MZ-100

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 オリジナルアーキテクチャはMZ-2800/6550で打ち止めとなり、その後はAX(MZ-8000系)に切り替わっていったというのが日本でのMZシリーズの一般的な認識だと思いますが…MZ-100とは?!

 1980年代にIBM PC互換機のビジネスが盛んになり、多くの日本メーカー…もちろんシャープも参入してPC-5000を皮切りに多数のマシンを欧米に輸出していました。日本国内ではそれぞれオリジナルアーキテクチャの8ビット/16ビットパソコンで覇を競っていたわけですが、海外向けには互換機ビジネスをやるという二面的な経営方針があったわけですね。

 そういう実績から、IBM PC互換機にJEGAビデオアダプタと日本語キーボードと日本語プリンタを組み合わせるAXが、日本市場で成功を掴める可能性があると目されたりしたわけです。実は以前からPC互換機を作っているから、日本語用のパーツを付けるだけでPC-98の対抗馬を仕立てられるぞ、と。その結果がどうだったのかはともかく、MZ-100とはそういう時代のパソコンなのです。

 見ての通りMZ-100はラップトップ型のパソコンです。売れてたのか他のメーカーも含めて、ラップトップ型のPC互換機が多かったようですね。

 キーボード。もちろん輸出用ですので、US配列になっていますね。

 キーボード左上部分のアップ。

 SetUpキーはいわゆるBIOSセットアップメニューを表示します。基本的にいつでも呼び出せます。

 ファンクションキーが10個しかありませんが、F11とF12はマニュアルを見ても使う方法がわかりません。古いIBM PCってファンクションキーは10個しかなかったんでしたっけ?

 NumLockとScrollLockはそれぞれ、Ctrlキーと併用するとPauseとBreakキーとして使用できます。

 さらに上にはインジケーターがあります。POWERはそのまま電源、LOW BATTERYは内蔵蓄電池の残量警告、DRIVE AとBはFDDアクセスを意味します。

 こちらはテンキー部。液晶画面の大きさとキーの大きさの兼ね合いで、可搬型のパソコンではテンキーがないのが当たり前ですけど、変則的な場所にありますね。たまにここにテンキーを置くモデルが現れたりしますが。

 キーの大きさが一部違うとかはありますがテンキーとして全部あるかというと…Enterキーがありませんね。

 だいぶ色褪せてますが…液晶パネルの裏、つまり蓋のところにはMZ-100の文字が入っています。例のステンシル文字じゃないんですね。

 簡単にスペックを紹介しておきましょう。

 CPUは「8088コンパチブル」とありますが、具体的にはNECのV40が使われています。駆動クロックは10MHzですが、SetUpメニューでSlowモードに変えることにより速度を落とすことができます。ただそれが何MHzなのかマニュアルに記述がないのですが…。

 画面解像度は640×400ドット、もちろんVGAの解像度ではありませんね。これはAT&T400と呼ばれたビデオアダプタと互換のある方式だとマニュアルに書かれています。もうAT&T400とかすっかり忘れ去られたビデオ規格ですが、東芝のJ-3100シリーズなんかとも互換性のあるものです。DCGAと呼ばれたりもしますね。日本語を除けばJ-3100用アプリが動いたりするかもしれません。

 ストレージは3.5インチFDDが2基、いずれも2DDです。

 いくつか起動後の画面など。まずは本体付属のMS-DOS 3.3です。3行目にVademという会社のコピーライトがありますが、ここが実際にMZ-100を設計した会社のようです。

 CGA対応のゲームなんかも動きますよ。これはロードランナーですね。さすがに10MHzではキャラクタの動きが速すぎる…。

 こちらは8086などia16システムで動作するLinux、ELKSです。

 さすがに経年劣化なのかバックライトがやや暗めなんですが、まぁなんとか必要十分な明るさは維持しています。

 正面から向かって右側面。

 右下にACアダプタの接続口、その上の緑の丸いのが電源ボタン。押し込んでロックするタイプではなく、ソフト的に電源OFFが可能です。

 その左がFDD、もちろん上がAドライブということになります。

 さらに左の方、下に影がさして見えにくいですが、左がBrightness、右がContrastツマミで、液晶の見え具合を調整できます。

 そしてこちらが左側面。

 端子が左からパラレル(プリンタ)、シリアル、拡張FDD(CE-452F、5インチ2Dシングルドライブ)。

 その上に切り取れそうな枠みたいなのがありますが、ここに後から取り付けたボードのコネクタが現れることになっています。左からCRT(もちろんCGAのコネクタ、CE-451A)、2つめのシリアル(こちらはD-Sub25ピン、CE-451B)、さらにモデム(CE-451M、1200baud/CE-462M、2400baud)のモジュラーコネクタと並んでいます。

 左奥の部分にはバッテリ(鉛蓄電池)が収納されています。

 このバッテリの横の隙間の下にコネクタがあり、ここにCRTボード(CE-451A)またはEMSボード(CE-453B)を入れることができます。

 ボードが入りそうな開口部ってここだけなんですよね。では2つめのシリアルボードはどうすればいいか、というと…サービスに連絡せよとマニュアルで説明されています。つまり筐体を開けないといけないわけですね…。

