一時期シャープは音声合成に力を入れていた時期がありまして、それを応用して作った「ボイスボード」です。基板中央の四角いLSIが音声合成チップで、輸出用と思しき音声時計の発声データが内蔵されています。その左の大きなICがMZ用日本語音声データが収録されているROMで、BASICで操作する場合はこちらが選択されることになっています。
実はこれ、元々MZ-2000に接続するつもりで買ったものなのです。ある日なんとなくMZ-1500の回路図を眺めていると、ボイスボードのコネクタ周辺の回路が妙に簡単なことに気づきました。特に、音声はラインレベルらしく本体内で特に難しい変換とかはしてないらしいことがわかったので、もしかすると簡単な回路で接続できるかもしれない、と考えたのです。
少し前から日本橋でMZ-1M08が山積になって叩き売られていたのを知っていたので、とりあえずひとつ買って中身を確かめてみると、マニュアルに回路図やアクセス方法などが全て解説されてあるのを発見しました。書いてあるかどうかは賭けだったんですが、それがわかればこっちのものです。
当時パソコン用のハード工作は初めてだったんですが、Oh!MZ誌のジョイスティックボード製作の記事を参考に、このボードを接続するためのI/Fを作りました。といっても8255がひとつある簡単なものだったんですけどね。さらにマニュアルを参考にしてアクセスプログラムをマシン語で作成し、見事に発声させることに成功しました。基本動作ができたなら、あとは応用としてチャットのようにキー入力したものを直ちに発声させるプログラムをBASICで作るとか、好きなようにできました。当時まだカナ配列では打てなかったので、ローマ字入力をカナに変換するためのサブルーチンも作りました。
という話を仲良くなった日本橋のあるパーツショップの人に話したら、その人もMZ-2000ユーザーだったので、ぜひ作って欲しいと頼まれました。マニュアルを書く作業が余計に必要でしたが、無事完成して納入しました。当時は学生でしたしあまり収入もなかったですから、ちょっと助かりましたね。
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