PC-1417G

 PC-1416Gに続く教育専用機。CAP-Xに代わってCASLが採用されました。微妙にデザインも変わってるようですね?



 ポケコン1台のみが入るタイプの箱。これはこの時代までで、次のPC-G801から取説入りの大きなものに変わります。結局取説は一人一冊必要ですからね…。



 PC-1416Gと同じ24桁表示なのですが、少し画面が大きくなり、視認性が向上しました。それと、これまでの機種とは違うちょっと不思議なところにリセットボタンがありますね。

 リセットが表面にあること。これまではずっと裏面だったのですから、何か狙いがあったはずです。おそらく、次の二つの狙いがあったのだと思います。

 ひとつはコストダウンです。リセットボタンは基板上に金属の板をはんだ付けしてあるのを筐体の外からボールペンのような細いもので押すことで使用します。裏面に配置していたのはパソコンのリセットボタンと同じく不用意に押さないようにするためですね。でもちゃんと配慮されたデザインになっていれば前面でも構わないはずです。
 前面に配置すると、通常使用するキーと同じ仕組みのスイッチとして成形することが可能になります。これはPC-1246S/1248で最初に見られた形でもあります。リセットボタンの金属板はLSI等他の部品とは別工程で取り付ける必要があるはずで、これを取り除くのはコストダウンの基本とも言えます。

 もうひとつは「ミニI/O機能」の弊害です。そもそもリセットボタンというものは、電池交換直後に動作が不安定になっているポケコンを正常化するために操作するものであって、常用するものではありません。電源スイッチにしても今で言うスリープ状態に入るか出るかというためのもので、主電源スイッチなんてなく、電池を入れれば即スイッチオンというのがポケコンですからね。だから先ほど言ったように「不用意に押さないようにする」配慮が必要だったのです。
 ではなぜ常用できる位置にリセットボタンを配置したのか? ミニI/O機能を使う時というのは、外部に基板なんかを接続して制御の実習をしている状態だったりします。その外部機器を接続している間はポケコンを裏返すことができませんから、リセットの必要が生じた時それを押すのはかなり大変になってしまいます。現実的には実習の範囲でリセットが必要になる場面というのも考えにくいですが(BASICでできますし)、1986〜87年あたりはポケコンのマシン語が書籍で勉強できるようになったこともあって、リセットの需要が高まっていた時期でもあったはずなのです。PC-1416Gの時代に現場から要望があったんじゃないかと思うのですが…。

 そんなこんなで、PC-G801以降やPC-E500以降などの機種ではリセットボタンが前面にあるモデルが大勢を占めるようになったのでしょう。もっとも、末期のポケコンは一種のゲーム機という使われ方が多くなりましたから、その意味でリセットボタンは多用されたのかもしれませんが…。

 とは言え、このPC-1417Gが種機になっているであろう一般販売モデル・PC-1445のリセットボタンは背面にあるわけで…ではどんなことになっているのか、中身を拝見…。

 …裏蓋を取っただけで、いくつか変化を発見できますね。一番目立つのは電池のすぐ右にあった意味ありげな開口部、これが埋められたもののその右にある「電池交換時にだけ切り替えておくメモリ保持スイッチ」がありそうな穴はそのままで…。

 11ピンコネクタのすぐ左上にあったネジもありません。取り付け忘れではなく、ここにネジ穴自体がないのです。その割にはこのプラスチック部品にネジ穴が残ったままなのもちょっと不思議…。

 そして件のリセットボタンはというと、液晶の濃さを調整するダイヤルのすぐ下に穴が用意されていますね。ふむ、やはりどちらのモデルでも対応できる構造になっているということですか…。


 では基板はと言うと…LSI部品は大きくは変わりませんね。下の右からCPU、ROM、RAM。RAMの上には増設用のパターンも見えます。液晶ドライバLSIは少し右にずれているのでしょうか。

 そう言えばさっきなくなったと思った11ピンコネクタ近くのネジは、微妙に位置を変えて残ってました。そうか、液晶モジュールの大きさが変わったので、ネジ穴が立てられなくなったのですね。

 そしてリセットボタンは…ああ、金属板を取り付けられるパターンだけ用意して未使用にしてありますね。



 CPUとROM。CPUのサフィックスはA36、ROMはLH5357R2…? 番号は数字だけじゃなくなったんですか?



 では表面のリセットボタンは…あ、シートが一体成形じゃない…ってそうか、PC-1445では不要なのでここだけ取り除けないといけないんですね。



 そうそう、地味な改良点としてテンキー部分の配列が変更されているんです。基本的にはPC-1401なんかに近づけつつ、関数部はPC-1416Gなどに影響を受けて、結局何とも同じでない配列になりました。
 下の参考写真はPC-1405Gのもの。PC-1417Gではメモリー機能が加わり、イコールキーではないけれど右下隅にENTERキーが配置されて関数電卓風の使い勝手になり…一方で関数キーの真ん中の段は並びがそのままだったりなどなど。

 関数部についてはPC-E200でまた変わるんですよね。普通に売ってる関数電卓の関数キー配列も「決定版」なんて言えるものはないわけで、最初にPC-1404Gで変えたんだからより良いと思うものがあるなら変えていこうということだったのかもしれません。

 それにしても、CAP-Xポケコンの時代がわずか1年で終わるとは思いませんでしたよね。CAP-X自体の時代は長かったのですが、専用ポケコンでサポートできた時間はほとんどなかったという…。もしかしたら現場も相当混乱したのでしょうか? コンピュータを学ぶという意味では情報処理技術者試験の合格を目指すのは大きなモチベーションになるでしょうから、新一年生はともかく前年モデルを買った二年生には何か救済措置とかあったんでしょうか?

 もう一つ、試験科目のCASLはバージョンアップされたのに、結局最後までポケコンのCASLの仕様は更新されなかったのは解せないところです。劇的に変わったわけではないので各自読み替えてね、ということなのかもしれませんが差が小さいのならそれぐらいポケコンのソフトを改修してくれても良さそうに思えます。結果的にそこまでしなくてもなんとかなったというのは…当初期待したほどCASLが利用されなかったということなんでしょうか…。

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