MZ-1E32
(MZ-2500用パラレルI/Fボード)

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 「イメージ情報ステーション」MZ-1V01を接続するためのパラレルI/Fボードです。MZ-1V01が発売されたのは1987年、当時としては奇抜なフラットベッド型イメージスキャナ・FAX・感熱プリンタを一体化した、今で言えば「複合機」に相当する周辺機器として、MZ-2500だけでなくシャープのMZ-6500やNECのPC-9801用にもI/Fとソフトを発売し、かなり力を入れて売り込んでいたのを記憶しています。MZの命名則からすれば、本来「その他周辺機器」である"X"の型番がつきそうなものを、わざわざ浮いていた"V"型番にして追い番号"01"をつけて「新しさ」を強調してみたり…。

 そうは言ってもやはり30万円近いという価格の高さ、プリンタもスキャナもモノクロ、そしてそのプリンタはFAX転用(感熱ロール紙のみ)…ではさすがにヒットと呼べるほど売れることもなく…。

 いわゆるアンフェノールタイプの36ピンコネクタ。ボードとしてはスロット高さに引っかかることはありませんけれど、標準的なスロットの開口部からはコネクタを出すことができませんので、専用のパネルが付属します。残念ながらそれは入手できていませんが…。

 考えてみればHDD I/FのMZ-1E30でも専用パネルが付くわけで、末期のMZは行き当たりばったりというかその場しのぎというか、もうちょっとなんとかならなかったものかと思ってしまいます。もしHDDで運用しているシステムにこのI/Fを入れたいと思ったら、どうすればいいんでしょうね?

 それにしてもコネクタの背後にコンデンサがたくさん…と思ったら、これはEMIフィルタなのだとか。FAX回線に接続する機器に悪影響を及ぼさないため?

 MZ-1V01が発売された1987年とそれから数年というのは、思い返してみれば、イメージスキャナのブームが到来した時代でした。熱転写プリンタみたいに特許が切れたとかのイベントがあったんでしょうか、その辺りの事情までは知らないのですが、1987年春前後からパソコン用や家庭用ワープロ用としていろいろなスキャナが発売されるようになりました。主なスタイルはフラットベッドスキャナとハンディスキャナで、解像度や鮮明さでフラットベッドスキャナの人気は高かったものの、値段の都合で実際にはハンディスキャナの方が売れていたように思います。

 そのハンディスキャナも、ワープロ用スキャナをパソコンに接続できるようにしたものなどが先に出回った後、RS-232Cで接続できるタイプが登場し、さらにヒットするようになります。フラットベッドスキャナは今のようにUSBでつながる前はSCSI接続だったわけですが、この規格がまとまるのが1989年ですので、それまでは専用パラレルI/Fがスキャナとセットで用意されていたわけです。規格のない時代は当然メーカーがそれぞれで勝手に決めるのでしょうから、基本的にメーカー間の互換性はないと考えた方がいいでしょう。翌年(1988年)からカラーの時代となり、X1シリーズ用にCZ-8NS1というフラットベッドスキャナが発売されるわけですが、このパソコン側のコネクタはD-Subだったりしますしね…。

 シャープはその後、特にスキャナがSCSI接続されるようになったあたりで、カラーCRTディスプレイ・カラーイメージスキャナ・カラーインクジェットプリンタの3つを擁するメーカーとして積極的に営業するようになりました。それぞれ結構実績もあったのですが…ディスプレイが液晶化された以外はみんな手放しちゃったんですよね…。

 さて、FAX機能はというと、単独でも使用できる他にFAX受信画像をパソコンに取り込んだり、逆にパソコンから文書や絵をFAX送信したりすることができました。後にブームになるFAXモデム機能ですね。で、その単体FAXにおける通信部と記録紙出力部と原稿読取り部をバラバラにして、それぞれをパソコンにつなげられるようにしたものがMZ-1V01というわけです。FAXで受信した画像はとても汚いというイメージがあったりしますが、それは原稿がナナメに読み取られたり、センサやローラーにゴミがついていてそれがノイズになったりしているだけで、結構解像度が高く、プリンタとして使うと高品質な出力結果が得られたりするものです。後のFAXモデムブームでもそういう利用法が紹介されたりしたものです。

