PC-9801-118 / NEC
接続バス:C Bus (16bit)
サウンドコントローラ:YMF297 (OPN3) / YAMAHA + CS4231 (WSS) / Crystal Semiconductor
対応機種:PC-9800シリーズ
動作確認マシン:PC-9821As2/U8W,PC-9821Xa9/C8,PC-9821Xa7/C4
Windows 95登場に合わせて1995年の秋にデビューした、NEC純正では最後のCバス対応サウンドボード。
マルチタスク化の進んだWindows環境、特にCPUに高負荷のかかる状況で、致命的と言って良い音飛びが多発して問題となった先代の標準サウンドボードであるPC-9801-86の後継機種として、26/86ボードとのある程度の互換性を維持(ただし公式にはDOS上での動作を保証していない)しつつもWindows環境での利便性に重点を置いて設計されており、故にPlug and Play(PnP)対応、Sound BLASTER形式のジョイスティック/MIDI入出力ポートとWave BLASTER形式のMIDIシンセドーターボードコネクタの実装、Sound BLASTER系サウンドカードで多用されるYMF262-M(OPL3)と86ボードのYM2608B(OPNA)の双方の機能(厳密にはOPNAではなく、その後継で簡易版のYMF288(OPN3-L)相当の機能なのだが)を併せ持つYMF297(OPN3)FM音源チップの搭載、それにMate X/CanBe以降で標準となったWindows Sound System(WSS)互換のPCM音源の併用と、全面的にPC/AT互換機の流儀が持ち込まれている。
音質的には86ボードほどはノイズが目立たないが全体的に「薄い」音で、Crystal Semiconductor製WSS-PCM互換チップの特徴を明瞭に示している。
その基本設計は先行したCanBeことPC-9821C??系の中期のモデルのサウンド機能(但しこちらではFM音源としてYMF288-S(OPN3-L)が搭載されていて、サウンドBIOSが利用可能となっている)の機能強化版とでも言うべき性格を備えている(そしてその変更ポイントはこのボード登場以後のCanBe系のサウンド機能にフィードバックされた)が、色々欲張ったのが悪かったのかこのボードはPnP機能の実装にかなり問題があり、WSS音源を標準搭載するMate X/RやValue Star、あるいは98Pro等では極力そちらのWSS機能を優先(これはリソース取得時の競合阻止や、本体内蔵スピーカー及びマイク入力端子の動作との兼ね合いと考えられる)する設計故に、搭載機種によって予め(それもPnP対応/非対応やMIDIインターフェイスの有効/無効などの切り替えを含めて)ジャンパ設定を変えて挿さねばならないという、およそPnPの理念から遠く離れた設計となってしまっており、しかもBIOSの関係でValue Starの場合はPnPモードしか選べないなど、理不尽極まる仕様が目立った。
確かにWindows、特にシステムが基本的に32bitコード化された95/NT以降で使う分に限っては、(純正故にドライバサポートが手厚いこともあって)このボードはPC-9801-86やSound BLASTER 16 for PC-9801よりも便利だが、その反面占有するリソースの数が尋常ではなく、またDOS環境での86ボードとの互換性に色々厄介な問題(FM音源についてはPnPモードでは鳴らないことが多々あり、又鳴っても初期化に失敗して誤動作するなど散々な有様であるし、PCMについても回路設計が根本的に異なるので互換性が全く無い)が発生したため、Windows/DOSの双方で利用するユーザーにとっては厄災以外の何物でもなく、このボードと類似した仕様でありながらその欠点をほぼ完全にフォローした、Q-Vision製Wave Starシリーズの出現によってこのボードの存在価値は事実上消滅した。
実際、機能的に完全に競合する上に86ボードとのソフトウェア的な互換性(無論サウンドBIOS必須のソフトはNGだが)も高いWave Starが存在する状況では、このボードを敢えてチョイスして苦難の道を歩むべき理由は何処にも無く、事実Wave Star登場以降の中古市場でのこのボードの価格の暴落ぶりがその事実を裏付けている。
よって、Wave Starの入手が困難になった現在でさえ、このボードはWindows限定、それも主としてサウンド機能を利用する目的で98を使う、という非常に奇特な条件を満たす方以外には到底お勧め出来ない製品であることを明言しておく。
もっとも、まるで取る所の無いこのボードにも一つだけ功績があって、これまで非公式な「事実上の業界標準」であるに過ぎなかったRolandのMIDIインターフェイスであるMPU-401と互換性を持つMIDIインターフェイス(但しUARTモードのみ)がこの純正ボードで実装された結果、以後のPC-9800シリーズ用OSではこのインターフェイスの為のドライバが当然に用意されるようになったことが、MPU-PC98IIやS-MPU/PCといったRoland製MIDIインターフェイスボードの利用者にとって非常に大きな福音となったのは事実であり、この点については評価しておかねばなるまい。
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