CHANGE-AGP2PCI / 玄人志向


Type:AGP (32bit 33/66MHz 3.3V)−PCI(32bit 33/66MHz 3.3/5.0V)変換アダプタ

動作確認マシン:PC-9821Ra300/M40、ProLiant ML330

装着グラフィックカード:GV-AP64D-H RADEON 8500 Deluxe / GIGA-BYTERevolution IV 16MB SDRAM AGP / Number Nine


 玄人志向が“キワモノシリーズ”と称する実験的要素の強いシリーズの一環として発売した、ロープロファイルで3.3V対応のAGPグラフィックカードをPCIバスで利用可能にする為の変換アダプタ。

 ハードウェア的には、安物LANカード並の細長いPCIバス対応基板のPCIバスカードエッジコネクタと反対側に基板を挟み込む格好の芸術的配線(AGPコネクタは配線のワイヤだけで基板に結合されている)でAGPコネクタが、基板中央のブラケット寄りにINT A〜Dを選択する為のジャンパが、基板上のバスライン上に2つのバッファIC(P15C 16211Aという表記がある)が、基板上のブラケットと反対側の端に電源コネクタ(通常のハードディスクなどに用いられているのと同形のもので、5Vを給電する為に実装されている)が、そうして基板上の長辺の両端部に降圧用三端子レギュレータが各1個(ちなみにこれらの周辺には外部給電とPCIからの給電を選択するジャンパが用意されている)取り付けられており、得られる機能から想像するより遙かにシンプルな構造の製品である。

 これは元々はELO氏と仰る方が自分の必要から開発したものを玄人志向の「ユーザープロデュース」に持ち込んで製品化されたものの由で、当初はPC-9821のRa??・Xa??/W・Xc??等内蔵のTrident製TGUi9682+簡易版PEGC(公式名称が未だ不明の為こう記しておく。チップ名はμPD95177GN)搭載の通称「抜いちゃ駄目カード」に寄生する形であった様だが、流石にこのままでは製品化出来ず、独立したPCIカード化とAGPカード側駆動電源の「PCIから給電」・「外部電源コネクタから給電」の2通りの方式の選択可能化を含めた再設計が行われ、ロープロファイル仕様のAGPグラフィックカードであればこのアダプタを装着した状態で通常のPCIグラフィックカードの収まるスロットにそのまま差し込める様に寸法的な工夫が施され、あるいは動作の安定を期してバスライン上にバッファICが挿入されるなど、かなり手が入れられた上での発売となった。

 元々AGPはOS側サポートの問題から、Windows NT4.0等の非サポートOSでも動作可能な様に、OS側で有効とされない限りPCIデバイスとして振る舞う実装になっており、実際にPCI Rev.2.1準拠の64bit 66MHz PCI等と同じプロトコルで動作する。

 これはBIOSに依存するDOS以外のOSにおいて、未対応のグラフィックコントローラであるとしてAGPデバイスが認識されないという事になると、ソフトウェア互換の点で非常に困った事になる(特に古いUNIXを動かしているマシンではマシンのリプレースが不可能になる危険さえある。ちなみに、サーバ用マザーボードで未だに古いRage IIc / XLオンボード搭載の製品が多いのは、機能的にそれで事足りるということもあるが、それ以上にドライバの供給の問題によるところが大きい)危険性が高い為であるが、逆に言えばこのモードで動作する限りはDIME(DIrect Memory Execution)やサイドバンドアドレッシングなどのAGP固有機能は殺されている訳で、理屈上AGPカード側への給電(AGPグラフィックカードは3.3V(AGP 1.0)、1.5V(AGP 2.0)、あるいは0.8V(AGP 3.0)で動作し、PCI Express登場より前に開発された物は大抵3.3Vに対応しているので、それで事足りる)等の問題さえクリア出来ればAGPグラフィックコントローラをPCIバスに接続出来る事になる。

 前置きが長くなったが、これは事実上AGPグラフィックカードの恩恵を蒙る事が出来ないPC-9821シリーズのPCIバス搭載マシンの救済策として開発された製品であり、どのマシンで利用するにしても様々な制約や障害を乗り越える為に多大な努力を要する(そもそも玄人志向自体が「『装着すれば動作するもの』でない」と明言しており、それ故の“キワモノ”扱いなのである)事と、本来66MHz駆動のAGPデバイスを33MHz駆動する関係で思った程の性能が得られない傾向がある為、、筆者としては手放しではお勧め出来ない。

 というかそれは、どうせ苦労をするならば現在でもなお細々と製品化され続けているPCI版のグラフィックカード(バス性能の関係でパフォーマンスが充分得られない最上位チップ搭載カードはまず出ないが、それでも例えばGeForceFX5200/5600クラスのチップならば搭載製品を見つける事が可能である)の方がまだ得られるものが大きいのではないか、というのがこの製品を手にした筆者の正直な感想である為で、無論このアダプタのお陰で98のグラフィックカードの選択肢が劇的に拡大された事には非常に感謝しているし、これなくしてはCHANPON ZERO 2/3-PCI(PCIスロットに(AGPカード*1)+(PCIカード*1 or 2)を挿す事を可能にするアダプタで、PCI to PCIブリッジとしてHiNTのHB1-SE33を搭載) はあり得なかった訳だから、これが重要な役割を果たした製品である事は良く理解しているつもりなのだが・・・。

 なお、筆者の実験した限りではPC-9821Ra300/M40にロープロファイルでないGV-AP64D-H RADEON 8500 Deluxeを挿して諸々の設定を行った上で(ルーフカバーを取り付けずに)起動してみたところ、確かにPnPでデバイス認識され、ドライバインストールから再起動後の動作まで確認できたから、条件さえ満たせばこれは非常に有用な製品であるというのも確かである。

 但し、PC/AT互換で利用する場合、Revolution IVの様にグラフィックチップのPnP機構が自分はAGPに接続されていると誤認識するケースもあるので、一概に有用とは言えない(ちなみにこのケースではブートは成功したがACPI BIOSの挙動が矛盾する為にACPI関係の動作不良でWindows 2000が起動しなくなってしまった。只、ACPI無効にしてHALもそれに合わせたらWindows 2000はちゃんと起動する様になっており、かなり微妙な問題であったと考えられる)。

 また、このアダプタはPC-9821シリーズでもPC-9821RvII26/N20とPC-9821RsII26/B40についてはPC側搭載チップセット(CHAMPION 1.0/R.C.C.=Server Set I/Server Works)の関係で残念ながら使用不能であるとの報告が上がっており、またCompaq ProLiant ML330(のマザーボード。ちなみにServer Set IIILE搭載)での動作実験の際にACPI BIOSが誤動作してWindows 2000/XP等の起動時にエラーが発生している(ACPI無効にして標準PCのHALを選択すると一応動作したが、それでは意味が無いだろう)事から、このアダプタを併用した際のAGPカードのIRQ取得メカニズムの挙動に何らかの問題を引き起こす要因があって、それがServerWorks(旧RCC)製チップセット搭載機の場合は表面化しているものと推測される。

 AGPスロットがあっても「使えない」事で定評のあるServerSet系でこそ動いて欲しいアダプタなだけに残念な話(ちなみにCHANPON ZERO 2/3-PCIの場合はブリッジを介しているお陰でこの症状は発生しない様だ)なのだが、このあたりのチップセットでの利用を検討しておられる方には特にご注意願いたい。


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