 FAXの解像度は約200dpi、当時主流の24ドット漢字プリンタの160dpiを上回りますから、是非とも24ドットフォントの美しい日本語を出力したいところです。そして実際にそのような仕組みが搭載されました。しかしその方法というのが…。

 I/Fボードへの搭載でした。これは子基板を取り外して部品が見えるようにしたところ。ボード名称は「パラレルI/Fボード」なのに、二階建てなんていったいどんな複雑な回路が搭載されているのかと思えばでっかい漢字ROMとそのアクセス回路だったというわけです。この構成はMZ-6500用とPC-9801用でも変わらず、同じ漢字ROMが搭載されています。

 漢字ROMの型番(LH532005/LH532006/LH531042)を調べても特にヒットするものはありません。昔のメモリIC規格表なんかで探すと似た型番のものはありますが、シリーズというわけでもなさそうです。これは多分単なるマスクROMであって、データ全体の量にできるだけちょうど入るように種類を選んだがゆえに、3つ目だけパッケージが小さいってことになってるのではないかと推測しています。



 子基板を取り外した、一階部分だけの様子。漢字ROMが二階にほぼ全て収まっているということは、一階はほぼ全てパラレルI/Fということになりますね。



 パラレルI/Fの心臓部。どーもこのLSIの型番てシャープらしくない気がするのですよね…。型番の下の記号がひとつの手がかりかと思いますが…。

 MZ-2500用ということでボードサイズはいつもとほぼ同じなのですが、バスコネクタが50ピンになっています。ということで装着できるマシンが限定されてしまうわけですが…。




 実はMZ-1500も本体拡張スロットは50ピンコネクタなので、挿せちゃうんですね。漢字ROMをアクセスするだけなら、BASICでもカンタン。

謎のボード

 実は以前にですね、MZ-2800用だと言う、こんなボードを入手しているのです。




 16bitスロットに挿すボードということは、いわゆるCバスボードなのでPC-9801用という可能性もあったんですけど、いろいろICが並んでいるのはあとで考えるとして、DRAMが1MBほどありそう&MZ-2800用ってんならRAMディスクになるかもと考えて、すかさずゲット。

 MZ-2800の16bitスロットについて98のCバススロットとの互換性を検討したついでに、このボードのバスコネクタがどんな信号を使っているのか確認したところ、*IOR/*IOW…つまりI/O用のリード・ライト信号を使っていないことがわかりました。ならばこのボードにあるROMもRAMもメモリマッピングされるのだな、と確信してちょっと試行錯誤したところ…。

 はいこの通り、しっかりRAMディスクとして認識されました。MZ-1R36を増設できないMZ-1R35という感じで使えます。1〜6の番号のついたジャンパがありますので、多分割り付けアドレスを変更できるのだと思います。

 なおMZ-2800はリアルモードでのメモリ空間に(TPA領域のバンク・256KBを除いて)拡張ボードのROMやRAMを割り付けられる隙間がないんですが、なぜ大丈夫かと確信したかと言うと、漢字ROMの容量からすると割り付けた領域でバンク切り替えをする必要が絶対あるはずなのに、ボード上のレジスタが存在しない(*IOR/*IOWがない)ので、割り付けるならプロテクトモードのメモリ空間しかないと思ったからなのです。それにですね…。


 PC-98用のI/Fボード・IP-1246も持ってますので、まず間違いなくあのボードは98には使われないだろうとも思ったんですよね。

 しかしなんでこれ持ってるんだろう。確か誰かから「シャープ製のボードだしあげる」とか言われて譲ってもらったんですよね。シャープが98用にボードを作るならMZ-1V01用だろうと思って受け取ったように記憶してるんですが、当時は構成要件とか知りませんでしたし…。

 DRAMとRAMディスクの話はこれくらいにして。




 そのMZ-2800用というROM/RAMボード、一番大きなLSIがMZ-1E32に搭載されているのと同じ漢字ROMです。やっぱりMZ-1V01関連なんでしょうかね…?

