ELSA GLADIAC FX 930 (GD930-128AR) / ELSA JAPAN


Graphic Acceralation Chip:GeForce FX 5800(NV30:コアクロック 400MHz) / nVIDIA

RAM:GDDR2-SDRAM 128MB(800MHz 128bit))

Port:AGP (32bit 66MHz 8x 1.5V)

動作確認マシン:PC/AT互換機(S2885ANRF Thunder K8WS2663


 2002年11月にデビューしたGeForce FXシリーズの第1号モデルであるGeForce FX 5800(NV30)を搭載するAGP対応カード。

 GeForce FXシリーズはnVIDIAが2000年末に買収した3dfx社の技術を導入して開発されたグラフィックチップで、CineFXと称するアーキテクチャを採用し、プログラマブルシェーダーによるDirect X 9.0とCgコンパイラと呼ばれるシェーダプログラム用高級言語への対応を行っている。

 このGeForce FX 5800、コアクロックとメモリクロックをご覧いただければ明らかなように、この時代のチップとしては非常に高いクロック周波数(さらに上位のFX 5800Ultraではコア500MHz、メモリ1GHzに到達していた)で動作しているのだが、競合機種であったATI(現AMD)のR300系(RADEON 9700などに搭載)と同程度の集積度(トランジスタ数約1億2千万)でデータ精度を128bit(R・G・Bの各色とアルファチャネルそれぞれを32bit化。R300はそれぞれ24bitで96bit)とした結果、集積度の制約からピクセルシェーダーを構成するSIMD演算ユニットの内部構成を整数(16bit)精度8基あるいは浮動小数点(32bit)精度4基相当として使い分ける(なお、厳密にはこのアーキテクチャには従来のパイプラインに相当する独立した機構は存在せず、仮想的にこのように呼称しているに過ぎない。ちなみにR300は浮動小数点(24bit)精度のシェーダー8基で8パイプラインを構成する従来型のアーキテクチャである)構成とせざるを得ず、浮動小数点精度のデータを処理する際のピーク性能がR300と比較して半分に低下する(R300では精度が8bit分低下するが、8基全てが浮動小数点精度のデータを扱えるので、同クロック動作であれば4基しか扱えないNV30の倍の性能が得られる。ちなみに、開発当時の状況では32bit精度を使い切るゲームソフトはほぼ皆無であった)という弱点を抱えていた。

 このため、このチップは16bitカラー環境で使用する場合にはR300と拮抗するか場合によってはこれを凌駕する性能を発揮するが、24/32bitカラー環境で使用すると途端に性能が半分近くにまで低下する(そういえば3dfxのVoodoo Bansheeにも同様の傾向があった。あるいはこれは3dfx系のデザインの特徴なのかも知れない)という、悲惨といって良い状況を呈し、市場ではまともに支持されなかった。

 しかも悪いことには高クロック動作の代償として大消費電力・高発熱となっており、このため電源はAGPスロットからの供給では足りず別途5/12V電源の供給が必要(ただしこれはR300搭載カードでも同様であったが)となり、冷却についてもその発熱量の過大さゆえに2スロット占有形の高速シロッコファンによる強力な冷却システムが標準搭載されている(上位のFX 5800UltraではFX Flowと称する外排気タイプの更に強力なモデルになっている)のだが、これは一般市場向けグラフィックカード用クーラーとしては史上類を見ない程の爆音仕様で、こういった仕様上の敷居の高さもこのカードの不人気に拍車をかけた。

 こうした事情もあってこのカードはビジネス的には失敗作と見なされ、一時はnVIDIAのサイトでもその存在を抹消されるなどの冷遇を受けた。

 もっとも、集積度の制約を受けたが故のピクセルシェーダー構成を除けばその基本的なアーキテクチャそのものには大きな問題点はなく、AGPやPCIバスにネイティブ対応することもあってか、下位のFX 5200搭載カードが2008年の終わりになってもなお、現行製品として市販され続けるほどの商品寿命の長いシリーズともなっている。

 また、爆音ばかりが殊更に強調される冷却システムだが、これも以後のグラフィックカードにおける2スロット占有クーラーの一般化を予告するものであったと言え、さらに爆音の源であるシロッコファンについても、ライバルR300系チップ搭載のグラフィックカード各種が比較的静音ながら耐久性に欠けるファンを搭載し、短期間で故障するケースが少なからず存在したのに対し、こちらはデビューから5年以上を経過してなお問題なく使用できており、長い目で見た場合、果たしてどちらが正しかったのか、という話になろうかと思う。

 なお、さすがにnVIDIAも思うところがあったのか、後継のNV35・NV38ではメモリインターフェイスがDDR-SDRAMの256bit構成に戻されて実行データ転送帯域の大幅拡大が図られ(NV30の時点では、DDR-SDRAMはメモリクロック700MHz以上の実現が困難と見なされていた。NV30で128bitバス化という性能上のリスクを冒してでもDDR2-SDRAMの採用に踏み切ったのはこのためで、NV35が850MHz(FX 5900Ultra)、NV38でも950MHz(FX 5950)、とメモリ単体の転送レートはNV30よりも低下している)、さらに問題のSIMD演算ユニットを含めた全体設計の見直しで32bit精度データ処理時の性能を大幅に向上、これらによりFX 5900UltraはR350搭載のRADEON 9800PROと同等、あるいは高負荷時にはこれを凌駕する性能発揮が可能となっている。

 いずれにせよ、このGeForce FXシリーズで得られた結果は次なるGeForce 6/7シリーズで正しくフィードバックされ、大きな成果を得ている。

 その意味では、このカードに搭載されたGeForce FX 5800が以後のnVIDIA製グラフィックコントローラの基礎となった、重要な機種であることは間違いない。


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