AV-511 / Audio Excel


接続バス:PCI Bus (32bit 33MHz 5V)

サウンドコントローラ:CMI8738/PCI / C-Media Electronics

対応機種:PC/AT互換機

動作確認マシン/マザーボード:PC-9821Xv13/W16MS-6163S1837UANG ThunderboltSUPER PIIIDME


 2000年4月に購入した、廉価版PCIサウンドチップの代名詞的存在であるC-MEDIA製CMI8738/PCIチップを搭載する超廉価サウンドカード。

 メーカーのAudio Excelというのは、実は量産安売りマザーボードで有名なChain Techの別ブランドである。

 これはとにかく安価(実売で\2,000前後)なのにアナログ4ch出力対応、更に44.1KHzのSPDIF出力及び各周波数自動同期のSPDIF入力をサポート、という欲張ったスペックの製品で、実はそれに騙されて買った様な代物であった。

 CMI8738/PCIという石はあのART-833 3Dに搭載されていたSound Pro 8330の流れを汲むチップで、本来は低価格マザーボードにオンボード搭載するのがメインで開発された為、単純明快な回路構成とシンプルなドライバによる(制限は多いが)軽い動作が身上だった筈なのだが、コストダウンその他の為にAC'97に対応しない(そもそもCodec相当の機能をチップに内蔵している)事から自然と44.1KHzSPDIF出力が可能となり、44.1KHzオンリーで基本的には48KHz信号の入力に対応しないMDレコーダーユーザーの多い日本市場で大いに受け入れられ、遂にはYMF-7x4亡き後のサウンドカード市場でアナログ出力6ch対応化されたCMI8738PCI-6CH LX/MX/SXが主力商品として扱われるという所まで成長した、一種の出世魚チップである。

 実はこのカードも結構あちこちにOEM供給されているらしく、WinFast 4XsoundやMD MATE等といった製品がこのカード+各種ブラケットという構成で販売されている。

 その関係でこのカードの場合、ブラケットと繋ぐ為にあれこれまとめて配置されたピンヘッダの指定ピンだけ用いてSPDIF入出力に接続する(SPDIF出力についてはカード本体のブラケットにも同軸出力が用意されている)となっている。ただし、本来専用ブラケットで繋ぐのが筋の設計な設計の上、ピンレイアウトにつなぎ間違い防止の配慮が見あたらず、場当たり的に該当ピンでの接続を指示されているものなので正直ちょっと感心出来ない。

 こんなカードだがアナログ出力の音質は意外と悪くなく、件のSPDIF入出力も一応きちんと動作したのだが、実はこのチップにはPCM出力の同時発音数が恐ろしく少なく、前の音にオーバーラップして次の音を発音したら前の音がそのまま途切れてしまう、という悪癖があり、しかも動作時のCPU負荷率が結構高く、かてて加えて内蔵シンセがART-833 3D以来の宇宙的メタリックサウンドというあまりにも素晴らしい代物だったので、比較的短期間で売却と相成った。

 このカードのSPDIF出力は普通に使う分にはそれなりの動作が期待出来たが、どうもCPUに対する依存度が高いらしくて負荷率の急激な変動に極端に弱く(実際CPU負荷がYMF-7x4系やEMU10Kx系と比較すると極端に大きい)、低負荷動作時にはクロック精度に厳しいEsoteric D-2でも正しく同期するのに一瞬でも高負荷がかかると途端に同期が外れてしまい、とても安心して使える代物ではなかった。

 前述の通り、このシリーズのチップはYMF-7x4亡き後の市場で、SPDIF入出力対応を武器に“鳥無き里のコウモリ”よろしく我が世の春を謳歌していた(もっとも、その後VIA/IC EnsembleによるENVY24シリーズの急速な展開で、ミドルレンジ以上の市場からはあっという間に一掃された)が、その自慢のSPDIF入出力に斯様な問題が存在していることには特にご注意願いたい。

 筆者の感想としては、このカードのSPDIF入出力は少なくともC-Media Electronicsから提供されているリファレンスドライバで使用する限りはおよそ優秀とは言いがたい様に思われる。

 これについてはCreative製品同様、ドライバ側の不出来に起因する可能性が非常に高い(M-AUDIOが発売していたDIO2448は、同じCMI8738搭載であるにもかかわらずSPDIF入出力の安定度や動作時のCPU負荷率の低さが抜群で、しかも24bit入出力まで対応していた。基板自体は他の製品と(無論、搭載部品のグレードには天と地程も差があるが)回路的に違う所が特に見当たらなかったので、これはやはりドライバの出来の差によるものだろう)のだが、一般的に考えてチップメーカーあるいは当該カードベンダー以外の提供するドライバは原則的に利用すべきではない(まぁ、kX Projectの様な例外もあるにはあるのだが)ので、現状では純正ドライバによる評価しか出来ないし、またすべきではないだろう。

 そんな訳で、純正ドライバを使う限りは値段相応以上の出来ではない、というのがこのカードに関する筆者の感想である。


フレーム再表示 インデックス

一応、当ページの内容の無断転載等を禁止します