S2663 / TYAN


CPU Type:Socket 604 *2

Chip Set:E7505(MCH) + 82870P2(P64H2) + 82801DB(ICH4) / Intel

FSB Clock:400,533MHz

RAM Module Type:184pin 2.5V PC1600・PC2100 Registered DDR-SDRAM DIMM with ECC *2*3

Ext.Slot:8x AGP Pro50 *1, 64bit 133MHz PCI-X *1, 64bit 100MHz PCI-X *2,32bit 33MHz PCI *2

Ext.Onboard Device:53C1030 / LSI Logic (Dual Ultra 320 SCSI) , RC82540EM / Intel(1000base-T LAN),TSB43AB22 / Texas Instruments (IEEE1394) , AD1981A / Analog Devices (AC'97 Codec)

Power Supply Type:SSI EPS12V

Board Form:Extended ATX

BIOS: Phoenix BIOS


 2002年11月28日に発表された、Hewlett-Packardのxw8000と称するワークステーション向けにOEM供給された、Intel E7505(Placer)チップセット搭載Dual Socket 604対応マザーボード。

 そのため、OEM供給専用品であったが故に、TYANがリテール販売するマザーボード製品に冠した“Thunder”や“Tempest”あるいは“Tiger”などのTで始まる固有名は与えられていない。

 ご覧の通り、これは同一チップセットを搭載するS2665ANF Thunder i7505の姉妹品というべき製品で、メモリがRegisteredタイプ専用となってDIMMソケットが6本用意され、Power・Resetなどの制御系ピンヘッダやLEDピンヘッダ、それにフロントパネルI/O系などのコネクタが専用設計・独自レイアウトとなり、さらにI/Oシールド部のレイアウトが若干変更されている以外はほぼ共通の部品配置・アートワークとなっている。

 そのため、基本的な機能や性能はThunder i7505にほぼ準じるが、オンボードサウンドのSPDIF 同軸デジタルアウト端子は省略されており、シリアルポートは1ポートのみ実装となっている。

 xw8000そのものはSocket604対応のFSB533MHz版Xeonを搭載して販売されていたが、FSB400MHz版Xeonでも問題なく動作することや、メモリについてもPC3200タイプのECC Registeredメモリで正常動作する(注1)ことを確認した。

 ちなみに電源はSSI EPS 12V仕様であるが、何故か手持ちのZippy 700W S-ATA(PSL-6701P)を直接つなぐと起動せず、24ピン→20ピン・20ピン→24ピン変換ケーブルを間に挿入すると正常起動するという、極めて不可解な現象が発生した(注2)

 製品としては明らかにThunder i7505の上位機種(注3)であり、AGPスロットやPCI-Xスロットの挙動を含め、非常に安定した動作が得られている点で筆者としては高評価を与えたいところであるが、それだけにリテール販売では劣化コピーというべきThunder i7505を販売し、こちらをOEM供給に限ったTYANの施策には、同様にx4000(Thunder i860)・xw8200(Thunder i7525)・xw9300(Thunder K8WE)と、多少の改変はあれども本製品の前後の時期にHewlett-Packard社向けOEM品とリテール販売品で共通の基板を使用する製品を販売していたことを考えると疑問が残る。

 この時期、TYANはE750x系チップセット搭載マザーボード(SE7505VB2など)をIntelにもOEM供給していたと伝えられていることなどからすると、その辺りに対する政治的配慮も働いてリテール版でのUnbufferedメモリ対応となった可能性が考えられるが、メモリソケットが少なく使用上色々不便なUnbufferedメモリ対応は、正直大半のユーザーにとっては迷惑だったのではないだろうか。

 その意味では、本製品がリテール販売されず、ユーザーに選択肢が提供されなかった(注4)のは誠に残念なことであった。

 なお、基板上にも一切表記のない電源・リセットピンヘッダのピンアサインであるが、これはControl Panel Connectorの13-14:Power・15-16:Resetであることを筆者が入手した実機で確認している(注5)

 また、メーカー製PC/WSの宿命として、公式には出荷時搭載CPUしかサポートされていないが、BIOSを最新版(1.19)に更新すれば製品ラインナップに搭載機種が存在するPrestoniaやPrestonia-1Mだけでなく、その上位のPrestonia-2Mでも正常に認識・動作する(注6)ことを確認している。


 (注1):当然ながら、その動作速度はFSBに準じ、PC1600・PC2100相当となる。

 (注2):これは本製品がTYANのIntel系Dualプロセッサ対応マザーボードとしては初のSSI EPS 12V対応製品であったことから、いずれかのピンの処理が以後のSSI EPS12V規格のものと異なっている可能性が考えられるが、これが比較的早期のSSI EPS 12V規格対応製品であることや、PCI Expressの制定以降、12V系の電気的な仕様についての追加規格が次々に出されていたことなどを考え合わせると、その辺りの扱いが微妙に異なっている可能性も考えられる。

 (注3):むしろ、その仕様から判断する限り、本来こちらこそがThunder i7505の名を冠せられるべきであった。

 (注4):そのため、本製品に相当する機能を求めるユーザーの多くはSuperMicroのX5DA8/X5DAEを購入するほか無かった。

 (注5):断言は出来ないが実際の挙動と、他のTYAN製マザーボードやHewlett-Packard社製WSのControl Panelのピンアサインなどとの比較結果を考慮すると、恐らく間違いはないと考える。

 (注6):ただし、Prestonia-2M版Xeon 3.2GHzは普通のPrestonia版Xeon 2.8GHzあたりと比較して1基あたり約20Wの消費電力増(1基のTDPは92W)となるので、シングルはともかくデュアルで使用する場合は、恐らく最低でも550W以上、できれば余裕を見て600W以上の電源の使用が望ましい。筆者のテストした480W級電源ではシングルが精一杯で、BIOSのPOSTが終了しWindowsがHALを読み込んでデュアル動作を始めた直後にリセットがかかるという状況に陥る事を確認している。あるいは12Vへの給電容量の配分次第でこのクラスでも使える可能性はあるが、余裕がないのは確かなので、筆者としては600W以上の電源の使用を推奨しておく。


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