 MZ-1V01を使うためのソフト「パソコンファクス」シリーズは、I/Fを対応させた機種向けにそれぞれ「25」「65」「98」とあるのですが、当時発売したばかりのMZ-2800用にも遅れて「パソコンファクス28」として対応させています。手元には現物はなくてパンフレットしかありません。そのパンフの説明によると…

ということで、特に3つ目の項目のことを考えると、HDDなしならMZ-1U09も不要ということになるわけで…それにこんな記述も発見しまして。


 MZ-1E35の記事を書いている過程で発見したのですが、こちらのシステム構成図によれば、MZ-1E32は2500モードのみとあって、それとは別にパラレルI/Fボード(IP-1256)が存在するように書かれています。パラレルI/Fボードから左に延びてる線は16bitスロットにつながります。

 確かに、この図に従えばMZ-1V01を使うのにMZ-1U09もMZ-1E32も必要ないですね。しかしそうするとHDD運用時にはMZ-1E32を要求する記述はなんなのかという問題が…。

 あ…パソコンファクス28のパンフに書いてあったMZ-1E32といのは、MZ-1E30の誤植かな…それならそれで辻褄合うな…。

 個人的にいろいろ考えていた時におおいに惑わされた、不思議なものがMZ-1E32にありまして…。



 ボードのバススロットが50ピンコネクタになっていると先ほども述べましたが、単に幅があるのではなく、MZ-2800用に拡張されたIR11信号が使われているのです。割り込みですから通信関係(=パラレルI/F)なのだろうと思いますが、つまりはこのMZ-1E32をMZ-2800でも使えるようにしてあるということでしょうか?

 それと、カードエッジコネクタの側にあるボックス型のMILコネクタって何のためにあるんでしょうね? その横の丸穴とか?

 パンフにて同梱との記述があるインターフェースボードはIP-1256のはず。MZ-1E32を見ると、一階部分だけでパラレルI/Fの機能を果たせるようになってはいるようですが、その必要はないですよね。この一階部分、短いフラットケーブルと取り付け金具なんかがあれば、MZ-1E26(ボイスコミュニケーションI/F)みたいに8bitスロットの拡張I/Oユニット(MZ-1U09)がなくても取り付けられるような設計になっていると思われ、謎のROM/RAMボードがあればMZ-1V01が使えるようになる…という推測が可能なんですけど、どうもそれは邪推に過ぎないようです。じゃあROM/RAMボードっていったい何のためのボードなんでしょう?!

 更に言うと…MZ-1E32はZ80側に割り込み信号が出ていません。IR11は出てるのに、どういうことなんでしょう? 80286で動かすならバックグラウンド的な動作が可能なように割り込みを活用するが、Z80で動かす場合は余裕がないので通信時はポーリングで専念する…とかいう方針でしょうか…。

 そうだそうだ、基板を眺めてて思ったんですが。

 この線が走っているところというよりは、基板の端からまっすぐ傷が入っているところに注目してください。この傷、前の持ち主の扱いが悪かったのかなぁと思ったらそうでもなく、昔MZ本を作るお手伝いをした時に他の方から提供していただいたMZ-1E32の写真を見返しても、同様に入っているのです。裏だけじゃなく表も、そう…カードエッジコネクタの話をするために掲載した上の写真の、二つの穴が線で囲まれているように見えますが、それも印刷ではなくて基板に入れた傷なのです。

 傷の入り方からすると、GNDパターンを切り離しているように見えます。厳重なEMIフィルタの件もありますし、ノイズ対策としてボードの回路やパソコン本体がノイズ源にならないよう、修正しているということなのでしょうか。

…てことは回路ミスった? 最初からわかってたならそういうパターンにするもんね…多分組立て時にこの加工をすることになってたんでしょうね…。

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