Millenium G400 / Matrox
Graphic Acceralation Chip:MGA G400 / Matrox
RAM:SGRAM 32MB
Port:AGP (32bit 66MHz 4x 3.3V)
動作確認マシン:PC/AT互換機(EP-61BXC-A / EPoX)
Millenium G200に続くMatroxのMillenium Gシリーズ第2弾。
これはディスプレイ出力を一つしか持たないSH、つまりSingle HeadモデルのSGRAM 32MB版で、正しくはMillenium G400 32MB/SHと表記するモデルであって、バリエーションとしては32MB/DH・16MB/DH・16MB/SHの3種に加えてTVチューナー/ヴィデオ入出力搭載のMarvel G400-TV(カードとしてはG400 16MB/SH相当)と高速バージョンのMillenium G400MAX(機能的には32MB/DH相当)が存在する。
発表当初の下馬評では、鳴り物入りで登場した前作のMillenium G200が悪くはないもののさほど良くもなかった(画質はそこそこ以上で2D/3D共に確かに速かったが、3Dでサポートしている機能がRIVA系列のチップより少なかったのは痛かった)為にさして高く評価されていなかったが、いざ現物が出回り始めると状況は一変、一躍人気機種となった。
それは、この製品が日本市場に出回り始めた時点(1999年初夏)で最速と目されていたRIVA TNT2 Ultra搭載の高速グラフィックカード群を凌駕する性能を叩き出してしまった為で、Matroxの“画造り”が好まれる市場風土であった事も大きく寄与していた様だ。
Matroxといえば三星電子のWRAM搭載で高速GDI描画を実現した初代Milleniumの印象があまりにも強いが、3D描画機能がまるで実装されていなかった(一応3D CADのオペレーションは考慮されていた様だが)事とDirect Draw描画で不利なアーキテクチャである事が祟って、それ以後はこのG400まで決定的な成功を市場で収める事は出来ずにいた。
要するに、「市場の目指す方向性に開発方針が正しく追従しなかった」という事になろうか。
そういう意味では、G200の苦戦の教訓を取り入れて正しく市場の要求をくみ取ったこの製品が爆発的な売れ行きを示したのも当然ではある。
256bit幅のバス(128bitずつに分割して独立リード/ライト可能)を備え、データ転送速度で並み居るライバルを圧倒する上に、同時期の他のチップではまだ実装されていない3D描画命令を幾つか取り入れたこのチップそのものの描画性能は、Direct X6環境下でのジオメトリエンジンを搭載しないタイプのグラフィックチップとしてはほぼ極限と言って良いレベルに到達していると断言出来る。
但し、それ故にチップのデザインはかなり複雑であり、発熱も大きい様で結構大型のヒートシンクが取り付けられている。
ちなみに、上位機種(選別コア+高速メモリ)で高クロック動作をするG400 MAXの場合ヒートシンクでは冷却が追いつかず、遂にシリーズ初となる空冷ファンが搭載されたが、何故か安っぽいファンが付いている。
潜在性能的には市場で大人気のRIVA TNT2系以上であってこのメーカー伝統の独特の艶のあるシャープな画造りも健在であるから売れない訳はないのだが、その一方で新機能を満載した為に初期段階ではドライバが今一つ(NTの場合は今二つ)不安定だったのも事実であり、少なくとも私が使用していた範囲では一部について早急な改善が必要であると感じられた。
これも前作のG200同様にある意味で不幸なチップ/カードで、発売時期が遅かった為に飛躍的に進歩した次の世代の製品、具体的にはnVIDIAのGeForce256 (nv10)の発表時期に市場に出回るという最悪に近いタイミングでの出荷となり、しかも上位版として発表・出荷が開始されたG400 MAXがなかなか市中に出回らなかった為に、買い控えに近い現象が起きたりもした。
今見ると大した仕様ではないが、Matrox独特の個性的な“画”造り(ちなみに筆者の好みからは外れる)と256bitバスのお陰で今見ても充分過ぎる程高速な2D描画性能を備え、Matroxがこの後事実上G400をベースに低コスト化を図っただけのG450や多少毛が生えた程度のG550で長く足踏みした為もあって、AGPの時代を通じ各所で長く愛用されたカードである。
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