度の低下につながっていたと見られるThunder 2500の反省から、Thunder HE-SLでは新型ノースブリッジを搭載し、インターリーブ機能をノースブリッジに直接行わせるように変更(注3)し、更にこのチップにAGPを制御させることでMADPを省略して上述の性能向上を得るものである。

 もっとも、拡張スロットやオンボードデバイスには殆ど変更はなく、BIOSもノースブリッジ関連をのぞけば殆ど手つかずのまま流用されており、結果としてAGP回りのVGA-BIOSに関わる互換性問題やCPUのFSBに関わる64bit PCIスロットの動作クロックの制約、それにACPI非対応などはそのまま引き継がれている。

 このため、前作よりは多少扱いやすくなった(注4)ものの、それでも普通のPC/AT互換機用マザーボードと同列で取り扱うことの出来ない製品であることには変わりはない。

 もっとも、FSB133MHz対応品の入手が容易なSocket 370にCPUソケットが変更されたことの恩恵は非常に大きく(注5)、その実用性は前作に比して大幅に向上しているとして良いだろう。

 なお、このボードはオンボードSCSIコントローラとしてLSI Logicの53C1010-66を搭載するが、SCSI BIOSのバージョンがVer.4.18(注6)のままで放置されており、自力でVer.4.19以降のものにSCSI BIOSを差し替えるか、さもなくば別途高速なSCSIカードを挿さねば最近のUltra 160/320対応HDDで問題が生じる可能性があることを申し添えておく。


 (注1):ServerSet III WS搭載モデルもあったとされるが、Intergraph zx10のマニュアルに掲載されていたブロックダイアグラムを見る限りはHE・WS双方の機能的特徴が混在する結線であり、いずれとも言い難い仕様である。

 (注2):この他、SMP動作時の最大サポートCPU数がHE:4基、HE-SL:2基と半減している、つまりHE-SLではPentium III XeonによるQuad CPU構成はとれない。

 (注3):但しチップのピン数の制約などから12GB上限となり、インターリーブ機能も2way固定に制限された。もっとも現実的な問題として当時一般に使用されていたOSで4CPU構成の下でオーバー4GB空間にアクセス可能なのはWindows 2000 Advanced Server(2000年1月出荷開始)や一部のUNIX互換OS等しかなかったため、少なくともこの製品においてはそのスペックダウンの影響はほぼ皆無であった。そもそも32bit版のWindowsの場合、4GBの実メモリ空間と言ってもグラフィックコントローラやSCSIコントローラなどがメモリマップドI/Oとして上位アドレスを占有するためメモリを2.5〜3GB以上実装してもほぼ無意味であり、その意味ではDIMMソケットを4本に留めたこの製品の設計は妥当であったと言える。

 (注4):一応、AGP関連の理不尽な相性は多少改善されている。とは言え、TE5やFire GL4、あるいはWildcat 6110などのOpenGL用アクセラレーション機能に特化したカードでないと、オンボードSCSIコントローラのBIOSが見えないなど様々な不具合が出るのは相変わらずである。

 (注5):なお、Pentium III-SなどのいわゆるTualatinコアを搭載する各CPUにはそのままでは対応しない。

 (注6):SYM 21040-33の項でも記したが、53c1010系のSCSI BIOSはVer.4.19以降でないとおよそ実用にならない。


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