RADEON HD5850 (HD-585A-ZNFC) / XFX
Graphic Acceralation Chip:RADEON HD5850(RV870(Cypress):コアクロック725MHz) / Advanced Micro Devices
RAM:GDDR5 SDRAM 1024MB(4,000MHz相当 256bit)
Port:PCI-Express 2.0 (x16)
動作確認マシン:PC/AT互換機(S4985G3NR Thunder n4250QE) , S2895A2NRF Thunder K8WE
2009年9月末に発売が開始された、Direct X 11対応としては最初の量産グラフィックチップであるAMD(旧ATI Technologies)のRADEON HD5850を搭載するカード。
この開発コードCypressとして知られるチップは、型番としては前世代のRADEON HD4850(RV770)を搭載するカードの後継機種という認知であったが、実際には上位のRADEON HD5870でシェーダープロセッサ数1,600(注1)、レンダーバックエンドは32基、とRV770と比較してことごとく倍増となっており、チップの製造プロセスを55nmから40nmにシュリンクしたにもかかわらず、ダイサイズが334平方mmとRV770比で一回り以上大きく(注2)なっている。
しかし、その一方で消費電力削減のために製造プロセス・回路設計双方について様々な工夫が凝らされており、公称最大消費電力はRADEON HD4870の160WやRADEON HD4890(注3)の190Wに対してRADEON HD5850で151W、RADEON HD5870で188W、と内部機構の倍増や性能の向上から考えると劇的といって良い低減を実現している。
しかも、アイドリング時の消費電力低減にも留意して設計されており、アイドリング時消費電力27W、しかもCrossFire Xで2枚挿ししている場合は、通常時にセカンダリGPUのコア・メモリの両クロックを停止する、つまり実質的にその機能を完全停止させてしまうようにもなっているため、実用上の消費電力は前世代下位のRADEON HD4850と比べてさえ、大幅に低くなっている。
3D描画性能については各機能ブロックの倍増と内部ロジックの改良が大きな効果をもたらしており、下位機種であるこのRADEON HD5850でさえ、前世代最強とされたRADEON HD4870 X2(注4)に迫り、RADEON HD4870はおろかRADEON HD4890でさえ軽く引き離すという空恐ろしい性能を発揮する。
また、機能面ではDirect X 11への対応だけでなく、マルチディスプレイ機能の充実が図られており、RADEON HD5870ではDisplayPort端子を6基搭載するRadeon HD 5870 Eyefinity 6 Editionなる派生モデルが存在した他、通常モデルではRADEON HD5850/5870共通でDVI-I(注5)*2・Display Port*1・HDMI 1.3(注6)*1と合計4組の映像出力端子を実装し、それぞれの端子ごとに幾らかの制限はあるものの、3画面同時出力を標準でサポートしている。
このRADEON HD58xx系はライバルであるnVIDIAのGeForce系チップのDirect X 11対応が当初予定より半年以上遅れ、しかもようやく発売されたGTX470・480の上位2機種で、性能はともかく狂気じみた法外な消費電力と高発熱(注7)がネックとなって、まともな勝負にならなかったため、発売後1年近くに渡って当初の販売価格が維持されるという驚くべき事態となった。
本シリーズの価格急落は、RADEON HD6850・6870、つまり本シリーズの一方の後継機種とされる新シリーズが発売されたことに伴うもので、その間、ライバルであるGeForce 4xxシリーズで幾つも新製品が発表されたにもかかわらず、こちらの価格が大きく下がることは遂になかった。
それは、言い換えればこのCypressの完成度が突出して高く、さらにそれに対抗すべきGeForce 4xxシリーズがどれもこれもひどく魅力に欠けていたということである。
筆者は後継機種登場後、価格が下落してから購入したが、その性能には非常に満足している。
(注1):下位モデルであるこのRADEON HD5850では、恐らく歩留まり確保のためにSIMDエンジンを2基無効化してシェーダープロセッサ数が5*16*2=160削減されるため、シェーダープロセッサ数1,440となる。
(注2):RV770のダイサイズは256平方mm。なので、製造プロセスのシュリンクに伴う各トランジスタのサイズがシュリンク比に従って縮小されると仮定して計算をした場合、Cypressのトランジスタ数はRV770比で2.4倍以上に増加していることになる。
(注3):RV770のマイナーチェンジモデルで、シェーダープロセッサ数はRV770と同一だが、コア・メモリ共に動作クロック周波数の引き上げを可能とすることで、性能の底上げを図った。
(注4):RV770を2基搭載したモデル。
(注5):いずれもHDCP対応かつデュアルリンク仕様となっており、最大解像度2,560*1,600での出力をサポートする。
(注6):Deep ColorとxvYCCの2つの高色域形式をサポートし、内蔵サウンドコントローラからの高ビットレートでのデジタル音声出力をサポートする。ただし、HDMI 1.3の特徴の一つである最大解像度2,560*1,440での出力はサポートされておらず、最大解像度は1,920*1,200止まりとなる。
(注7):一部でマザーボードの給電系を焼損させた、と報じられるほどのひどさで、その排気は火傷しそうなほどに熱い。
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