Viper V330 / Diamond Multimedia
Graphic Acceralation Chip:RIVA128 (Nv3) / nVIDIA
RAM:SDRAM 4MB(100MHz 128bit)
Port:AGP (32bit 66MHz 1x 3.3V)
動作確認マシン:PC/AT互換機(GA-586SG、TI5VG+、GA-686BX、SY-6BA+)
1998年に購入した、私にとって初めてのAGP対応カード。
画質的には少々暗めなのが気になったが、当時としては破格の突出した3D描画性能とかなり高速な2D描画性能を兼ね備え、しかも相当に安かった、歴史的傑作である。
正直なところを言えば、Diamond Multimediaのグラフィックカードについては、どれも画質的には好感が持てない例が多かったのであるが、不思議とこのカードについてはそういう苦情は出なかった。
カード上の空きパターンの多さや、CanopusやELSAといった独力で基板を起こせた会社以外の各社製nv3搭載カードとの類似性から考えると、これは最近では殆どのメーカーがそうなってしまった様に、nVIDIAのリファレンスカードをそのまま丸写しで生産されたものであった可能性が高く、それが画質をいつものDiamond Multimediaのスタンダードではなく、リファレンスカードが実現していたある一定のクオリティにまで押し上げていたものと考えられる。
これに搭載されたRIVA 128(Nv3)は、そのポリゴンの扱い方の特異さ故にどちらかと言えば際物扱いをされる事の多い(実際際物なのであるが)Edge 3D(Nv1)の直系の子孫に当たるチップであり、PC-98NXへの大量供給(Milleniumといい、これといい、良いグラフィックチップを見抜き一気に大量採用してのけるNECの判断力の良さは流石である)をはじめとするこのチップを搭載したカード・PCの成功は、当時は未だ無名のベンチャー企業に過ぎなかったnVIDIAの名を天下に知らしめた。
技術的にはAGP規格が策定される寸前にコアの論理設計が完了していたらしく、先行した#9のRevolution 3D同様にAGP 1.0には一応対応はしているもののAGPの機能を十全に利用出来ているとは言い難い。
但し、殆どそれに匹敵する機能がPCI版の段階で実装されていた為に他のチップよりは余程AGPの機能が生かせていて、3Dゲーマー中心に結構高い評価が得られた。
只、内蔵RAMDACの性能はそのドットクロック周波数の高さの割に今一つで、特にある条件下での3D表示画面が極端に暗い、という事で一部のコアな3Dゲーマーには不評であった。
加えて言えばチップの設計上の制約からVRAM容量が4MBに制限されtた為、高解像度フルカラー環境を求めるハイエンド層には受け入れられず、より大きな成功の機会を逸する事となった。
これは設計時点でその性能を約束した高クロック動作のSDRAM(そう、この時期以降ヴィデオカードのRAMにはデュアルポートVRAMやEDO DRAMではなくSDRAM/SGRAMが一般的に使用されるようになっている)チップ1枚あたりの容量が、経済的に実装可能な範囲で8MBを構成するには不足していた(そのままで8MB構成にすると実装上信号線長が増えてドライブ回路等に問題が出る)為と考えられ、性能を優先して容量を諦めたその割り切りがあればこそ、コンシューマー市場等であれ程の普及を見たのも確かではある。
逆に言えば、この時期に8MB以上に対応したこの系統のチップが出荷されていれば、確実にMatrox等のハイエンドメーカーは壊滅的打撃を被っていたという事であり、実際このチップの登場以降グラフィックチップ市場は大きな変化の波に飲み込まれていったのである。
ちなみにそれでは、という事で出荷された、このチップのRAM 8MB拡張とAGP完全対応を実現した修正版であるRIVA 128ZXは当初予想された程の成功を収める事はなかった。
何故なら、その出荷開始直後(ZXの出荷開始から1ヶ月も間隔が空いていなかった)に画期的な後継モデルであるRIVA TNTが発表され、この種の製品市場を牽引/誘導するコアユーザー達がそれを待って買い控えしてしまった為であった。
なお、このチップの子孫に当たるGeForce 256 (Nv10)は前作のRIVA TNT2 (Nv5) / TNT2 Ultra(NvULTRA)を2つ内蔵してジオメトリエンジンを付加した様な設計であるが、そのRIVA TNT2の基になったRIVA TNT自体がこのRIVA 128(Nv3)を2個内蔵して高速化を図ったモデルであった事を考えれば、単純に見てNv10=(Nv3)*2*2+αという事になり、実に1チップで4つのRIVA 128を内蔵しているのを上回る集積度を実現している事になる。
こう書けばnVIDIAの開発方針は一見単純且つ乱暴な方法を採っている様に思えるが、逆の見方をすればこれは最初のコアとなったチップの基本設計が余程良くなければとれない手法であって、それがとれるという事実それ自体が逆説的にこのRIVA 128の設計の卓越ぶりや先進性を実証するものであったと言えよう。
一応、当ページの内容の無断転載等を禁止します