Apple Extended Keyboard [M0115・0115J] / Apple Computer


 M0115Jの1枚目を某オークションで入手し、中古店で更に2枚入手した後、M0115を中古で1枚購入した。

 これは1986年に開発されたApple Keyboardの拡張配列版で、別名を「拡張キーボード」ないしは「拡張キーボードI」と言う。

 その基本的な機構部の構造やデザインは同時開発の姉妹モデルであるApple Keyboardに準じるが、キー配列自体はむしろ当時のライバルであるIBM PC/ATの101キーボードとの類似性が強く、SPACEとその両脇の「Alt」の間に「Command」キー(リンゴのマークのキー)がそれぞれ挿入されている事と、テンキーに「=」が追加されて2キー分の大きさがあった「+」キーが1キー分のサイズに縮小されている事、そしてMacintosh特有の「Power」キーがテンキーの上に追加されている事を除いては基本的に同じとなっている。

 但し、「PRINT SCREEN」・「SCROLL LOCK」・「PAUSE」の3キーはF13〜F15がメインとして割り当てられていて、このキーボードをADB-USB変換アダプタを介してPC/AT互換機に接続した場合、この3つのキーは動作しないから、この辺のキーアサインは通常の101とは異なっている様だ。

 なお、コントローラはIntel系の組込用CPUである80C49HC200(NEC製)である。

 当然というかこれもALPS製メカニカルスイッチ(軸足の成型色はオレンジ)を搭載した、同社のロゴの入った純正基板を内蔵しており、キータッチはちょっと特徴的で微妙なクリック感があるが非常に良好である。

 何より、れっきとしたメカニカルスイッチ(それも内部に板バネを2枚組み込んだ、かなり複雑な設計の機構部を持つ)でありながら、打鍵音がかなり静かなのは注目に値しよう。

 だが、このキーボードで真に評価すべきは、その傑出したキータッチではなく、実は簡潔且つ流麗なその外装デザインの見事さにこそある。

 同時期のMachintosh本体同様にドイツのフロッグデザインが手がけた、“Snow White”と呼ばれるデザイン言語に従うシンプルかつスクエアなその造形は、直線部の間に緩やかなRを挟んだ平面上にキーを配しつつ、その上部に何もない大きな余白を設ける事である種の緊張感と均整美を与える事に成功しており、敢えて左下にさり気なく置かれた六色林檎の旧ロゴの配置を含めておよそ無駄も隙も見当たらない非常に単純明快な、そして誕生から18年を経てなお鮮烈さを失わない、その力強く研ぎ澄まされたデザインワークの見事さには只々脱帽するばかりである。

 只一つ惜しむらくは、これは同時代のApple製品全般について言える事なのだが、外装ケース及びスペースキーに採用されたプラスティック樹脂が経年変化で変色し易い事で、この点だけはIBM 5576-001/002に及ばないのが何とも残念である。

 このキーボードは初期ロットとそれ以降で構造に微妙な相違がある様で、パンタグラフの向きが逆のスイッチを搭載した製品が存在する。

 ちなみに、M0115とM0115Jの相違点はキートップのかな表記の有無のみである。


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