 底面のキーボード側には、キャリングハンドルがあります。収納式で、不要な時には折りたたんで格納できます。

 うまくこじればハンドルが外れそうな切り欠きがありますが…別に外さなくても何にも不便はないしな…。

 底面にはラベルがあって、そこには「MADE IN HONG KONG」とあります。つまり、もうこの時点で輸出を前提とする商品は香港の工場(と言っても当時の資料を見てみると香港に自社拠点はないみたい)で作ってたんですね。

 当時はプラザ合意後ですから、急激な円高に振れてしまって日本国内の工場で作ると価格的に勝負にならないので、海外の工場で作ってそのまま輸出先に運んだ方が良いという判断もあったのかもしれませんね。

 ラベル左上に見えているDIP SWはシステム設定です。マニュアルには次のように書かれています。

番号 機能 ON OFF
1 システムオールリセット リセット 通常
2 未使用
3 音量
4 音声 出力 停止
5 アラーム 許可 禁止

 1番のシステムオールリセットは、電源断やリセット操作が効かなくなった時に操作するもので、ONにしてOFFにする(普通のスイッチの操作)ことで正常に利用できるようにするものです。
 5番のアラームはバッテリー低下アラーム音を出すかどうかというものですね。

 2番は実は未使用ではなく、こちらのページで紹介されているように外付けフロッピードライブ(普通は5インチ)からブート可能にするかどうかの設定です。初期のIBM PCは5インチFDが標準でしたからね。ここをONにしておくとSetUp画面でブートドライブ(Aドライブ)を内蔵にするか外付けにするか選べるようになります。

 切り取れそうな枠は背面にもありまして、ここを開けると何が出せるのかというと…。

 その種明かしも兼ねて、メインボードをご覧頂きましょう。マウスポインタを乗せると部品名が現れます。

 それぞれの説明は次のとおり。

CN1
LCD
CN2
電源スイッチ
CN3
スピーカ
CN4
キーボード部のLED
CN5
電源。フラットケーブルで結合されているように、複数の電圧であったり制御信号などがまとめられています。
CN6
キーボード
CN8
FDD。搭載されているドライブはTEACのFD-235Fで、このケーブルに電源も含まれます。
CN9
拡張FDD
CN10
パラレルポート、つまりプリンタ用。
CN11
CRTおよびEMSボード接続コネクタ。上の写真で、バッテリを抜いたら見えるコネクタがこれです。
CN12
シリアルポート
CN13
モデム(CE-451M)/拡張シリアルボード(CE-451B)接続コネクタ
CN14
HDD。コネクタが実装されていませんし、MZ-100としては非サポート扱いです。
この頃はまだIDEが登場していなかった時代で、端子数はそれっぽいですが全く違います。また本体BIOSはHDDに非対応で、HDD I/FにHDD BIOSが搭載してあることになっています。
CN15
HDD用電源
CN16
ISAバス。これが先ほどの切り取れそうな板の裏にあるコネクタです。ここにコネクタを取り付けると外部にシステムバスを引き出せるわけです。こちらのページでは実際にコネクタを取り付けて、対応する基板を製作してNICやサウンドカードなんかを接続する例が紹介されています。
CN17
EMSボード接続コネクタ。ただしここに接続できるEMSボードは発売されなかったようです。外部CRT出力を取り付けた場合EMSがつけられなくなるのでここに取り付けることでカバーできるとよかったのですが…。
V40
CPU
8087
数値演算コプロセッサ。取り付ければ動くと思いますがソケットがないので、機種としてはサポートしていないのだと思います(マニュアルを見ても記述がない)。
82C50
シリアルコントローラ
TC8566AF
FDC
LU57844P
キーボードその他こまごました信号を制御するサブCPU
LZ95H12, LZ93J21
IBM PCチップセットのような位置づけになっています。CPUバス、ROM/RAM、CRT/LCD、EMS、パラレルポート、その他のI/O制御を行うLSIです。

 入手した時はFDDが不動作(ディスクが回りはすれどもアクセス不能)だったのですが、このFD-235F特有のトラブルだそうでこちらのブログのエントリを参考に電解コンデンサを交換して解決しました。当該エントリでは積層セラミックコンデンサに交換していますが入手が難しいので普通に電解コンデンサを取り付けました。ただ無極性のものが多いのが要注意です。

 さて、上記写真のBIOS ROMのラベルに「PC-4600」の文字があるように、MZ-100の正体とはPC-4600そのものでした。PC-4600はあちこちに出荷していたようですが、どうもMZ-100は北米のみだったようで、学生など向けの廉価版ではないかという気がします。

 廉価版だとしてもそれはいいんですが、どうしてMZ型番だったのかというのが謎ですね。実はこの後PC-4700をベースにしたMZ-200/MZ-250というのも発売されているのですが、つまりシリーズ化されているわけですよ(さすがにそこで終わりますが)。傍系のパソコンシリーズの型番としてMZが使いやすかったということなんですかね…。

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