IBM 5576-002 (5576 Keyboard-2) / 日本IBM
日本IBMがPS/55出荷開始にあたって用意した、最初のキーボードの一つ。
ちなみに日本IBMの純正DOS/Vでは、1992年に出荷開始されたPC-DOS Ver.5.02/Vまでこの5576-002を含むIBM純正キーボード4機種(5576-001/002/003/A01)しかサポートしていなかった関係で、この製品にはその独特の配列をコピーした台湾製互換品が少数ながら存在した事が知られている。
姉妹機種である5576-001同様に、この機種も製品管理上は5576-002と呼ばれているが、本体裏側のラベルには5576 Keyboard-2と記載されており、その名で呼ばれる事も多い。
某中古ショップで「無保証ノーチェック品\300」で売られていたジャンクキーボードの山の中から発掘して購入。
幸運な事には完動品であった。
キー配列は106のキーで構成されるJIS配列準拠仕様であり、5576-001キーボードとは異なり米国IBMのPS/2用101配列キーボードとの整合性を強く意識した(但しキースキャンコードは組み合わせが全く異なる部分が結構多いし、そもそもJISとASCIIでは記号のキー割り当てが全く違う)レイアウトとなっているが、現行のOADG 106キー配列、つまりこの製品の直系の後継機種である5576-A01キーボードの配列とは日本語処理に関わる部分の処理が異なっており、Altに相当するキー(“前面キー”と刻印されている)が右側にしかないなど、先行モデル故の試行錯誤と模索の跡が色濃く見える。
基本構造は5576-001との共通点の多さ(専用接続ケーブルを含めて共通)から考えて、恐らく同一の設計チームが手掛けたものと推測され、そのキースイッチも5576-001と共通設計の非常に凝った構造のメカニカルスイッチである。
このキーボードも機構部はアルプス電気によるOEM供給品で、やはり5576-001同様のファンクションキーの部分がフラットでその直下に折れ目があってそこからスペースキーのある最下列までなだらかに湾曲する、シリンドリカル・ステップ/ステップ複合スカルプチャとでも言うべき、複雑で高価な基板(こちらもガラスエポキシ製)が採用されている。
コントローラも5576-001同様Intel純正のi8052AHで、通常の106/109キーボードならば2が標準のキースキャンコードセットは、3がデフォルトとされている。
本家日本IBMの製品だが、公式にはやはりPS/55専用という扱いで、最新のOADG標準規格からは外されてしまっている。
但し、ある意味特殊仕様であった5576-001とは異なりそれなりに普及した製品であったのでOS側のサポートはまずまずで、公式サポートに限ってもWindows 3.x→Windows 9x系のみならずWindows NT 3.x→4.0までフォローされ、Windows 2000やXPでさえ非公式ながらドライバ(実体はキースキャンコード変換テーブル)がシステムフォルダに黙ってインストールされている。
但し、実際にこのファイルをドライバとして使用する為の定義は標準のkeyboard.infには記述されておらず、Windows 2000・XPにおいてこのキーボードを利用するに当たってはレジストリを直接操作するか、それとも筆者の様に5576AX.infの様なinfファイルを書くかする必要がある。
キータッチ自体は何しろ5576-001と共通のメカニカルスイッチ搭載なので非常に秀逸であり、キークリック音が特徴的で耳につくという欠点さえ我慢できるならば、私の知る限りでは最上の部類に入るキーボードである。
なお、このキーボードもリコーへのOEM供給版が存在し、それ故にIBMのロゴが入る部分が妙に横に長くて余白が設けられている。
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